126.封印回収
砂漠の真ん中に、最後の封印のある神殿はあった。
ヴィータボロスの神殿だろうが、長い歳月を放置していたのか、神殿は半ば砂に埋れてしまっている。
「……この分じゃヴィータボロス本人はここにはいないな」
いくら裏切りの神でも、もう少し住まいは整えていることだろう。
この砂まみれの神殿にいるとは思えない。
そもそも封印6つを管理していた6大神ならばこの場所に7つめの封印があったことを知っていてもおかしくないはずだ。
そのうえでヴィータボロスの居所が知れないということは、つまりここにヴィータボロスがいないことを示している。
少し考えれば分かったことだった。
「7つ目の封印の反応は健在です、イズキ様。神殿内部を探索の後、神殿ごとダンジョンに移設しましょうか?」
「そうだな……頼む、セクレタリ」
「かしこまりました」
有能な部下がひとりいるだけで作業を丸投げできるというのは、最高だなあ。
「チ。結局、ヴィータボロスはいなかったのか」
「まあいても私らじゃ勝てないわけで」
「まあ奴だけは別格だったしなあ!」
……ん? どういうことだ?
「ヴィータボロスは強かったのか?」
ランドルフがこちらを見下ろして、頷いた。
「イズキ。今まで6大神と戦って、苦戦したか? ていうか、あの程度の連中にガイアヴルムが封印されると思うか?」
「…………いや、正直なところ肩透かしだった。ということは、ヴィータボロス1柱が強くて、ガイアヴルムは敗北したということなのか?」
「まあ概ね、そうだ。奴は強力な神格を持っていたからな。それでガイアヴルムも封印されるまで追い込まれたってわけよ」
「その神格ってのはどういうものだったんだ?」
「生と死」
「…………そりゃ、反則だろう」
生と死。
生かすも殺すも自由自在ってことか?
「いや、さすがに神や竜を即死させるようなもんじゃなかったぞ? だがこちらの攻撃を殺したり、味方のダメージを回復したりと、なかなか厄介な支援役でなあ……」
「なるほど、それは確かに厄介そうだ」
「単体の戦闘センスも、多分7柱の中じゃ一番厄介だったと思うぜ」
「……ふむ、そうなると向こうの出方次第だが、なかなか厄介な敵になりそうだな」
ランドルフと話していると、中を探索し終えたセクレタリが戻ってきた。
「イズキ様、中は砂だらけで長年、放置されていたと思われます。封印も確認しましたし、移設して構わないかと思われます」
「そうか、じゃあ拠点に神殿ごと移設しようか。これでガイアヴルムは復活だな……」
いいように使われた気もしなくはないが、元から奴の復活は織り込み済みなところもある。
移設はセクレタリに任せて、俺達は一足先に拠点に戻った。