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6.魔導ギルドレニス支部

今週末までは毎日投稿しようと思います。

 翌日は、午前中に魔導ギルドへ行くことにする。

 案内はもちろんレオナルフさんだ。


 魔導ギルドレニス支部は、学校の校舎程ある大きさで、冒険者ギルドに比べると小規模だ。


「冒険者ギルドと比べるとずいぶん小さな建物ですね」

「それは規模が全然違うから仕方ないよ。魔導ギルドは魔法使いしか登録できないし、登録できても冒険者ギルドへ行く人が多いよ」


 どうやら、魔物を倒せるほど攻撃魔法が使えるなら冒険者の方が稼げるので、冒険者ギルドへ行ってしまうそうだ。

 そんな話を聞きつつ、魔導ギルドの応接室へ案内される。


「ようこそ異世界人セト殿。あたしは魔導ギルドのレニス支部長レニータだ」


 そう挨拶して下さったのは、金髪で琥珀色の目をもつ上品な年配女性だ。


「始めまして、異世界人のセトです。本日はお時間を頂きありがとうございます」

「まあ椅子に座ってくれ。お茶でも飲みながら話をしよう」


 レニータ支部長に勧められて席に座ると、受付嬢が紅茶を入れてくれる。

 この世界に来て初めて紅茶を見たが、素晴らしいことに西洋の文化も伝わって来ているらしい。


「まずは、魔導ギルドについて話をしようか」


 紅茶に気を取られていると、レニータ支部長の話が始まる。


「魔導ギルドには、魔導具製造部門・斡旋部門・研究部門があり、魔法使いを総合的にサポートするのが魔導ギルドという事になるな」


 色々と説明を受けたが、まとめると次の様な組織だ。


  ・魔導具製造部門は魔導具の製造に加えて、武器や道具に魔法付与する術者の斡旋を行っている。

  ・斡旋部門は、魔法使いの斡旋に加え、困りごとの相談や、冒険者ギルドと共同で魔物討伐といった仕事の斡旋も多い。

  ・研究部門では、新たな魔法や魔導具の発明に加え、既存魔法の新しい応用、魔法・魔導具の歴史編纂も行っている。

  ・異世界人の義務として、2年以上所属するか、研究部門で1つ以上の成果を出す必要がある。


 冒険者ギルドの魔法使い版といった所だけど、荒事の成分はかなり控えめだ。


◇◇◇


 魔法ギルドについて一通り説明を受けたので、次は暗黒魔法について聞いてよう。


「話は変わりますが、私は転生特典ギフトとしてステータスと暗黒魔法を授かりました。暗黒魔法について、差支えの無い範囲で教えて頂けないでしょうか」


 すると、少しガッカリした様な、それでいて憐れむような顔色で答えてくれる。


「暗黒魔法か。これまでの記録では、人族の使い手は最大でもLv3までだな。Lv3の習得条件が『五感それぞれについて、感覚がマヒするほどの刺激を受けること10回』なので、覚えようとするものは皆無のマゾ魔法だ。セトは気を落とさず、他の魔法を覚えるといい」


 やはり、暗黒魔法=マゾの認識らしい。

 ということは、自力で暗黒魔法Lv7まで覚えた魔王は、世界最大のマゾということか!

 それはさておき、どんな魔法が人気なのだろうか、聞いてみよう。


「他の魔法とおっしゃいましたが、異世界人の使う人気の魔法というと、何があるでしょうか?」

「異世界人が使う需要の大きい魔法は、空間魔法と神聖魔法だな。特に空間魔法Lv5の【アイテムボックス】は多くの異世界人が使えて需要も大きい。他にも空間魔法Lv9の【ワープゲート】、神聖魔法Lv7の【完全回復】、神聖魔法Lv8の【寿命再生】の需要は絶大で、これらが使えれば一生仕事には困らんな」


