表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/135

46.召喚魔術と言えば聞こえはいいが実態はガチャ

召喚魔術……この世で選ばれし者にしか使えない特殊な魔術だ。


その実体は、博打も同然。

何が出てくるか分からない。


一応、出てきた時点で契約が結ばれ、使役するのに困難はない。


ただし最悪ネズミ並みの雑魚が出てくるとか、まことしやかに言われている。


まさに混沌。


「ちょっとー! ふたりとも酷い! まだ残念な子が出てくるって決まってないし! すっごぉいの出して、ふたりをギャフンて言わせてやるんだからっ」


「……僕も凄いのが出るといいな、と思ってるよ。それは本当に」


「タマ。大丈夫だ、ハズレはない」


気休めではなく、【未来視】で結果が視えてしまった。

割とアタリの部類だと思うぞ。

少なくともハズレ引いて泣くタマが見られなくて本当に良かった。


「よぉし、準備おっけーい」


召喚魔術は基本魔術教本で読んだことがあるので知っている。

クーラも知っていた。


召喚の方法は簡単すぎるほど簡単だ。


……術者が好き勝手に魔法陣を描いて、呪文を唱えて、その結果、何かが召喚されて契約が自動的に結ばれるだけ。

生涯に一度だけ行使を許されている魔術である。


なんて雑な魔術なんだ、と俺は子供心に思った。

どうやってそれが成り立っているのか不思議で仕方がなかった。


【霊視】がカンストして世界の理を垣間見られる今なら、なぜそのようなヘンテコな魔術が成立するのか分かる。


果てしない闘争の世界を創造した邪神が、生まれながらにして完全に魔術を使うことのできないというハンデを抱えた者に対して、ひとつの救済措置を定めた。

無属性すら操れぬ魔法適性「無し」を混沌属性と呼称することを含む、原初の法。


――混沌属性に関する例外法規。


つまり邪神の悪ノリである。


タマが紙に描いた魔法陣は、ぐるぐると渦を巻く「さいきょー!」という文字の連呼。


まあ実は何を書いても結果には何の影響ももたらさないのだが、その真実は口にすると邪神から天罰下りそうなのでけして言葉にできない。


「タマ……じゃなくて我が名はコルニ! 我は選ばれし混沌属性の者なり、えーと、我は召喚魔術を望む! いでよ我がしもべ! 汝と契約を交わさん!」


クーラの用意したアンチョコを見ながらの詠唱。

このグダグダな呪文でさえ、魔法陣に魔力が集まりだす。


……原初の法は優先度が一番高いから、こんな呪文でも発動しちゃうのか。


内心で感心していると、みるみるうちに魔力が形をなしはじめた。

それは【霊視】と【魂視】をもつ俺にしか分からないことだが、


……ランダムで生命を創造するというのか。


デタラメだ。

魔力で肉体を造りだし、魂すらも新造される。


数秒が長く感じる。


そして、そのときがやってきた。


「なにこれ~っ?!」


タマもびっくり仰天。


魔法陣の上に現れたのは、小さな黒っぽい球体だったのだ。

どう見ても小石にしか見えない。


クーラもこの結果に挙動不審になる。

タマはワナワナと震え、「え、これ? これがそうなの?」と信じられない気持ち一杯で手をワキワキさせている。


このままだと混乱し続けるだけなので、説明してやろう。


「落ち着けふたりとも。それはアタリだ。ゴーレム・コアだ」


「え、ゴーレムなの!?」


「……ああ、なるほど。ゴーレムのコアだったのか」


そう、小石にしか見えないが、これはれっきとしたゴーレムのコアだ。


結果は分かっていたが、詳細なステータスなどはまだ視てないので分からない。

しかしゴーレムといえば荒れ地や山岳地帯に生息する強力な魔物だ。

弱いわけはないと思うのだが……。


【魂視】でタマとゴーレムを視る。

タマの方には魂ツリーに【契約:名称未定】が新たに生えている。

【魂触】で悪さができないかとも思ったが、ツリーの移動はできなさそうだ。

ゴーレム・コアの方にも【契約:コルニ】というスキルが魂ツリーに生えている。


ちなみに魔物の魂は人類や魔族と異なった形状をしており、互換性がないため、魔物のスキルや魔術を【魂触】で奪うことはできない。

魔物の持つスキルをその魔物のツリーの間で移動させることならばできそうだが、今の所は触る余地もないほどスカスカだ。


「タマ。もう契約が結ばれているから、命令できるぞ。ステータスを出して命名してやったらどうだ」


「お、うん。分かったやってみる。……ステータスを見せなさい!」


ゴーレム・コアはタマに見えるようにステータスを表示した。


「わ、ほんとだ。種族がゴーレム・コアになってる!」


クーラが横からステータスを覗いて「名前欄も空欄だね。タマが好きな名前をつけるといいよ」と言った。


「う~ん、何が良いかな~……イズキくん、何かいい名前ある?」


「契約者であるタマが好きな名前を付けるのが大事だと思うぞ」


名前って難しいよね。

コルニの偽名にタマとか付けちゃうくらい俺に命名センスはない。


「よし、決めた。君の名前は、――タマだ!」


「え、なにそれ紛らわしい」


よりによって自分の偽名をつけるとか何を考えているんだ。


「だって~。この偽名、迷宮都市についたら名乗らなくていいんでしょ? ならせっかくだし、この子につけてあげたいなって……」


「うわ、受理されてるぞ。取り消しできねえ」


ゴーレム・コアの名前はタマになった。

当面は紛らわしいのでタマ2号と呼ぶことになったとさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