あなたに捧ぐひまわりの花
アルファポリスにもあります。前作もあります。つたないです。前作を読まなくても楽しめます。是非是非読んでください。
「受け取ってください」
そういい、俺はいとしの貴方へひまわりを捧ぐ。
ここは、メラーナ王国。剣と魔法にあふれたこの世界で、出会った頃から変わらずに可愛らしく、凛々しい愛しのあなたに俺は出会った。初めて出会った時のことをいまでも、鮮明に覚えている。
ーーいまから、五年前。
おれの名前はサン・フローラ。
いまから、おれの愛しの君に会ってそれからどうなったのかについて話そうと思う。
愛しの君、フィル・サーシャが、13歳。俺が14歳の時のことだった。
ある日、父上からこんな噂を聞いた。
「最近、ある美しい少女が、一般兵に、負けず劣らず、剣と魔法を振るっているらしい。お前の一つしただが、騎士団の、第二分隊の隊長に勝つほどだそうだ、それがほんとうならお前でも、相手になるかどうか怪しいところだろう」
俺はこの言葉を聞いて、正直はらがたった。それも、仕方のないことだろう。当時通っていた王立学院の中でまだ一年生なのにもかかわらず、剣も、魔法も、勉学でさえ、右に出るものはいないと、言われたほどの実力だったのだ。すこしは、天狗になるのも無理はなかったと思う。そんな、おれが一つ下のしかも、美しい少女に負けるはずがない、そう過信していた。いま、思うと恥ずかしい、騎士団は、エリート軍団で下っ端の一般兵とその当時のおれがやっても、50%勝てるかどうか怪しいところだった、なのに、第二分隊、つまり騎士団の副隊長に勝った、その話を聞くとどれほどすごいのか分かるだろう。あとから、知った話だが、騎士団は、第一分隊は貴族が多く実質の一位は副隊長だったそうだ。そして、おれは愛しのフィルに会ったんだ。
王主催の花見、着飾った貴族たちが、うわべだけの笑みを浮かべ話している中、一際可愛らしい少女がいると魅入っていたら、その子の父親がおれの父親に話しかけて来た。
「こんにちは,ポール・フローラ殿。
こちらが,私の一人娘です。
ほら,ご挨拶を。」
ダンディな方だと素直に思った。そのうしろから
「はじめまして,フィル・サーシャと申します。」
と,ちょんとドレスを持ち上げ頭を下げた妖精と見間違うほぢ可愛らしい少女、完璧な礼儀作法で少女の品の良さに磨きがかかっていた。その子のドレスは白と淡い青を基調とした清楚で愛らしいものでとてもよくにあっていた。
おれの父が挨拶を返す。
「…お久しぶりです。ボブ・サーシャ様。
こちらがうわさの……。」
口ごもってしまったおれの父に,フィル嬢の父が笑みを浮かべつつ
「なんですかな?」
質問する。
噂は本当なのか?こんなにかわいらしいご令嬢がおれより強いなどウソなのではないか?
そんなことばかりが頭の中を駆け巡り、しぜんと口を開いていた。
「もうすでに,一般の騎士より強いご令嬢とお聞きしました。
……思っていたより,きしゃでいらっしゃる。
うわさは,本当なのですか?」
フィル嬢は皮肉とうけっとったのか,完璧な笑みを浮かべ
「えぇ,ほんとうですわよ。
それにしても,おかしなことをおっしゃる方ね。
魔法で強化すれば,見た目なんて関係ないでしょう。」
笑みにやられてしまったおれは、顔が赤くなるのを自覚しながら
「あなたが心配なのですよ。
こんな可憐な方が……
その,戦いに参加するなんて。」
フィル嬢を心配する言葉を投げかける。だが,フィル嬢はまたしても皮肉と受け取ったらしい。
「私はサーシャ一族の跡取り,魔物あふれる辺境を治め,さらには騎士としてこの国をまもるのですよ。
可憐とはほど遠いのです。
その証拠に今なら魔法を使わなくても,あなたには勝てると思いますわ。」
ていねいな言葉使いだが、敵意を剥き出しにした喋り方だった、そこも、子どもっぽくかわいらしいと感じてしまう。
フィル嬢の父は困ったような顔をしている。だが,フィルはとまらない。
「そうですわ。
決闘をいたしましょう。そしたら,どちらが強いか…可憐とはほど遠いのかわかりますわよ。」
フィル嬢の父はさすがに婚約者がいなくなるようなことはあまりしてほしくないようで
「フィル。
婚約者が…。」
止めようとするが,
「大丈夫ですわ,お父様。
結婚はしますから。世界で一番強い方を探してきますから。」
言い切ってしまう。
そうか、世界で一番強くなればフィル嬢と結婚できるのか!
