第3話 理解と急襲と開花
音自衛とグリフォンが魔法少女となった姿に驚いている頃、遥か彼方でその様子を見つめる少女の姿が一つ
「あいつ、、隠す気もない訳!?」
少女はいかにも驚いています。といった表情をした後、不敵な笑みを浮かべ言う
「まあ此方にとっては好都合、存分に狩らせてもらうわ!」
「私の『魔法』でね!!!」
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何者かに狙われているとはつゆ知らず、ただひたすら驚いている一人と一匹。感情の絶叫とも言える沈黙を経た後、一匹が沈黙を破る。
「まさかご主人が『魔法少女』だったとは!只者ではないと思っていたのですが、
まさか『世界の特異点』とすら呼ばれるあの!」
気になったので、もう少し聞いてみるととんでもない事が分かった。どうやら魔法少女という人種は世界でもごく稀な存在らしく、その圧倒的な力に「魔法少女を10人持つ物は世界を持つ事と同義」とすら言われているようだ。しかしグリフォンもあまりの希少性ゆえに知っている情報が少ないらしく、他は物語や伝説じみた話しか聞けなかった。
(、、、、、、、、、、、それにしても腹が減ったな)
「ちょっとお前飯とって来たりできるか?できるだけ人間でも食べられそうなのを。」
「主人の願いならいくらでも」
取って来てくれるようだ
「では言ってまいります。」
「おう」
返事を受け取った後グリフォンは空へと飛んで行った。
「それにして「ドスッ」
(己が暇であることを無意味に叫ぼうとした途中、いきなり後ろからナイフが飛んで来た。それも俺の頭めがけて、
いや、、すでに刺さっている。普通ならここで死ぬだろう、しかし死なない、痛みも少ない)
ナイフを引き抜くと即座に血も引き、傷がたちまち無くなって行く。そして痛みも完全に無くなる。
「『不死 』の効果か」
俺は神のくれた能力に感謝し、後ろを振り向く。するとそこには派手な格好をした少女の姿。しかし音自衛の姿ではないだろう。どちらも派手な格好の少女ではあるが両者は明らかに見た目が違う。そして少女が口を開く
「なんで死んでないの?それがあなたの『魔法』って訳?だとしても即座に傷がふさがるなんておかしいんじゃないの!?どうして!?」
俺が死んでいないことがよっぽど気に入らないらしい、少女の顔が歪み、みるみるうちに不機嫌になる。
(しかし『魔法』? 明らかに神が言っていた『能力』とはニュアンスが違う気がする。)
「『魔法』ってのはなんだ!?『能力』とは違うのか!?」
ダメで元々、相手の精神状態を探る目的も兼ねて聞いてみる。
「はあ!?じゃああんた『能力者』ってわけ!?それじゃあ魔法少女の探知に反応した理由がないじゃない!!、、もしかしてあんた私に「舐めてかかってる」って訳!?もう許せない!!」
(能力者?、魔法少女の探知? 分からない事があまりにも多いが今は話が通じる状態ではないようだ。
なら、受けて立とうじゃないか。幸いにも不死能力があるから死ぬって事は無いだろう。)
「後悔すんなよお前」
「はあ!?」
バトル開始だ
とはいえ少女と俺ではあまりにも距離に差がある、距離にして100メートル程度だろう。ましてやここは森の中、相手の『魔法』とやらがどの程度かはわからないがある程度能力を探る事はできそうだ。
「ああああああああああもうじれったい!!」
そんなことを考えてじりじりと距離を一定に保ち何もしてこない俺に、少女がしびれを切らしたのか何かを投げつけて来た。
知覚できない速度で、何かを。もしかしたら投げる動作の所までだったら見れたかもしれない。しかし今何が投げられたのかを知覚するすべは無い、なぜなら
色すら知覚できない程の圧倒的速度で投げ出して来たから
その「物」は木々をなぎ倒しながら俺へ近づいてくる。どれだけの質量があるのかは全く分からない。いや、この速度なら彼女がたとえ発泡スチロールを投げたって同じ事になるだろう。
ズガアアアアアン、と大きな音を出しながら俺は後方に吹き飛ぶ。が、無事。
どうやら無意識に手でガードしていた様だ。しかし掴んだ物を見てみると、、、、、、、、粉?
あいつは粉を飛ばして来たというのか?
「う、嘘、、、」
え?
「どんな『魔法』を使った!! 10キロはある鉄の塊だぞ!! なぜ掴んだだけでそんなに「粉々」になっているっっ!!」
どうやら鉄の塊を粉々にしてしまったらしい。、、なんとなく分かったぞ、、
俺の『魔法』は、、、、!!
「『超握力』だなッッッッ!! テメエの『魔法』はッッッ!!」
分かれば簡単だ。俺の手札は『不死』と『超握力』相手の能力はおそらく『投げた物を超高速で飛ばす』か?
そうしたらやる事は一つ「相手と距離を縮める」事だ。そして思いつく。森の中、超握力を生かしての移動方法。
そして俺は少しカッコつけて技名を言う。
「縮地」
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一方グリフォンは楽しげに空を泳ぐ
人間の口に合うような果実や肉(もちろんご主人の事を考えて人型ではない獣の肉を選んでいる)を運んで帰って来る。まるで王や貴族が凱旋する時の様な、あまりに誇らしげな表情で帰宅する。
(主従関係を結んでから最初の任務、、失敗するわけにはいかない!)
そう思いつつご主人に褒めてもらえるのでは、といった期待や妄想に耽りつつ己が主人のいる森へと到着する。
しかしそこで見たのは、明らかに先ほどとは違う空気をはらんでいる状況であった。
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(何が起こった、、、、)
少女は困惑する。拘束された今でも一体なぜ負けたのかが理解できずにいた。
間違いなく有利だったはずだ。自分の有利な距離で、自分の有利なフィールド、所持していたアイテムだって万全だったハズだ。
しかし一瞬で状況は変わった。こいつが「縮地」といった瞬間に。
(奴は両手指を木に掛けたと思った次の瞬間に、私のすぐ正面まで来ていた。私も攻撃スピードには自信は持っていたが、奴は明らかに私の速度を凌駕している。超握力、、、木、、、超スピード、、、!)
少女は気付く。しかしそれは10秒遅かった。