気になる
「聞いちゃった」
「聞いちゃった」
「見つかったね」
「見つかっちゃったね」
─────────────────────────────────────
目の前をはしゃぎながら駆け回る少年を見つつ、『リュゼ』と呼ばれた男は口を開く
「…で?まさか本気でゲールのお守りしてた訳じゃねぇだろうな?」
「……………………………………………………」
先ほどまで少年が暴れていても眉一つ動かさなかったツナギの人物は、僅かに顔を上げてリュゼの目を見つめた
透けるような薄紫色の髪から覗く群青色の瞳には感情一つ現れていなかったが、付き合いの長さで感じ取れたリュゼは一度大きく溜息を吐いた
「あー…。お前にとってゲールは『そういう』存在だもんな。怒鳴って悪かった」
「………………………………………」
薄紫色の人物『アディルト・F・デモン』は軽く首を振った
「でもさでもさ!リュゼ兄ちゃんは行って良かったんじゃない?」
「あ゛?何でだよ」
お前のせいでこんな所まで出てくる羽目になったんだぞとイラつきを隠さない目で少年を睨めば、少年は可笑しくてたまらないといった顔でこちらを見ていた
「だってアレってリュゼ兄ちゃんの『大事な大切な人』だもんね!!」
リュゼを正面から見つつ、そう言い放つ白銀と朱色の髪の少年『クロアネンス・B・ゲール』は無邪気な顔できゅふふと独特な笑いをした…
「もう、心配したじゃないかゲール」
「きゅふ、ごめんねスクレ兄ちゃんw
でも僕つよいからあんな弱そうな人たちには負けないって!!!!」
碧瑠璃色の髪の青年『バロン・A・スクレ』は少し眉をひそめながらも、少年が怪我一つ無いことに安堵の息を漏らした
「…壊した建物の修理代の支払いが終わるまでおやつ抜きってアルジルに伝えておくね」
「あああああああああごめんなさいいいいいいい!!!!!」
何かが始まった…と、誰もが思うような異様な雰囲気の中、それでも普段の平和な日常を守ろうとリュゼは固く心に誓った
「う ら ぎ り も の は み つ か っ た し ね」
─────────────────────────────────────
「MINORANZA…」
「報告では過去にADULTOに所属していた者達の集まりみたいね…『全員成人』だってさ」
ADULTORot中央本部では帰還したグランツ達がコンタディーノ地区で出会った不思議な集団の情報を集めていた
「あれ?俺っち知ってる!!そいつらめっちゃいい奴らだってミノラのばっちゃんが言ってたよ?」
「デン!!!不確かな情報で大将を混乱させるのはやめろ!!」
オルデンとファイクが口論になっている中、グランツは一人考え込んでいた
「(あのガスマスクの男…確か『リュゼ』と呼ばれていた
この町で『リュゼ』という名前は一人しか存在しないはず…)…おい、ファング」
「あ?どうしたグランツ?」
ファングはこの中で一番の古株だ
成人しても変わらずこの部隊にいられるのはその経験と気質によるものだろう
「(ファングならもしかしたら何か知っているのかもしれない…)町で出会った集団にガスマスク付けた長らしき男がいたんだが…そいつは他の奴らから『リュゼ』と呼ばれてた」
「っ!!?」
ファングはグランツが名前を告げた途端唐突に立ち上がった
顔面を蒼白にしながらファングは、その震える口で叫んだ
「か、顔に!!顔に傷はあったか!!!!??」
「落ち着け、ガスマスクを付けていたと言っただろう?
顔までは見えなかったが…青紫の髪の男だった」
「信じられない…リュゼだ…
元ADULTO元帥大将・『ジルエット・R・リュゼ』だ!!!」
「俺は守りたいだけなんだ
地位も名誉も何もかもいらない」
「大事な人が無事なら、それでいいんだ」