26.もう容赦しねえ
【完全獣化】した俺は、魔物を狩り腹を満たし、魔族の集落を避けながら彷徨っていた。
目的地はなし。
意識は獣化と違って暴走状態にはならないものの、やはり獣と化す。
【並列思考】により獣化の影響を受けていない方の俺は、獣の俺に全てを任せて、まどろみの中にいた。
狼となった俺は気まぐれに魔物を狩り、気の向くまま歩き、気まぐれに走ってみたりしながら、当て所もなく生きていた。
ただ生きているだけ。
眠る必要はないらしい。
というか多分、【並列思考】の片側である俺が休んでいる状態なのだろう。
昼も夜もなく、狼は何処かへ進む。
退屈しのぎに邪神の加護を起動してみると、肉体ツリーに【牙】が増えていたのでレベルを上げて魔力ツリーの下に移動してやった。
ついでに〈マナ・ドレイン〉も連動発動するようにしておく。
ずっと狼の状態でいたからか、【嗅覚】【聴覚】【夜目】のレベルが上昇していた。
また走りまくっているせいか【走力】のレベルも上昇していた。
さて有り余った魂の使い道だが、ひとまずレベルアップに費やすことにする。
無銘の霊刀を振るったときに密かに不満だったのは、身体能力の不足だ。
体格が10歳なのだから仕方のないこととはいえ、ステータスの全体的な底上げは無駄にはならない。
ひとまず父ジャンと同じレベル30まで一気に上げた。
一人前の人狼族としては不満のないレベルだろう。
これで不足を感じたら、俺の未熟だ。
レベルを倍近く上げたにも関わらず、魂はうなるほど余っていた。
さすがレベル80の化物を倒しただけのことはある。
【魂喰い】でいくらかロスしたはずだが、そんなの誤差だと言わんばかりの数字が残っていた。
強くなるのに手を抜いたら、どうなるかはもう知った。
天狗になって、鼻っ柱をへし折られて、もう二度とあんな目にあうのは真っ平御免だと、身をもって知った。
だから強くなることに躊躇してはならない。
まず【並列思考】のレベルをひとつ上げる。
常に周囲を警戒し、不意打ちに備えるために思考をひとつ割き続けるのは有意義な使い道だろう。
次に【霊視】を上限であるレベル5にした。
【霊視】なんてレベル1でいいと思うだろうが、【魂触】のレベル5で新しくできるようになったことの前提に必要となるのだ。
もっとも高レベルの【霊視】は、魔力の流れから事象の起結、原初の法を含む世界の理を見通すことができるようになるので、無用の長物というわけでもない。
前提は満たしたので、次に行こう。
次にレベルを上げるべきはやはり【直感】だろう。
ひとつ伸ばして限界のレベル5にしたら、樹形図に新たなスキルが現れた。
【直感】から伸びるふたつの枝は、それぞれ【未来視】と【過去視】である。
迷わず両方取得しました。
方やチートの定番、方や探偵いらず。
取って損はないだろう。
魂はまだ結構な量が残っているが、しかし【剣】を達人レベルまで伸ばすには足りない。
半端になるなら温存でいいだろう。
しばらく狼のままでいるから、剣を振る機会もないだろうし。
俺は満足し、またまどろむことにした。




