44.もう少しスマートにやれなかったのかね
「……で、顛末がこれかい」
渋い顔したクーラが、金貨を数える俺とコルニを眺めながらため息をつく。
コルニには【人化】も取得させて、今は人間族の少女にしか見えない。
実のところクーラの樹形図に【獣化】と【完全獣化】が視えていたときから、考えていた。
邪神の加護を使えば、多分ほとんどの魔族は【獣化】【完全獣化】【人化】が取得できるのではないか、と。
コルニを見てまた確信が深まったというわけだ。
実のところ、コルニがついてくるかどうかはどうでも良かった。
もし逃げ出すだけの意思があるなら、叶えてやるだけの力が俺にはあったというだけだ。
もしコルニにあの短時間で逃げる決心がつかないようなら、連れ出すことはしなかった。
だが連れ出してしまった以上は、面倒を見てやるつもりだ。
さて今回の計画のあらましを今更ながらだが、説明しておこう。
まず〈イリュージョン〉に特定のマッチョ姿を投影する改造を施す。
更にクーラからふたつ目の〈イリュージョン〉をもらう。
このノーマルな〈イリュージョン〉とマッチョしか投影しない〈イリュージョン/変装・怪盗ウルフ〉は別の魔術として扱われ、それぞれ使用できる。
なおこの〈イリュージョン/変装・怪盗ウルフ〉を肉体ツリーに移動することで、俺の動きに連動して動くようになる。
ただマッチョ姿の幻影は実体である子供の体格とマッチしないので、当然のことながら触られるとバレる。
豚野郎がすがりついてきたときに慌てて蹴り飛ばしたのはそのためだ。
【隠密】を駆使して娼館に侵入し、なかでも一番飾られた部屋の壁に張り付き、〈イリュージョン〉で壁と一体化する。
当然【隠密】し続けるから気配もなにもない。
ここで〈インビジブル〉を使わなかったのは、単純に魔力の消費を節約したかっただけだ。
そして金貨が出揃ってから〈イリュージョン/変装・怪盗ウルフ〉を使用してから、壁に偽装していた〈イリュージョン〉を解除して華麗に登場。
更に同時に〈インビジブル〉を使用して姿を消しておく。
【並列思考】は本来、このように魔術を同時に複数起動するために使われるスキルだ。
なお今回は魔術の多重起動を駆使するために、【並列思考】のスキルレベルをひとつ上げた。
用心棒を無力化しながら革袋に金貨を詰め込み、ついでに可能なら猫人族の少女に【完全獣化】を与えて連れ出す。
懸念は【完全獣化】した猫人族のサイズだったが、普通の猫サイズだったので、マッチョの幻影に上手く隠れてくれた。
後は逃げるだけ。
娼館を出たら一気に人気のない場所まで駆け抜けて、〈イリュージョン/変装・怪盗ウルフ〉を解除してから、少女に【人化】を与えて宿まで案内し、クーラの部屋に行かせる。
俺は予め開けておいてもらった窓から侵入し、そこでようやく〈インビジブル〉と【完全獣化】を解き、金貨の入った革袋をおろしてミッションコンプリートというわけだ。
「【完全獣化】を他人に与えることができるなんて……本当にイズキは非常識だね」
「いいだろ、使えるもんは使わないと。あ、クーラも欲しい?」
「欲しいよ、そりゃね」
まあそうだね、便利だもんね。
今回のポイントは【完全獣化】した際に手荷物が消えるところだ。
どこまでの荷物が消えるのかは予め実験して把握している。
衣服、ベルトなどで身体にくくりつけている荷物は消える。
くくりつけていさえすれば割と大きな荷物でも消せるが、建築物などそもそも持ち上げられないようなものは消えない。
手に持っているだけのものはその場に落ちる。
……まあ金貨の入った袋が消せるなら、それで良いわけだけど。
「さてコルニ。これからは人間族のフリをして、魔族であることを隠して生きていくんだ。できるよな?」
「うん。できる、と思う。頑張る」
「よし、誰かひとりでもバレたら、全員が危険になる。俺もクーラもコルニも、今日から一蓮托生だ」
「一蓮托生、だね!」
「……僕はそんなの聞いてないよ」
天を仰ぐクーラ。
「いいじゃん。こうしてひとりだけど魔族を救った。ただの自己満足だけどさ、別に構わないじゃん。自己満足でも」
「それが何にもならなくても?」
「少なくともコルニは自由を得た。何にもならなかったわけじゃない」
コルニだって自分以外の他の魔族を助けてくれ、などとは口にも出さない。
分かっているのだ。
俺はひとりしかいないし、俺の手のひらに乗る人数には限りがあることを。
それをコルニのために独占させてやるのが、面倒をみるということなのだ。
「……分かった。今日からコルニも僕らの仲間だ」
「ありがと、クーラ。その、これからいろいろと迷惑かけると思うけど……」
「大丈夫。そこはイズキが全部面倒みてくれるそうだし、僕にかかった面倒は全部イズキに貸しにしとくだけだから」
酷い奴だ。
でも分かってくれている。
さあ、金貨もたんまり手に入ったし、後は通行手形を入手するだけだ!
