表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/135

78.え、どうした急に

洞窟の広間を抜けた先に、古びた鉄扉があった。


「ああ、話に聞いていた通りです。この扉の先に神気があると」


「そうなんですか。鍵などはありますか?」


「鍵はかかっていないと聞いています。……ほら、少し重いですが、開きますよ」


ナナミが扉を開く。

今の所、神気によって俺が苦しむなどの変化はない。


内心で不思議に思いながらも、好都合なので取り敢えず進む。


あまり広くないが、部屋として整えられた場所に、神気のモヤがあった。

直視してもやはり問題ない。


念の為に【霊視】で視るが、やはり風神エアバーンの神気で間違いないようだ。


「それでは試練に挑みます。イズキさんはそこで見守っていてください」


「はい」


試練とはどのようなものなのだろうか。

興味もあるので【霊視】と【魂視】を使いながら観察することにした。


まずナナミは魔石を20個ほど取り出す。

その魔石を箱に入れて、棒を使って自らは神気に直接触れないように、箱を神気のモヤの中に押しやった。

そして砂時計を背嚢から取り出して、傍らに置く。


……なにしてるんだ?


俺が知っている魔石の使い道は、主に魔力の補填だ。

魔術具を動かすのに使うか、魔術を行使する際に消費することで術者の魔力を節約するために使う。


後者はランドモッタの戦争のときに、クーラがちびちび魔石を消費しているのを見た。

長期戦を見越してのことだろうが、お金を消費しながら戦っているようで「もったいないなー」なんて思いながら見ていたのだ。

だから魔術を渡したついでに、クーラの【剣】に連動発動する〈マナ・ドレイン〉をつけてやった。

おかげで今日も連戦続きだったにも関わらず魔石を砕いてはいない。


【霊視】で視ていると、神気の中にある魔石が変化をしていることに気づいた。

どうも魔力が神気に置き換わっているようだ。


そのままで待っていると、魔石の中の魔力が完全に神気に置き換わった。

砂時計は恐らくこの変化のための時間を計っているのだろう。

時間は余裕をもって決められているようで、魔石の変化が終わっても砂時計の砂は多めに残っていた。


砂が落ちきると、ナナミは神気の中に置かれていた魔石の入った箱を棒を使って引き寄せた。

そして中からひとつを手に取り、両手で握りしめながら眼前に持っていく。


するとナナミの魂に変化が起きた。

小さな変化だが、本人も自覚はあるようで小さく身体を震わせた。

そして魔石から完全に神気がなくなると、ナナミは魔石を傍らに置いて新しい魔石をまた取り出す。


どうやらこの作業を20回繰り返すことが試練らしい。


そういえば神気に触れることで力を授かることができる、と聞いたことがある。

確か叔父であるヤニック司祭がそう言っていたし、7柱目の神気のあった小屋での尋問のときにも森人族の神官がそんなことを言っていた。


魔石20個分の神気、それがこの試練を安全に終える工夫なのだろう。

神気は多すぎると毒になるとも聞いたから、多分間違いないはずだ。


魔石が20個目に届く前に、ナナミのステータスに変化が生じた。

ステータスには新たに【風の恩寵Lv1】の項目が増えていた。


……そうか、こうやって取得するスキルだったのか。


トビーから奪ったスキルで、今は風の支配者に変化している。

風神の神気から得る特殊なスキルだから、俺は神気の影響を受けないのだろう。


【霊視】と【魂視】で風の支配者と風神の神気について調べてみれば、その仮定が正解であることが分かった。


20個の魔石の神気をすべて取り込んだナナミは、ステータスを開き目的のスキルが表示されていることを確かめた。


「試練は無事に終わりました。イズキさん、見守っていただいてありがとございます」


「いや、見ていただけだよ。結局、試練ってのは何だったんだ?」


全貌は明らかだが、何も聞かずに済ますのも不自然なので一応、聞いておく。


「はい。風神様から【風の恩寵】というスキルを頂くことが試練なのです。魔石に神気を移し、それを身体に取り込むのですが……正直、痛くて痛くて……途中で涙が出てしまいましたよ」


試練の内容を語ってくれたのはどうでもいいが、苦痛を伴ったという話は聞き捨てならない。

俺がトビーから【魂触】で奪った際には全く苦痛なくスキルを取得できた。


……神気経由だと何か違うのか?


疑問について考えていると、突然、ナナミの頭がガクリと垂れた。


「ナナミさん? 大丈夫か――」


「……ガイアヴルムの眷属がなぜここにいる!!」


ナナミが顔を上げると同時に、ものすごい形相で叫びながら俺を睨みつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