31.え、ここもスルーすんの!?
念の為に街の出入りを観察する。
【隠密】と【望遠】で距離をおき、出入りする人のやりとりを把握するのだ。
まず一番多いのは商人らしき集団。
馬車に荷物を載せて、何やら手形のようなものを提示して街に入っていく。
……参考にならないな。
次に多いのは、野菜売りだ。
商人と違って近隣の農村からやってきた村人なのだろう、荷車に新鮮な野菜を載せて街に入っていく。
ただし野菜売りは早朝に顔パスで入って、昼前には街を出てきてしまう。
恐らく顔馴染みで、野菜を売る以外のことをしないから決まった手形などをわざわざ用意していないのだろう。
最初に野菜売りとしてやって来るときくらいは、村長の紹介状くらいは必要かもしれない。
なんにせよ、これも参考にはならない。
俺が見たいのは純粋な旅人の出入りなのだが、残念ながらそのような人種にはお目にかかれなかった。
単純に旅人が少ないのかもしれないし、運が悪かっただけかもしれない。
街はそこまで高くはないが塀に囲まれている。
本気を出せば越えられない高さではないが、街中で見知らぬ子供が歩いていたら、怪しまれないだろうか?
……それは正規の手段で入っても変わらないか。
やはりネックは11歳という年齢と年相応の外見だ。
ピチピチパツパツの服装も相まって、どう考えてもトラブルを引き起こす未来しか想像できない。
俺はひとまずこの街もスルーすることにした。
魔族との国境から離れれば離れるほど、人類の中に入り込む隙が増えるだろうから、もっと人類の領域の奥へ進むのも悪い考えではないと思うのだ。
俺は【完全獣化】すると、街道を外れた野山に入り込んだ。
そろそろ商人などまっとうな人類との遭遇がありうる。
この姿なら魔物だと思われるだろうから、怪しげな子供の姿より面倒ごとにはならないはずだ。
ちなみに人類への態度は決めかねているので、万が一遭遇したら逃げの一択である。




