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続・竜とお姫様  作者: 大玉 由美
3/4

スランプ

今年は砂漠の主の異常発生の年らしい。

「申し訳ありません!!城南部3キロ、サンドワーム3体出ました!!」

「南東のオアシスに大トカゲが近づいています!!」

異常を告げる見張りの兵士から対人部隊の携帯に直接連絡が入る様になった。

場所の近い所に居る隊員から休み無く討伐に向かう。

対モンスター部隊が仕事の出来ない状態の今、

波留国を危機から救うのは対人部隊しか居ないのであった。






「…ただいま」

ノックと共に部屋に入ってきたシズにアリスは顔を向ける。

特殊部隊は城にも自室があるが、城下町にも個別に家を持っている。アリスとシズは結婚はしているが忙しさでまだ家はそのままである。産み月の近いアリスの家に時間を見付けてはシズが顔を出していた。

「お帰りなさい。お疲れ様です」

「うん…指令が出たらまた出なきゃならないけど」

砂だらけでぼろぼろの服や体ではアリスに触れられない。シズはさっさとシャワーを浴びに行く。

アリスは小さく溜息をつく。

自分が出られたら少しは皆の負担も軽くなるだろうに。

歯がゆい。

多分クラッドもセイも、シズ同様働き詰めだろう。兄である兵士長も前線で働いているとメグから聞いた。

ハナは精神的ショックで魔法が使えない状態だと聞く。ハナも心配だが疲労の溜まっている対人部隊も心配だ。

シズがシャワーを浴びて出てきた。最近は城に居る事が殆ど無いので黒の制服ではなく動きやすい普段着だ。

タオルで髪を拭きながらさっぱりした顔のシズがアリスが座っているソファーの隣に腰を降ろす。

「…疲れた」

アリスの前でも滅多に無い珍しく気弱な発言のシズにアリスは少し驚いた。よっぽどの事だ。

「膨大な仕事量ですからね。無理ないですよ」

シズは小さく頷く。

「波留に居る冒険者も兵士達も砂漠のモンスターには太刀打ち出来ないから…今は対モンスター部隊のありがた

たさが本当に身にしみるよ」

「他国に応援要請は?」

「各国とも自国の問題への対処で手一杯だから無理らしい」

「そうですか…」

シズは小さく息を吐く。

「疲れはあるけど僕には君と子供が居るからまだ頑張れる。クラッドにも…心の拠り所の人が居るし」

「そうなんですか?ご自身の事はあまり話されない方だから全然知らなかったですよ」

クラッドに恋人が居るなんて初耳だ。

「心配なのはセイかな…ハナもあの状態だし、最近かなり疲れてる…。また大怪我しなきゃ良いけど」

アリスは頷く。セイが以前大怪我をした事でシズは旅の途中で一旦波留国に戻ったのだ。

「シズさんがしっかり疲労回復してセイ殿をサポートしてあげて下さい」

「そうする…」

シズがアリスに寄りかかる。すぐに横から規則的な寝息が聞こえてきた。

いつもは端正な顔立ちのシズのあどけない寝顔にアリスは心満たされる。

この人といつまでも支え合って生きていたいと強く思う。

アリスも静かに目を閉じた。






「たまらねーな、この敵さんの数の多さは…」

「おう、クラッド。久しぶりじゃねーか。飲むか?」

ぼやきながら酒場に入って来たクラッドに初老の酒場の主人は声を掛ける。

クラッドは首を横に振る。

「止めとく。どうせまたすぐ仕事が入るからな。ちょっと今日は野暮用」

酒場の奥まった場所に目を向け、クラッドは小さく溜息を吐く。

「で?今頃何の用だ?」

クラッドを待っていたのは彼と同年代の冒険者風の女性だった。すらりと背の高い茶髪の女性で動きやすい防具を身に付け、腰には長剣を差している。身のこなしはすっきりとしていて隙がない。

「用件は分かるだろう?クラッド。そろそろ潮時じゃないのかい?」

「……一体何の話しだか」

クラッドは女性の前にどっかりと腰を降ろした。女性は眉をひそめる。

「意見の違いであんたがパーティーを離脱して5年以上。そろそろ飽きて戻ってくるかと思いきや一向に連絡が無いからこうしてアタシが出向いたのさ。聞けば国の特殊部隊に入ってボランティア事業をしてるんだって?」

