16.試行錯誤しながら弄りまくり
【魂触】の効果は、邪神の加護で表示される樹形図の操作だった。
つまり自己の魂の改竄である。
……これこそまさにチートだな。
具体的に出来ることは、樹形図に表示されている項目の移動だ。
ただ残念ながら無銘の霊刀に影響を及ぼすことはできなかった。
目的である霊刀との対話は叶わなかったが、有用なスキルを得たのでひとまず良しとしよう。
目的を一旦保留するのは、このスキルを理解し、使いこなすのに時間がかかりそうだからだ。
実際にやってみよう。
精神ツリーの魔術以下にはこれまで習得してきた魔術がいくつかある。
母ニノンが夜魔族であるため魔力量は人並みにあるのだが、そもそも人狼族の魔術適性が低すぎて、習得した魔術はどれもこれも上手く使えなかった。
その中のひとつ〈マナ・ボルト〉は、無属性の攻撃魔術で、ただ魔力の塊を打ち出すという基本的なものだ。
試しにこれを使って実験してみることにする。
〈マナ・ボルト〉は精神ツリー以下ならば割とどこにでも移動できるらしい。
移動できないのは第六感くらいだ。
まず感情の下に移動してみた。
すると〈マナ・ボルト〉の効果に変化が現れる。
……感情の振れ幅によって威力が増減する、か。
つまりテンションが上がった状態で撃つと高威力、そうでなければ大した威力が出ない気分任せの魔術に変貌したわけだ。
使いづらい。
幸い再配置できるようなので、一旦、魔術ツリーの下に戻す。
すると効果は元の〈マナ・ボルト〉のものに戻った。
……元に戻せるなら実験を続けてもリスクはなさそうだな。
次に〈マナ・ボルト〉を理性の下に移動させてみる。
するとまた効果が変化した。
今度は〈マナ・ボルト〉の発射に際して必要諸元を入力することで、精密な射撃が可能となるらしい。
ただし、単純に目の前に撃ち出すだけでも必要諸元の入力を求められるため、咄嗟に撃つことができなくなった。
しかし感情に比べて利用価値が高い変化だ。
長射程の魔術や、戦闘以外で使用するような魔術は理性の下に移動させることで利用価値が高まるだろう。
次いで魔力の下に移動させてみたが、これは特に変化がなかった。
別の魔術などなら効果に変化があるのかもしれない。
そして次は記憶だ。
これは劇的な変化が起こった。
まず〈マナ・ボルト〉が使えなくなった。
代わりに、〈マナ・ボルト〉についての知識を脳裏で参照できるようになったのだ。
……で、一体これは何に使うんだ?
再度〈マナ・ボルト〉を習得することができるのだろうか?
そうした場合、樹形図に〈マナ・ボルト〉がふたつ存在するようになるが、弊害などはないのだろうか?
……分からないので、ひとまず魔術の下に戻せるか試そう。
戻せてしまった。
再び〈マナ・ボルト〉を行使することができるようになった代わりに、先程まで鮮明に思い浮かべることができた〈マナ・ボルト〉に関する情報が思い出せない。
……記憶にスキルを移動した後に、再度そのスキルが習得できるかは試した方が良さそうだな。
さてこれが【魂触】というスキルの効果だ。
他にもざっと触れただけで、【剣】を記憶に移動させたり、筋力・器用・敏捷に移動させられることが分かった。
試しに【剣】を敏捷に移動させて振るってみた結果、俺の剣技は様変わりした。
素早い攻撃を繰り返すのが得意になった反面、力任せに振るうという動きができなくなったのだ。
恐らく筋力に移動させれば真逆の結果になるだろう。
……しかし主武装である【剣】は肉体直下から動かさない方がいいな。
投げナイフなどを扱う【投擲】スキルを習得できたら、器用か敏捷の下に移動させる価値はありそうだ。
【斧】のようにそもそも力任せに振るうことを前提にした武器も筋力に移動させて差し支えないだろう。
【魂触】のスキルレベル1でこれだけのことができる。
レベルを上げていったらどれだけの変化をもたらすことができるのか。
……意外と早く、無銘の霊刀との話し合いが実現できるかもしれないな。
可能性の扉は開いた。
片付けたい問題や叶えたい目標は積み上がるばかりだが、着実に前進していると信じたい。
魂
├無銘の霊刀
│├【刀Lv5】
│└【不死者特攻Lv10】
├邪神の加護
├【魂獲得量増量Lv10】
│└【魂喰いLv1】
└【魂触Lv1】
肉体
├筋力
├器用
├敏捷
├感知
│├【聴覚Lv1】
│├【嗅覚Lv1】
│└【夜目Lv1】
├生命力
├【剣Lv1】
├【刀Lv1】
├【格闘Lv1】
├【走力Lv1】
├【爪Lv1】
├(獣化)
└(人化)
精神
├理性
├感情
├記憶
├第六感
│├【直感Lv1】
│├【霊感Lv3】
│└【霊視Lv1】─【魂視Lv5】
├魔力
└魔術
├〈マナ・ボルト〉
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