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スキルツリーをぶっ壊すチートな邪神の御子さまは、いずれ最強になられるお方です。  作者: イ尹口欠
青年時代は神々と踊る

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107.やると言ったらやる

夜。

プロの手で調理された温かい食事は久しぶりだった。

とはいえ(ぜい)を尽くした、とまではいかないのがこの街の現在の経済状況を表している。


ダンジョンがなければ迷宮都市は本当に何もない、ただの都市だ。

俺があれだけ固執した迷宮都市の栄えた姿を見ることができなかったのはただただ残念だった。


食後に個室に集まった俺たちは、周囲に人気のないことを確認した。


「イズキ、なんなら〈マインド・コネクト〉を使うかい? 君のあの魔術なら多人数でも会話ができるだろう」


クーラがそう提案した。

しかし正直な話、今の俺の知覚を誤魔化せる奴は神くらいのものだ。


「そうだな。だけど周囲との音は遮断しているから漏れる心配もないし、誰もいないのにわざわざ精神魔術を使うのも大げさだよ。それに表層意識で会話するのにも慣れが必要だろ」


「……そうか、そこまで言うならこのまま話をすすめよう。それでイズキ、何があったんだい? 君が姿を消した4年間の間に」


「そうだな。まずなぜ俺が鳥人族の村から姿を消したのか。そしてこの迷宮都市にあった迷宮が消えた理由から話そう」


「やっぱりこの街のダンジョンの消失には君が関わっていたのか」


俺は肩をすくめて応じた。

そして話した。


風神エアバーンとのやりとり。

裏切りの神ヴィータボロスの存在とそれを可能ならば討つという俺の目的。

赤竜ランドルフとの戦い。


そして6大神による世界からの追放。


「なんてこった。それじゃあ、そのドラゴンとイズキを、6大神がダンジョンごとこの世界から追放したというのか」


「そうだ。それで俺は瀕死のランドルフの命を助けて、この世界に戻ってきた。4年もかかったけどな」


「それで、イズキは今、神にも等しい実力があるというのかい」


「正確には竜になった。狼の形質は失っていないけど、こちらに戻ってくるには竜に成らざるを得なかったんだ。今の俺の種族はダークドラゴン。ただし闇を極めるには程遠い半端な竜さ」


「ダークドラゴン……伝説のドラゴンに、イズキが」


俺の話のスケールに、この場の全員が沈黙するしかなかったようだ。

呆然としているというか、神が平然と姿を表して敵対するという光景が想像もつかない神話のようで現実味がない、といったところか。


「俺はこれから6大神、まず風神エアバーンから殺していく」


「ッ!?」


人間族のネルソンにはやはり刺激が強すぎたか。

まず、と言ったからには人間族をこの地上に遣わした太陽神ラーグイユも殺すということだからだ。


「6大神を……? しかしイズキ、君は7柱目の神を殺すという話では……」


「そいつの居所は分かっていない以上、殺せる奴から殺す。俺たちをこの世界から追放するという一方的な約束破りをした連中だ。生かしておくことはできない、というのが俺と相棒の一致した意思だ」


「相棒……そうだ、赤竜ランドルフはいまどこに?」


「いるよ、割と近く……とはいかないけど、追放されたときよりはこの世界に近い場所に」


正確には近くにある惑星にダンジョンごと転移して、そこにいる。

その惑星にあるダンジョンが6大神を敵に回した俺とランドルフの今の拠点だ。


「あの……それはやはり、やらねばならないことなのでしょうか」


「ネルソン。人間族のあんたには悪いが、やる」


ネルソンが震えている。

ただ戸惑いと恐怖で。


「だが別に人間族をはじめとした人類を滅ぼすなんて言ってないからな。6大神が全滅したところで、人類は普通に存続するよ」


「それは! それは、本当に?」


「俺のことを信じられないかもしれないが、本当にだ。現に邪神は封印されても俺たち魔族は普通に生きている。同じように6大神がいなくても人類は生きていけるよ。邪神はわざわざ人類を滅ぼそうなんてことはしないと思う。もし邪神がそうしようってんなら、俺が止めるよ。……力づくでもな」


人類に罪はない。

俺の、俺たちの報復対象はあくまで6大神だ。


それに多分だが、邪神は新たな種族が増えることを歓迎することだろう。

闘争を司る魔神ガイアヴルムは、そういう神だ。


俺はコルニとミレーヌに視線を移した。


「だから、この戦いにみなを連れて行くことはできない。神々と戦うことができるのは、俺とランドルフだけだからな」


「そんな……なんでイズキが……」


「ミレーヌちゃん……」


ふたりは悲壮な感じだが、実のところ俺は楽観的なのだが。

正直な話、俺とランドルフが力を合わせれば6大神を向こうに回しても勝てる算段がつけられる。


ただひとつの懸念を除けばだが。


「ネルソン、お前はこの館からでることを禁ずる。クーラ、いいか?」


「それは……なぜだか聞いてもいいかい」


「6大神の神殿で俺のことを話せば、連中にそれが通じてしまうからだ。だからこれから、〈ギアス〉で館の外へ出ることと俺について一切の他言を禁ずることにする」


今度こそ俺に対する恐怖でネルソンは震えた。


「家令の業務に支障が出るかもしれないが、ここに居合わせたのが運の尽きだったと思って諦めてくれ。ただし、ダンジョンは6大神を殺し終えたら元に戻すことを約束するよ」


「そのようなことができるのですか!?」


ネルソンが顔を上げた。

今からでもできるのだが、それをやると連中に気づかれてしまう。

だからダンジョンのない迷宮都市にダンジョンを返すのは、6大神を殺した後のことだ。


「できる。これは迷宮都市の利益になる話だろう。ネルソン、俺の言葉を受け入れろ。そうすればこの街はダンジョンを擁する元の迷宮都市に戻ることができるのだから」


「………………分かりました」


絞り出すように、ネルソンは答えた。


俺はネルソンに〈ギアス〉をかけて、その日の話し合いは終わった。


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