クラッドは首を横に振る。

「変わってねえなサラ。金稼ぎだけが冒険者の仕事じゃねえだろ。今日俺がお前に会ったのは国の治安に一役買ってくれねえかと淡い期待をかけてたんだがその話なら却下だ。俺はお前等のパーティーに戻る気は全く無い」

サラは目を見開く。

「クラッド。あんたは別れた後1人で臨んだダンジョンで頭でも打っちまったのかい?金にならない仕事はしない主義だったのにさ。瀕死の重体で偶然通りかかった波留国の特殊部隊に救出されたって聞いたけど…あんな10も年下の小娘に今もお熱なのかい?」

意見の違いで慣れ親しんだ冒険者のパーティーから1人離脱したクラッドが半ば自棄になって臨んだ危険なダンジョン。案の定強すぎるモンスターやトラップに瀕死の状態になったクラッドの命を救ったのは丁度任務で遠出をしていた波留国特殊部隊隊員の1人だった。洞窟内の異変に駆けつけた彼女にクラッドは助けられた。

体力の回復を待ってクラッドは特殊部隊へ志願したのだった。

随分遠い昔の話の様でクラッドは小さく息を吐く。

「……まあな。俺なりに彼女を支えてやれたら…と思ってるよ」

サラは口を曲げて立ち上がる。

「あんたが居ればどんなダンジョンも心強かった…。意見の違いで別れたのが今でも歯がゆいよ」

「すまんな。皆にも宜しく伝えてくれ」

クラッドの鉄の意志にサラは息を吐く。これ以上は時間の無駄だ。

「口説くつもりなら本気でやりなよ。あんたが本気で口説けば落ちない女なんて居ないんだからさ。で、その特殊部隊の娘、名前は何て言った?」

「……ハナ=モートン」

クラッドは愛しい者を呼ぶ声で厳かに答えた。






「ハナがいつまでもスランプだからこんな激務なんだよなー…クソー」

その頃セイは砂漠で大トカゲに剣を突き立て大きく溜息を吐いた。

「電話は通じねえしメールの返事もよこさないし…超ムカツク!俺等の苦労を思い知れっつーの!」

ブツブツ文句を言いながらも元気そうだ。初めはハナが心配で部屋まで通ったり頻繁に電話したりしていたがあまりの反応の無さに最近は連絡も途絶えがちであった。

無論、クラッドのハナへの想いなどセイは知る由も無い。

ハナへの心配は既に怒りに変わりつつある。

まだ17歳だから無理もない。デリケートな問題にはまだ免疫が無いのだ。

「どこかに魔法使い…落ちてないかな」

「あ…あの…」

いきなり背後から話し掛けられセイはギョッとしながらも振り返る。立っていたのはどこかで見た事のある顔。

「す…すみません…。何かお手伝い出来ないかと兵士の方に聞いたらセイ様がこちらだと聞いたので…」

小柄で栗色の短髪の若い女性。手には魔法使いの杖。

もじもじとしたその仕草にセイはポンと手を打った。

「あ、もしや元臨時隊員の子?」

「は、はい。マコトと申します。私で出来る事があればと…。怖いですが頑張ります」

「うっそ。マジ助かる!大歓迎!!」

セイは思わず駆け寄りマコトの手を握り締める。マコトはいきなりのセイの行動に頬をパッと赤くする。

「えーと、マコト…だっけ。じゃあ今度の任務で遠距離での援護を頼みたいんだけど良い?」

「はい!」

マコトは大きな声で答えた。

ピピピ…。

セイの携帯が鳴る。

「早速次の任務かよ…じゃあ行こう!」

セイは足取りも軽く馬を待機させている場所にマコトと一緒に走り出した。






セイとマコトが城に戻ったのはすっかり日が暮れた頃だった。

「おーう、お疲れさん。夜間は俺が行くからお前は寝てて良いぜ」

城内に灯った明かりの下、謁見の間の近くのベンチでクラッドがヒラヒラと手を振る。隣には眠りこけているシズ。

「シズさんそうとう疲れてますね…」

一番仕事が早い=一番仕事量が多いのだ。

