表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/135

75.回避不可イベントかよぉ

トビー死す。

その報は村長宅に深い悲しみをもたらした。


俺たち3人は内心をよそにお悔やみを申し上げ、成り行きを見守る。

早く飯食って部屋に戻りたい。

そして明日は早めにこの村を出よう。


3人の心はきっといま、ひとつになっていた。


しかし村長は息子の死を悼みながらも、力強い眼差しで孫娘と俺たちとを見比べた。


「跡取りであるトビーが死んだのは痛かった。しかしここに腕利きの傭兵がいるのも天佑。ナナミ、風神の試練だ」


「お義父さん! そんな急に! まだトビーは……」


「トビーはもう死んだ。村の長を継ぐはずだったトビーが死んだ以上は、次なる長であるナナミに試練を受けてもらわなければならん。ワシとていつ死ぬかもしれぬ老いた身であるからな」


「……お母さん。私、風神様の試練を受けるよ」


取り乱すトビーの妻に、トビーの娘ナナミは決意を秘めた眼差しで言った。


「ナナミ!?」


「大丈夫。今はちょうど腕利きの傭兵さんたちがいるんだもの。人間族の国まで傭兵を雇いに行ったら、傭兵がこの村に来るまで時間がかかるでしょ。ランドモッタの戦争での活躍、私は見たからこの人たちが凄く強いのは知っているよ」


何か俺たちをよそにして話が盛り上がっている。

しかもその話に、どうやら俺たちは無関係ではないらしい。


「あの、風神の試練というのは?」


「ああ、傭兵さん方は知るまい。この村を治める者は、必ず風神エアバーンの課す試練を受けなければならぬのです。その道は険しく、魔物の徘徊する場所を通らねば風神様の元へは辿り着けない」


風神エアバーンというのは6大神の内の1柱で、鳥人族をこの世界に遣わしたとされる神のことだ。


「将来、村長となる者は傭兵を供に魔物の住処を抜けて、風神様の元へお参りするのが習わし。どうか孫のナナミの護衛を頼めませんか。報酬はもちろん用意いたします」


これはどうなんだ。

俺はクーラを見上げた。

クーラは俺を見ていた。


「イズキがどうするか決めるといいよ」


「俺が決めていいのか」


「迷宮都市に行くのが少し遅れるかもしれないからね」


まあ確かに迷宮都市を目指しているのは俺だ。

だからその旅程が遅れてもいいかどうかを決めるのも、俺になるのだろう。


まあ急ぐ旅ではない。

それにトビーを殺したのは俺だ。


責任を感じないでもなかった。

奴らは7柱目の神の神気の虜となって正気を失っていたとはいえ、目の前のナナミには何の咎もない。


「分かりました。引き受けます」


「おお、ありがとうございます!」


「ありがとう、イズキさん」


11歳にさん付けは似合わないなあ、とかどうでもいいことを思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