34.ちょっと下方申告し過ぎじゃねえのこれ
問題なく水属性の魔術を行使できたため、まず野盗どもから剥ぎ取った衣服の洗濯をして、ようやくまともな格好ができるようになった。
外見が普通の子供にランクアップした俺は、更なる情報収集のために街への侵入を企てた。
……というか、入るだけなら塀を飛び越えればなんとでもなるんだけどな。
街に入り込んでからは【隠密】しながら【聞き耳】に徹して、人間族として違和感のない会話方法を学んだ。
そして早速、実践してみる。
「マスター、ミルクをひとつ」
「ここはガキの来るような店じゃねえよ」
そう言いながらも酒場のマスターはミルクを出してくれた。
ミルクが店にあるのは、「下戸だからミルクをくれ」という誰かの言葉から知ったのだ。
「ちなみにミルク一杯っていくらすんの?」
「おい! まさか金も無ぇで注文したんじゃねえだろうな!?」
「あるよ。銅貨1枚でいい?」
「……いいがよ」
相場まではちょっと分からない。
これがお子様価格でサービスされているのか、適正価格なのか、それとも出しすぎているのか。
「で、聞きたいんだけど。迷宮都市ってどうやって行けばいいの?」
「おい、お前どこのガキだ。そいつは死にに行くって意味だぞ。お前の親はそんなことも教えてくれなかったのか」
「両親への手土産が欲しくてね。生憎とあの世に持っていけるのは土産話くらいだけど、腕っぷしがあれば稼げるって話だからさ」
「……親なしのガキなんざ珍しくもねえ。大人しく神殿に行って食わせてもらえ」
おっとそう来るか。
神殿が孤児院でも運営しているのかな?
そうなると下手なことして連行される先も神殿か。
そりゃマズい。
「いやさ。自分で稼げるのに神の救いに頼ってちゃ、俺のせいでひとり分、食いっぱぐれる子が出るかもしれないじゃんか」
「なんの心配してんだガキが。だいたい迷宮都市で稼ぐって……お前に何ができるってんだ」
俺は無言でステータスを表示して、マスターに見せてやる。
《名前 イズキ
種族 人間族 年齢 11 性別 男
レベル 15
【剣Lv2】【走力Lv3】》
スカスカで内心、笑いをこらえているステータスに、マスターは目を見張る。
「こいつは……」
「なかなかのもんだろ?」
「お前もしかして、いいとこの坊っちゃんだったのか?」
「いや。普通に戦士の家系ってだけだよ」
まあウチの集落に戦士じゃない家系なんてなかったけど。
「しかしなあ……」
「どっちの方角にあるとかでもいいんだぜ。そっちに向けて歩いていくだけさ」
なおも渋るマスターを見かねた客のひとりが、「君、よければ僕が教えてあげようか」と声をかけてきた。
……おっと、コイツは予想外。
一見して優男だが、物腰はかなりデキる。
それだけでなく、【魂視】で視れば、
……まさかの狐人族か。
魔族だった。