「今日は家に帰る気力も無いらしい。っと、隣の彼女は何かどこかで見た様な?」

クラッドにマコトは恐縮する。

「は、はい。元対モンスター部隊臨時隊員のマコトと申します。微力ながらお手伝いをさせていただきたく今更ながら参上しました!」

クラッドは大きく頷く。

「ほお、そりゃ良い心がけだ。今は魔法使いが足りなくて困ってた所だからな。歓迎するぜ」

「マコトは冷静になれば意外と良いサポートをしてくれるんだ。臨時隊員に選出されただけあるぜ」

「いえ、そんな…まだまだです」

セイがマコトを誉める。マコトは照れる。

「王にもさっき謁見の間で報告したんだ。一度退任してるから対モンスター部隊としては働けないけど戦力の一部として明日からも一緒に働いてもらうことになった」

「そうか…。それは良いがセイ、嬢ちゃんには最近連絡してないのか?」

「ハナ?良いよハナは。俺が言っても全然反応無いし」

クラッドは首を横に振る。

「嬢ちゃんが辛い時にお前が傍に居てやらなくてどうするんだ?ますます引きこもるぜ?」

咎める様なクラッドの言葉にセイはムッとする。

「じゃあオヤジが励ましてやんなよ。俺はもう諦めた」

クラッドは眉をひそめる。

「……お前嬢ちゃんの事好きなんじゃなかったのか?告ったんだろう?」

手を振り出ていこうとするセイにクラッドは静かに問う。

セイは少し考えて肩を竦める。

「今の引きこもってる暗~いハナは……全然好きじゃないね」

「…そうか」

クラッドは小さく溜息を吐いてセイとマコトを送り出した。

「……若い者は気持ちの移り変わりも早いのかね?シズ」

しばらくしてクラッドがポツリと呟いた。シズはうっすら目を開けてクラッドを見遣る。起きていたらしい。

「セイはまだ17だからな。気持ちも変わりやすいんだろう。ハナの事はお前が支えてやって良いんじゃないか?ずっと彼女を見てきたんだし?」

シズはクラッドの入隊の理由を知る唯一の人物だった。

「……俺だと嬢ちゃんが嫌がる」

「年の差なんて関係無いよ。メグとレイ殿も11歳の年の差だろ?」

現在クラッドは31歳、ハナは20歳。ちなみにシズとアリスは25歳と24歳の1歳違いだ。

「……今更恋愛云々言える年じゃねえよ…俺は嬢ちゃんが幸せになれれば相手は誰でも構わないんだ。俺自身が嬢ちゃんとどうこうとかは考えた事も無い」

「じゃあ今考えたら良いよ」

「うるせえ。お前はもう寝ろ」

クラッドは持っていた毛布をシズに向かって投げつけた。

「俺なんかが釣り合う訳がない事は最初から分かってるんだよ…」

クラッドは何気なく天井を見上げる。

高い場所に備え付けられた窓から欠けた月が2人を照らしていた。






同じ頃、ハナは城の自室から同じ月を眺めていた。

いつまでも閉じこもっている訳にはいかない。対人部隊の負担が日に日に重くなっている事実はハナ自身が良く分かっていた。

しかしハナは出ていくことが出来なかった。

あの日のサンドワームの姿を思い出すだけで耐え難い腹痛と吐き気が襲うからだ。

魔法も相変わらず使えない。

鳴らない携帯を横目にハナは小さく溜息を吐いた。

セイからの連絡は日々少なくなっていた。もう何日も連絡が無い。

「愛想尽かされちゃったかなあ……仕方ないけど」

落ち込んだり身の危険に陥ったハナを助けてくれたセイには恋心の様なものが芽生えていたのだが、それ以上に心の病が重傷でハナは身動きが取れなくなっていたのだ。

「…あれ」

窓から見える月明かりに照らされてセイが歩いていくのが見える。

楽しそうに横で笑っているのは元対モンスター部隊臨時隊員のマコトだ。

「あの子…手伝ってくれてるんだ…。良かった…」

セイも元気そうである。ハナはちょっと元気になってきた。

