130.魔族の春
俺は拠点で宇宙を見上げるガイアヴルムに話しかけた。
「ガイアヴルム、ダンジョンをみっつ、維持する気はあるか?」
「ダンジョン? 六柱の神々が竜を封じるためにつくったアレかい? できなくもないし、興味深いので吝かではないが」
「ダンジョンから取れる魔物の物資で経済を回している国があるんだ。そのひとつ……この拠点にしているダンジョンを擁している国に俺の知り合いがいてね。約束したんだよ、ダンジョンを戻すって。でも俺が他の惑星に行くとなったら、ダンジョンから湧き出す魔物の管理をガイアヴルムに任せなきゃならないだろ?」
「なるほど、承ろう」
「ありがとう、助かる。で、早速なんだがこのダンジョンを元の場所に戻したいんだが」
「ふむ。いいだろう、大規模な空間魔術が必要だが、君ひとりでできるかね?」
「ランドルフとセクレタリに手伝わせれば可能だ」
「……君はもう私よりも強いチカラを持っているようだね」
「そうなのか? せいぜい互角くらいだと思っていたけど」
「いや。6柱の神々を喰らった君は神格の数で私に勝っている。神になったランドルフ、己で作り出した属神。それらも加味すれば私との差は明らかだ」
「そうか……」
図らずとも俺はこの世界で最強の存在になっていたらしい。
もっとも、チカラを振るう場所はもうないが。
「さて……イズキがこの拠点を地上に戻すというのなら、私もやっておくことがある。地上の雑多な神気を、私の神気で塗りつぶさねばな」
「……人類はどうなるんだ?」
「別にどうもしないさ。彼らは弱るだろうけど、その程度だよ」
「まあそうか……わざわざ滅ぼしたりなんてしないか」
「人類はいずれ地上での版図を魔族に奪われるだろうが、その程度だろう。自然の成り行きに任せるのみさ。神は地上の諍いに手を出さない、これは神をやる上でのコツだよ」
「へいへい。参考にしますよ」
「ふむ。ではやろうか……」
その後、ガイアヴルムは地上を己の神気で染め、俺たちはダンジョンを迷宮都市に移設した。