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70.戦争は量より質だよ

同盟軍はランドモッタから500メートルほどのところで隊列を組んでいる。

旗と武装を見るに、2国はそれぞれに指揮官をたてているようだ。

またどちらにも属さない傭兵らしき集団がいくつも見られる。


総司令官不在、指揮権の統一を行わないのは愚行にも思えるが、初めから統一のしようがなければこれでもいいのかもしれない。


対するランドモッタは外壁の上に魔術師と弓兵を並べて応戦の構え。

外壁にはしっかり胸壁もあるのだが、敵の魔術次第では意味がない。


この世界の戦争はこれが初めてだが、魔術が砲撃代わりになることを考えると、外壁がどの程度機能するのか疑問だ。


それに高レベルの突出した戦士が単独で戦況を変える場面も考えうる。


前世地球での戦争の常識は捨てた方がいいかもしれない。


俺たち3人は弓と魔術の応戦が終わり、近接戦闘の開始と同時に突撃する手筈になっている。

他にも大勢の傭兵が同じ役を担って門の傍で待機している。


傭兵以外にも、俺たちと一緒に戦うつもりの血気盛んな住人が武器を持っているのがちらほら見かけられる。

自分の街を守るためなら戦おう、という気概のある奴がいるのは不思議ではない。


……ただ、この国とは関係ない奴のことは分からないなあ。


アリオスティンが笑顔でこちらに歩み寄ってくるのを見ながら、俺は内心で首を傾げていた。


「やあイズキ。私も戦争に参加することにしたよ」


「大丈夫なのか? 別の国のことだし、そっちはそれなりに立場もあるようだが」


「だから紋章のついたマントは置いてきている」


「そんなことでいいのか……」


「それに剣を打ってもらいにはるばるランドモッタまで来たのだ。この戦争に負けたら、私の剣がどうなるか分からない」


「それはこっちも同じことだが。……ま、アリオスティンがいるなら心強いのは確かだ」


「思いがけず、肩を並べて戦う日が来たというわけだ。楽しもうじゃないか」


あ、コイツもう勝った気でいやがるな。


……まあ俺も似たようなものか。


【望遠】と【魂視】で視た限り、同盟軍のレベルは20~30程度、突出して高いレベルをもつツワモノは見当たらない。

スキルも凡庸な連中ばかりだ。

まあ遠目にしか視てないので、もしかしたら後方に控えているのかもしれないが。


しばらくして、山人族の壮年男性が高い位置から大声を張り上げ始める。

この都市国家の偉い人だろうか。


「同盟軍は我々ランドモッタに降伏を迫った! 法外な税を課そうとする両国に、屈する我らではない!」


さて俺の知らないところで同盟軍からの使者が来ていたらしい。

曰く、降伏せよ。

両国に毎年、税を収めることで兵を引く。

降伏しない場合は、戦争となる。

……まあ普通の降伏勧告だ。


痛いのは食料を抑えられているところか。

籠城戦ができない。

降伏しない場合は戦争となる、とは言っているが、向こうは攻めなくてもこちらは勝手に食料不足で音を上げることになる。


……やっぱ食料の供給源を他国に頼るのは危ないな。


ランドモッタは鉱山と鍛冶の国だ。

農地に向いた土地はほとんどなく、食料は輸入に頼りっぱなしである。

それでも山人族の高い技術力の粋を凝らした製品は高値で売れ、食料を輸入して黒字になっていたのだろう。


さてそうなると採れる戦術は限られてくる。


「決戦だ! 敵が怖気づいて向かってこなくとも、こちらから打って出て敵を撃滅する!」


籠城戦ができなければ、短期決戦を挑むしかない。


……まあ別にそれでも勝てそうだけど。


同盟軍とランドモッタの兵数比は見た感じ3:1くらいだ。

前々から準備してきた同盟側が有利なのは当然だ。


しかし同盟軍は知らない。


ここにキルパート王国の【剣Lv4】を誇る聖騎士アリオスティンがいることを。

ここに邪神の御子にして風の支配者である俺がいることを。


レベルとスキルと魔術のある世界では、戦争は数では決まらない。

圧倒的な個の武力が戦争の結末さえ左右するということを、これから嫌というほど教えてやろう。


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