「でさ、イズキ。その大金、結局どうやって持ち運ぶの」
……おや?
「それで、通行手形を買うときに金貨を出すわけだけど、その大金はどこから、って問われたらなんて返すの?」
……おやおや?
………………。
ま、まあその辺は今から考えるから!
魂
├無銘の霊刀
│├【刀Lv5】
│└【不死者特攻Lv10】
├邪神の加護
├【魂獲得量増量Lv10】
│└【魂喰いLv5】─〈魂砕き〉
├【魂触Lv5】
└〈マスキング/常時化〉
肉体
├筋力
├器用
│└【投擲Lv2】
├敏捷
│├【走力Lv3】
││└〈テイルウィンド/連動〉
│└【忍び足Lv2】
├感知
│├【聴覚Lv3】
│├【嗅覚Lv3】
│├【夜目Lv3】
│├【望遠Lv1】
│└【聞き耳Lv1】
├生命力
├【剣Lv2】
│├〈マナ・ドレイン/連動〉
│└〈疾風刃〉
├【刀Lv2】
├【槍Lv2】
├【斧Lv2】
├【格闘Lv2】
├【弓Lv2】
├【隠密Lv2】
├【獣化】─【完全獣化】
├【人化】
└〈イリュージョン/変装・怪盗ウルフ〉
精神
├理性
│├【並列思考Lv3】
│├〈マナ・ジャベリン/長射程化〉─【投槍Lv2】
│├〈ウィンド・ストーム/広範囲化〉
│├〈ファイア・ジャベリン/長射程化〉
│└〈ファイア・ストーム/広範囲化〉
├感情
├記憶
│├【剣Lv2】
│├【槍Lv2】
│├【格闘Lv2】
│└【投擲Lv2】
├第六感
│├【直感Lv5】
││├【未来視】
││└【過去視】
│├【霊感Lv3】
│└【霊視Lv5】─【魂視Lv5】
├魔力
│├【魔力操作Lv5】
│├【爪Lv5】
││└〈マナ・ドレイン/連動〉
│└【牙Lv5】
│ └〈マナ・ドレイン/連動〉
└魔術
├〈マナ・ボルト〉
├〈マジック・アロー/3WAY〉
├〈クリエイト・ポーション〉
├〈ウィンド・カッター〉
├〈エアタイト・シェル〉
├〈マナ・ドレイン〉
├〈ウォーター〉
├〈ピュリフィケーション〉
├〈ウォーター・スピア〉
├〈グルー・リキッド/速乾〉
├〈ファイア〉
├〈ファイア・ボルト〉
├〈ファイア・ウェポン〉
├〈ライト〉
├〈キュア・ポイズン〉
├〈フラッシュ〉
├〈イリュージョン〉
├〈ホーリー・ヴェール〉
├〈インビジブル〉
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