42.イケメンチーレム展開くる~ぅ?
「……それは娼館で初めて客を取らされるという話で合っているね」
「そうか。そういう魔族ってやっぱ多いのか?」
「ああ、残念ながら……」
クーラの表情は険しい。
「金持ちや権力者は特に酷いよ。彼らが好んで囲うのは夜魔族なんだ」
「まあそういう種族だしな」
「違う。夜魔族は美形で、その子供もまた例外なく美形に生まれる」
「……んん? それだと俺は美形だということになるが」
「鏡を見たことがないのかいイズキ」
「いや、ないことはないが。……俺って、美形なのか?」
「十人が十人、美形だと言うよ。君、目立ってるって自覚なかったの?」
「……まったく気づかなかった」
前世の日本人の感覚で言えば、この世界の住人は揃って美男美女だ。
彫りの深い西欧風の顔立ちで。
しかも肉体労働が多く食生活も質素なため、肥満にならない。
人によって好みはあるだろうが、俺からしたら誰も彼もみんな美形なのだ。
「で? 美形を愛でているのがそんなに悪どいのか」
「金持ちや権力者は、夜魔族に好みの魔族の子供を産ませるんだ。そうして代々、夜魔族ともう何種族かの魔族を飼っている」
あえて「飼う」と表現したクーラの意図は明白だ。
それほどまでに酷い扱いを受けているのだろう。
「それに知らないかも知れないけど、人類と魔族との間に、子供は生まれないんだよ」
なるほど、避妊も不要か。
そりゃそういう扱いにもなる。
「そして金持ちや権力者が飽きたり、気に入らなかったり、不要になった魔族の行き着く先が娼館さ。そして娼館でも同じように、夜魔族の子らが客を取らされたり、子を産まされたりする」
「……それで。本神殿はその状況をどうにかする気はないのか」
「無理だよ。人類の国に蔓延している悪趣味な連鎖は止めようもないほどに広がり過ぎている。どこから手を付けても、どこまでも果てがない」
「分かった。それなら仕方ないな」
現状でどうにかなる話ではないことは、なんとなく分かっていた。
ただそうであることを確かめるためにクーラに聞いただけだ。
「さてそれはそれとして、今夜積まれる金貨の山を掻っ攫おうって話はどう思う」
「危険すぎるし、難しいと思う」
「そんなに危険か?」
「娼館だって大金が動くのが分かっている。用心棒が多数動員されているはずだ」
「全部、蹴散らしてやればいいじゃないか」
「その後は? 抱えきれない金貨の山は荷物にしかならない。そんなものを抱えて逃げ切れるわけがない」
なるほど、金貨の山は持ちきれないし、それを抱えて逃げるのも無理か。
「それなら金貨の山を軽々と持ち運ぶアテがあるなら、逃げ切れるな」
「逃げ切っても、地の果てまで追ってくるだろうけどね。手配書も回るだろうし、とてもじゃないが人類の街で生きていくことはできなくなるよ。魔族の領域に持ち帰っても、金貨なんて使い道はないじゃないか」
ほほう、なるほどね。
「貴重な意見をありがとう。人類に詳しいクーラの話が聞けてよかった」
「わかったならいいよ。馬鹿な考えを起こすのはよそう。明日は薬草採取に……」
「今夜は決行だな」
クーラが凄い顔で俺を見た。
問題点は洗い出したし、それに対する対策が立てられる。
ならやるしかないでしょ?