「いや……,探してきても婿になってくれるかわからないし。」
「わかってますわ。
お嫁にはいきませんから。」
フィル嬢と、結婚ということで頭が埋まりほかのことが考えられなくなっていた。
「…もらってくれる人なんているのかな?」
とフィル嬢の父がぼやいていたのが遠くにきこえたような‥。気のせいか。
「では,決闘をおこなうぞ~ぃ。
今すぐって訳にもいかんからの~。
3日後くらいかの~。」
「「「「えっ。」」」」
それは…
「陛下,突然あらわれないでください。
心臓に悪いです。」
そう,陛下だった。挨拶で疲れた陛下がふらふらしていると,なにやらおもしろそうなことになっている。そうして,おれたちを発見したのだった。
「いや~,悪い悪い。
なんかおもしろそうなことになっているじゃないか。
わしもまぜてくれんかのぅ~。」
このときフィル嬢以外のおれたちの意見はぴったりあった
<ぜってー,悪いと思ってない。というか,なんか話をややこしくしようとしている。>
と,ちなみにフィルは試合に思いをはせていた。
試合までの三日間、俺は眠れない日々を過ごしていた。いつも通りの、生活なのだがフィル嬢のことを思うと寝付けず、武闘大会の前の日に父に失神させられようやく休養?をとることができた。
そして、本番当日‥‥
王様の思いつきにより,武闘大会が開かれるとあって急な催しなのに、人がごった返していた。
大会はトーナメント形式で行われ,魔法は禁止,八百長などの行為も禁止の純粋な武力だけの戦いとなった。
フィル嬢は木刀で相手を瞬殺し,おれは剣で相手を瞬殺していた。
とうとう,決勝となった。
「試合開始!」
審判のかけ声とともに二人は動き出す。まずはフィル嬢が打ち込みにきた!早く重い打ち込みにおれは押されるだが木刀におれの剣がくいこみぬけない。おれもフィル嬢も焦ったが相手が武器を離す気配を感じ、同時に武器を放りだす。肉弾戦へと切り替えた。だが,肉弾戦となったとたん,フィルの動きがみえなくなった。次の瞬間おれは空中に投げ出されていた。強く殴られたのだと,ようやくわかったときにはおれの負けが決まっていた。嘘だろっ。あんな、細い腕で骨が折れたんじゃないかっていうくらいの威力を出すなんて‥。
「これでわかったでしょう。
私が可憐とはほど遠いことが。」
一本に結い上げたフィル嬢の黒髪がなびく。おれは素直にフィル嬢がカッコいいと思った、今まで憧れてきた父なんてはるかにこすぐらいに
「まぁ,武器はまだあったのだけどね。」
と暗記を片手に取り出すフィル嬢。
おれは己の未熟さを理解し,フィルを守れるような騎士になることを天に誓った。
ちなみにフィル嬢の父は,王様が急に開いた武闘大会のために飛び回り終わった頃には幽霊のようになっていたそうだ。<サーシャ家メイド談>
* * *
それから五年の月日が流れた、早いかと思うだろうがそんなことはなかった。
もともと強かったフィル嬢は、努力を重ね続けていった、可愛らしかった彼女は神々しく美しい少女へと成長し、一年前には騎士団長に任命された。
最近はよく、ナンパされているが、彼女の鈍感さが発揮されているようで‥、
「だんちょーっ!一緒に飯いきませんか?ふたりっきりで?」
「ん?そうだな、(みんなで飲みに行くか。)朝まで。」
「やったーー」
で、おれや、隊のみんなで飲んだりした。あのあと、彼女を誘ったやつをけちょんけちょんにしてやったのはいうまでもない。おれは、かりにも副団長だからな、手加減はしたが、まぁ、私怨のかたまりだった気がする。もうそろそろ、おれも覚悟を決めなくてはならないと思っているのだが、どうプロポーズするべきだろうか?そうだっ、親友のエルに意見を聞けばいいのか。親友のエルとは、先代の騎士団長の息子で、おれの二つ年上の魔導師長だ。たよりになり、もう結婚していて、愛妻家のイケメンさんだっ。蜂蜜色のサラサラヘア、王子さまと名高く、魔導師長のくせに、フィル嬢とおれの次に剣術が強い。いや、もしかしたら、フィル嬢よりも強いかもしれないそんな男だ。さっそくあいつの元へ、とおもって執務室から出ると