「…ちょっと部屋を出てみようかな…」

ハナは自室から頑張って廊下に出ていった。



「ん?嬢ちゃん?」

廊下を見回っていたクラッドは廊下にうずくまるハナに気付いて駆け寄る。

「おい!嬢ちゃん!!何やってんだ!気分悪いのか?」

ハナは真っ青な顔でクラッドを見つめる。

「…ごめ…やっぱまだ駄目だった…出れると思ったんだけどなあ…」

「イカン!早く処置出来る場所…」

クラッドはハナを抱き抱えると、取りあえずメグの部屋に駆け込んだ。

産み月が近く城下町の自宅に居るアリスとは別にメグは城の自室に居る。クラッドの声に起きてきたメグは真っ青な顔色のハナに驚く。

「ハナ!!どうしたの!?」

夜中にすまん。あんたにしか頼める奴が思い浮かばなかった」

メグのベッドにハナを寝かせクラッドは頭を掻く。メグは首を横に振る。

「いいえ、感謝しますクラッド殿。こんな状態のハナを放っておくなんて出来ません」

メグは奥から体を休める香やお茶を用意して来た。

「レイ殿の所ででも休めるか?」

メグは身重だ。徹夜をさせるわけにはいかない。

「そうですね…ではクラッド殿、誠に申し訳ありませんがハナが目を覚ますまで付いていて下さいませんか?」

「あ…そうか。そうだな。分かった」

「宜しくお願いします」

メグが出ていった後、クラッドは良い香りのするフリルの部屋の中で所在なげに椅子に腰を降ろしていた。

ハナに冷たくなってしまったセイ。シズの言葉。

「どちらかと言うと恋愛より娘を心配する父親だろう…これは」

ハナは大量の汗をかいてうなされている。

「…汗が引いたら濡れた服で風邪をひくよなあ…」

クラッドは怖々とハナの額や首筋の汗をタオルで拭き摂る。

「服は少し緩めた方が楽に……」

ハナの衣類に手を掛けかけてクラッドは固まる。しかしすぐに頭を振った。

「変に意識し過ぎだ。餓鬼じゃあるまいし……」

香が効いてきたのか、ハナがうっすら目を開ける。クラッドは動揺を押し殺して平静を保つ。

「お…気が付いたか嬢ちゃん。気分はどうだ?」

「…クラッド……?」

ハナはゆるりと部屋に視線を巡らせ首を傾げる。

「此処どこ……クラッドの部屋…?」

「んな訳ねえだろこんなフリルの部屋…メグの部屋だ。嬢ちゃんは安心して朝まで寝てな」

ハナ青白い顔ながらも頷く。

「傍に居てくれる…?」

いつものハナらしくない気弱な発言にクラッドは頷いて椅子に腰掛ける。

「ちゃんといるから。それよりお前最近まともに飯食ってなかったろ。明日起きたら取りあえずなんか食えよ」

ハナは顔を顰めて布団を引っ張り上げる。

「食欲無い…」

「食べねーと元気にならねーぞ。皆心配してるんだ」

「……セイも?」

「ああ」

「嘘だあ。さっき女の子と楽しそうに出ていくの見ちゃったもんね」

「……」

閉口するクラッド。ハナは深呼吸して目を閉じた。

「別に気にしてないけど。それよりゴメンね。忙しい時に迷惑掛けて…」

「別に構わねーよ」

息を吐き出すクラッドにハナの涙腺が緩む。

「優しいね……。あー駄目だ、泣ける…。涙は最後の手段に取っておいたのにな」

少し軽口をたたく元気が出てきたらしい。クラッドは苦笑する。

「何だそりゃ。泣き落とし?」

「うーん。何だろうね。もー…ハナが苦しんでるんだからセイ早く来なさいよって感じ!」

「呼びつけてやろうか?」

ハナは首を横に振る。

「ううん。いい」

「そうか…?」

取り出した携帯を片手にクラッドは頭を掻く。

基本的に沈黙は苦手なのだ。

「んー…じゃあシズと話でもするか?今任務から帰ってるはずだし」

「別に良いって…疲れてるの知ってるし…」

「そ、そうか…」

会話が途切れてクラッドは小さく息を吐く。

