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45.加入した新メンバーが戦闘素人な件について

問題はみっつある。


金貨を運ぶ方法。

通行手形を購入する際に大金の出処を怪しまれないこと。

コルニの名前。


前者ふたつはともかく、喫緊の課題はコルニの名前、というかステータスだ。


俺は〈マスキング〉という闇属性の魔術を魂ツリーに移動して常時化している。

魔術を使う素振りも見せずに偽装済みの状態でステータスを提示できるので非常に便利で見破られにくい。


クーラの場合は狐人族の種族スキル【種族偽証】でステータスを誤魔化している。

樹形図でみると【人化】の先にあるスキルで、種族を人間族に書き換え、人間族が習得しているとおかしいスキルを自動的に消してくれるらしい。

ちなみに夜魔族の場合は必ず闇属性の魔術適性があるため、自力で〈マスキング〉を習得するのだとか。


さてコルニは名前が娼館に知られているため、偽名を用いなければならない。

少なくとも、この街の周辺ではコルニを名乗るわけにはいかないのだ。


……国をふたつまたいだ頃には本名を名乗っても大丈夫だろうけどね。


「やっぱ〈マスキング〉かなぁ」


「でもイズキ、コルニは魔術の手ほどきなどは受けていないそうだよ」


言われるまでもない。

コルニが習得しているスキルは【歌唱】や【舞踊】といった戦闘に関係ないスキルばかりだ。


「クーラ。実は俺、魔術をもらうだけじゃなくて与えることもできるんだ」


「……なんで隠すのかなあ。僕、実は信用されてないの?」


いやいや。

でもこんなチートをひけらかすのは気が引けるじゃないか。

更にスキルも奪ったり与えたりできるなんて、知られるだけで命の危険を感じるレベルだ。

本来なら墓場まで持っていきたい秘密である。


「便利は便利だけど、犠牲になるのは俺のレベルアップなんだよ」


「それは……代償が大きいね」


クーラが深刻そうな顔になる。

すまない。

実は魂、大量に保有しているから別に大して痛手じゃないんだ。


「ま、コルニのためだからね。面倒みるって決めたからね」


「イズキくん、ありがとう。お姉ちゃん嬉しいなあ」


その露骨な年上アピールやめろ。


そう何を隠そう、コルニは14歳で、俺よりも年上なのである。

実際、身長もまだ負けているのだ。


というわけでチャチャっとコルニに〈マスキング〉を与える。

まず俺が〈マスキング〉を取得して、コルニの【人化】の下に移動してから常時化する。

魂ツリーの下ではなく【人化】の下に置いたのは、俺と違って【人化】していないときは普通のステータスが表示される方が便利だろうからだ。

このときに内容も決める必要があるので、


「タマ、人間族か。うふふ」


知性ある相手につけるような名前じゃないかもしれないが、しばらくの間の偽名だからこれでいいだろう。


ちなみに横からステータスを覗いていたクーラは、その戦闘能力のなさに愕然としていた。


「イズキ。さすがに彼女は旅の荷物になると思うけど、何か考えはあるのかな?」


「うわ、クーラさんが冷たいことを! イズキくん、何か言ってやってよ!?」


「うーん。実際、コルニ……いやもう今からタマって呼ぼうか。タマは現状、戦力にならないよ」


「がーん! イズキくんまで……」


タマはヨヨヨ、と芝居がかった泣き真似をする。

これは娼館の仕込みなのだろうか。

あざといトーク術。

別にそんなスキルはもっていないが。


「とはいえ何か護身用に身に着けた方が良いのは確かだ。クーラ、猫人族の特徴ってなんだ? 得意分野は?」


「ああ、うん。猫人族はねえ、……好奇心のままにいろいろなことに手を出してオールラウンダーになる傾向があるかなぁ」


好奇心のままにいろいろなことに手を出してどれも中途半端に投げ出すってことか。

素直に器用貧乏って言えよ。


「とりあえず飽き性なのは分かった。それで種族特徴は? 獣系統だから敏捷と感知は鉄板なんだろうけど」


「筋力は低めで、器用さは高めだね。魔術に関しては個人的な適性次第かな」


筋力が低いのは痛いなあ。

軽戦士か、斥候、適性があれば魔術師でもいける……ってそれ俺とクーラの完全下位互換なのでは。


……最悪、野盗から奪った【弓Lv2】を与えれば即戦力化はできるんだが。


それは最終手段にしておこう。


「タマの魔術適性か……調べてみるか」


「じゃあ識別水晶を買ってこなきゃね」


識別水晶とは、魔術の適性の高低と属性を調べるために使う道具だ。

どこでも手に入るものだが、今回は必要ない。


「いや、俺は視るだけで分かるよ」


「イズキ……君ってほんと何でもできるね」


「イズキくんすっごーい」


【霊視】と【魂視】がカンストしてるから視ればいいだけなんだよな。

ただ表層には表れない情報だから、少しだけ深く視なければならない。


「んー……んん?」


おっと、これは珍しい。


「イズキくん、私って魔術つかえそう?」


「タマは非常に珍しい才能をもっているよ」


「ええ!? 私ってばすごいの!?」


「ああ。混沌属性だ。ウチの集落にはいなかったな」


「……タマが、混沌属性? それはまた……なんというか」


クーラが「あちゃー」と顔を手で覆う。

まあそうだな。

普通はそういう反応になるわな。


「え、なにクーラさん。私ってば超才能あるんですけど!?」


「才能っていうか珍しいのは確かだね。混沌属性……一万人にひとりくらいかな」


「おお!」


「ただしひとつしか魔術が使えないけど」


「……おお?」


「召喚魔術……何が出るか分からないことから、混沌属性と呼ばれているんだよ」


クーラが全部言ってくれた。


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