「やぁ、サン。お悩み相談屋のお兄さんだよ?なんでも相談してくれていいよ?」
と、エルが待っていた。相変わらずすごいやつだ。
「ははっ、もうそろそろ相談に来るかな?っておもってきてみたんだか、あたっていたみたいだね。」
「あぁ、プロポーズの仕方について聞きたいとおもって。」
「はははっ、もうプロポーズか、一つ二つ過程を飛ばしているような気がするんだけど、まぁ、きみらしいね。うん。そうだなぁ、僕のプロポーズをした時の話をしてあげる。」
といって、長々と惚気を込めたエルの話が始まった。長すぎたので、あとではなしを別に書くとして、「というわけで、ぼくも、彼女、つまり奥さんに嫌われていたんだよね。とっても、胡散臭いって彼女があまりにもたくさん言うから少し傷ついたんだけど、ぼくも心当たりがありすぎたからね。甘んじて受け入れたさ。だけどね、恥ずかしがり屋のぼくだけど、彼女への愛の言葉だけは、素直に何度も何度も言ったんだ。言葉っていうのは、しゃべるだけじゃないからね。いろいろ考えてみるといいと思う。んーん?あっ、そうそう彼女にプロポーズを、‥‥‥。」
つまり、素直に当たって砕けろで、伝え方に工夫をすればいいということだな。そう学んだおれは、言葉に関する書物をたくさん、たくさん読んだ。"たよりになる漢の口説き方"、"家庭円満の言葉"、"うまく子供とコミュニケーション取れない方必見 言葉の使い方、伝え方講座"、"花言葉"など。最後に、花言葉の本を読んだときこれだっとおもった。全ての項目に当てはまった完璧な伝え方それは、花を送ることだ。ただ単に花を送るわけではなく意味のある大切な花を。
「あなただけを見つめるかぁ~、うん、いんじゃないかな?きみらしくて。」
と、エルに及第点をもらった。よし、ここは、漢らしくいくぞっ。
ドクッドクッと、心臓が大きな音を立てる。ここまで大きいのは、初めてだ。死にそうな訓練の時もこんなに、大きな音を立てたことはなかったのに、柄にもなく緊張しているらしい。
「団長。ひまわりの花言葉ってなにかしっていますか?」
彼女は自信を持って答える。
「もちろんだ。<あなただけを見つめる>だ…ろう。」
だが,途中から声が小さくなり,そして目を見開いた。ようやく気づいてくれたのかっ。おれの気持ちが伝わってきたらしい。
「そうです。私はあなたを危険から遠ざけ,安全な所で過ごしてほしいかったから騎士になったのです。
ですが,楽しそうに戦っているあなたを見ていたらそれは間違いだったと思うようになりました。
あなたから楽しみを奪い去るより,影からあなたを守りぬく。それが私のすべきことだと。」
「そんな…。私は勘違いをしていたのか。」
そう小さくつぶやき,顔を赤くした。そんな姿も、愛おしく、可愛らしく感じる。素直に、素直に気持ちを伝えようっ。
「そうかもしれませんね。でも,そんなあなたも大好きなのです。
だから,あなたの背中を一生預けてくれませんか?」
ずっとみてきたおれだから言える。彼女は女であるということを、卑屈に感じず、性別なんて関係なしに人一倍努力してきた。誰よりも早くおき、トレーニングして男女の差を感じさせなかった。その強さを持っている。その強さに惹かれていった。
「こ…こんな,私…私でいいのなら。」
彼女はつっかえながらも,返事を言葉にしてくれ、ひまわりを受け取ってくれる。
「こんなではなく。
そんなあなただから大好きなのです。
俺と結婚してくれますか?」
彼女は、柔らかな笑顔を浮かべて
「はい。」
力一杯うなずいた。
それから、おれたちは幸せに暮らした。どんな困難があってもおれと彼女なら、なんとかなった。まぁ。なんど、なげとばされたかわかんないけどな。
気づけば幸せはそこにあるのかもしれない。
おわり
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