ハナを元気づける気の利いた一言すら浮かんで来ない。

途方に暮れているクラッドにハナは小さく微笑む。

「ありがとうね、クラッド…。傍に居てくれて」

「セイじゃなくて悪いな。こんなおっさんで」

「言うほどおっさんじゃないじゃん。正直今はセイとは会いたくないかも…」

「でも嬢ちゃんはセイの事がその…好きなんだろ?」

ハナは眉をひそめる。

「良く分からない。ずっとシズ様しか見てなかったから。告白されてちょっと意識して、優しくされて嬉しかったけど……今はセイの事を考える余裕は……無いな」

ハナの率直な言葉にクラッドも頷く。

「そうだな。まずはいつもの嬢ちゃんに戻ってもらわないとな」

「そだね…。対人部隊に迷惑は掛けられないね」

「別に良いんだぜ。対人部隊の仕事は治安が良くなってるから大分減ってるんだ。…まあ、この混乱に便乗しての犯罪は水面下に増えつつあるがな…モンスターの大量発生の原因も今調査中だ」

ピピピ…。

クラッドの携帯が鳴る。

「ち…そういや夜の任務は俺が引き受けてたんだっけ……」

「良いよ行って。私は大丈夫だから」

「すまんな。また来る」

クラッドは立ち上がりハナに向き合う。

「早く元気ないつもの嬢ちゃんに戻れよ?」

頷くハナに小さく微笑み、クラッドは慌ただしく出て行った。ハナは布団を引っ張り上げる。

「……あのクラッドが格好良く見える日が来るなんて相当弱ってる証拠だ……」






定期的に謁見の間で行われる臨時の会議に出席するのはもっぱらアリスとハナを除いた特殊部隊4人と兵士長、3人の小隊長になっていた。会議の内容は対人部隊がいかに効率良く、疲労を蓄積しないように増え続ける砂漠のモンスターに対処していくかが話し合われる。始めにメグが切り出した。

「対人部隊の方々、兵士の方々、いつもお勤めご苦労様です。前回対人部隊の任務を偏らせない様に順番制として連絡を行った事に関して対人部隊の方々はどうでしょうか」

「任務が立て続けにならなくなったのは良かったけど遠くまで出る事もあったからやっぱり居場所の近い隊員を優先的に向かわせてもらいたいかも」

波留国の隅から隅へ馬を走らせる事もあったとセイがぼやく。

「敵さんの数が多い時はやっぱ隊員が2人はほしい」

サンドワーム3体を同時に相手をせざるを得なかったクラッドが肩を竦める。

「夜は当直制とした方が良さそうだ。いつ呼ばれるかと思うと安心して眠れない」

夜間に何度も叩き起こされたシズが呟く。

「分かった。順番制は原則として距離が遠い場合は近い隊員に依頼する事、数が多い場合は隊員2名での任務も行う事、夜間は当直制とする事。他には無いか?」

兵士長が対人部隊の3人に目を向ける。

「…ハナはまだくさってるんですか?」

ムスッとした表情でセイが問う。レイは困った様にメグと顔を見合わせる。

「ハナはまだ本調子では無いらしい。済まないが……」

無言ですっくと立ち上がって出て行こうとするセイの腕をクラッドが掴んで止める。

「どこに行く気だセイ?」

セイはクラッドを睨み付ける。

「ハナんとこ。離せよオヤジ」

「…今のお前は行かせられねえな」

「んだと…?」

「止めろ2人共!」

シズの大声に2人はビクッと身を縮こませる。

「クラッド、セイの腕を離せ。セイ、ハナに会っても良いが言動に気を付けろ。…相手は女の子なんだから」

シズの凛とした声にセイはスッと怒りが静まるのを感じた。

「分かってます。…行ってきます」

セイは謁見の間を退室して行った。

うなだれて立ち尽くすクラッドにシズは目を向ける。

「見守るだけが優しさじゃないと…僕は思うけどね」

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