15.来るぞチートの予感
女性の霊について調べたところ、あの湿地帯を守る守護霊のような存在がいるらしい、という噂を聞くことができた。
残念ながら女性がどのような存在だったのか、確実な情報はなかったが、少なくとも俺たち魔族に害をなす存在ではなかったようだ。
……ただアンデッドというだけで、それを斬るか。
森で浮遊霊を斬っていたときには、身体を操られるようなことはなかった。
恐らく対峙するアンデッドが強力な存在であるほど、それを滅ぼそうとする霊刀の意思が強く表に現れるのだと思う。
今でも彼女の驚愕と絶望の表情が脳裏に焼き付いている。
アンデッドは『歪み』と呼ばれる悪性の存在だと、一括りにする霊刀の考え方は俺にはそぐわない。
前世でも霊感には散々と悩まされてきたが、稀に悪さをしない、むしろ人に友好的な霊もいた。
……なんとかしないとな。
着物姿の霊刀とは、転生前に会ったきりだ。
この世界に生まれ落ちてから、声を聞いたのすら久々のことだった。
どうやったら霊刀と話ができるのだろうか?
……そういえば、俺の魂と同化しているとか言っていなかったか?
邪神の加護を起動し、魂から伸びる無銘の霊刀の項目を確認する。
特に変化はない。
樹形図を見渡しても、以前と違う部分はなかった。
魂に関連するスキルを伸ばしていけば、霊刀と会話する手段が得られるかもしれない。
憶測だが、試してみるだけ試してみるか。
高レベルのゴーストを斬ったせいで、魂の保有量はいまだかつてないほどの数値を表示している。
無駄遣いになったとしても、問題ないだろう。
魂に関するスキルはいくつかあるが、まず【魂視】のスキルレベルを上げることにした。
【魂視】はレベル1では相手のレベルしか表示されない。
相手の強さを類推するには十分と言えなくもないが、欲を言えばもっと情報が欲しい。
……スキルが見えるようになれば、使い勝手はかなり良くなるだろう。
【魂視】をレベル2にした。
種族が表示されるようになった。
【魂視】をレベル3にした。
年齢と性別が表示されるようになった。
【魂視】をレベル4にした。
名前が表示されるようになった。
……スキルレベルひとつに対して、得られるようになる情報が少なすぎないか?
魂に刻まれている情報だから、偽装できない点で便利とはいえ物足りない。
とりあえずキリよくレベル5にしよう。
【魂視】をレベル5にすると、ようやくスキルが表示されるようになった。
これでステータスと同じだけの情報量が得られるようになったというわけだ。
同時に樹形図に変化があった。
魂から【魂触】というスキルが生えたのだ。
……魂を触る、ことができるのか?
それがどのような意味をもつのかは不明だ。
しかし分からなければ取得してしまえばいい。
【魂触】のスキルレベルを1にした途端、このスキルが俺をとてつもなく強化するものだと理解した。