 人気魔法の詳細について聞いたところ、次の様な効果だと答えてもらえた。


  ・【神聖魔法】Lv7 【完全回復】     あらゆる怪我と体部欠損を回復する。病気は治せない。

  ・【神聖魔法】Lv8 【寿命再生】     いわゆる若返りの魔法。条約により一生のうち一度のみ受けられる。

  ・【空間魔法】Lv5 【アイテムボックス】 幌馬車10~20台程度の容量を誇る格納庫。出し入れに魔力が必要。

  ・【空間魔法】Lv9 【ワープゲート】   一瞬で長距離移動できる門を作り出す。


 やっぱり、【アイテムボックス】の魔法は便利だし人気あるよね。

 高Lvの【ステータス】と【アイテムボックス】を組み合わせれば、商人で成り上がる事もできそうだ。

 その他の3つの魔法については、一生仕事に困らないのは良いけど、どう見ても過密スケジュールで多忙な人生が待っている。


「参考になりました、ありがとうございます。私としては授かった暗黒魔法を平和的に活用して暮らしていければ一番と思います」

「それもそうだな。君の暗黒魔法Lvは知らないが、暗黒魔法使いにしかできない事もあるだろうな」


 それからしばらく談話した後、丁重にお礼を言って魔導ギルドを後にした。


 それにしても、レニータ支部長は気品にあふれていて、英国貴族の淑女みたいだったよ。

 それと、これだけは言っておきたい、私はマゾじゃない!


◇◇◇


「レオナルフさん、ショートソードを買いたいので武器屋へ案内してもらえませんか?」


 魔導ギルドから出た後、レオナルフさんへお願いしてみる。


「立派なショートソードを腰に下げているみたいだけど、それより良い品はなかなか手に入らないよ? 冒険者になるにしても、それだけの武器があれば十分だよ」


 レオナルフさんの疑問に、声を潜めて答える。


「たしかにその通りですが、練習するには性能が良すぎます」

「ああ、そのショートソードは神様からの贈り物ということか。確かに練習用の剣が欲しい所だね」


 なかなか空気の読めるレオナルフさんだ。

 レオナルフさんに武器屋へ案内してもらう。


「すみません、これと似た使い勝手のショートソードはありませんか?」


 そう言いつつ、久遠のショートソードを見せると、店主が慌て始める。


「こ、これは……! お前さん、こいつをどこで手に入れた? いや、こいつを売ってくれ! 金ならいくらでも出すから売ってくれ!」

「い、いやこれは譲れません……」

「そこにあるショートソード全部やるから譲ってくれ!」


 店主がしつこく食い下がってくる。


「店主、その剣は店主の思っている通りのモノだけど、この人は訳アリだよ。しつこいとレニス伯爵やプロイタール王国を敵に回すよ?」


 レオナルフさんのナイスアシストで、店主は我に返ったようだ。

 正規の騎士が護衛している事に今更ながら気づき、店主の顔色が悪くなっているが、気にしないでおこう。


 その後、レオナルフさんにショートソードを選んでもらい、それを購入する。

 比較的安い剣だったけど、大銀貨1枚もしたよ。


 さて、無事に練習用の武器を買えたし、アマツ屋へ戻ることにしよう。


◇◇◇


 今日で最後のアマツ屋だが、寝る前に1つの魔法を確認しておきたい。

 魔導ギルドで話を聞いていた時に、どうしても気になった魔法だ。


【暗黒空間】

  【消費魔力】 10

  ・【暗黒空間】の魔法を覚えた時点で、自身の体内に暗黒空間が作られる。

  ・対象を暗黒空間内に取り込む、または取り出すことができる。

  ・暗黒空間内へ取り込まれた者は、全ての感覚が失われ、その身は朽ちることが無く、孤独により精神が苛まれ続ける。

  ・暗黒空間内へ取り込まれた者へ、感覚の一部開放や語り掛け等の、任意の操作を行える。


 これは、悪の魔法使いがお姫様を暗黒空間に取り込んで、「私と結婚するなら、そこから出してやる」と強要するための魔法だね。

 また、聖人や聖女を悪の道に引きずり込む目的にも使われそうだ。

 こうして見ると、擁護もできないほど冒涜的で、非人道的な魔法だと思う。


 だがちょっと待ってほしい。

 これまでの事を思い返すと、この冒涜的かつ非人道的な魔法に、大きな可能性を感じる。


 ――【暗黒空間】


 転生神ネフリィ様から頂いた携帯食料1つを暗黒空間に取り込んでみる。

 消費魔力は10と、低燃費だ。


 ――【暗黒空間】


 取り込んだ携帯食料を暗黒空間から取り出してみる。

 問題なく取り出すことができ、消費魔力も10だ。

 うん、携帯食料は生物じゃないから、精神を苛まれるとかありえないよね。


 ――【暗黒空間】


 荷物の入った背負い袋とショートソード2本を暗黒空間に取り込む。

 合わせて30の魔力を消費し、結果は身軽になれた!


 ……この【暗黒空間】は、どう見ても【アイテムボックス】だよね。

 【ステータス】の説明文を書いた人|(神様?)は、きっと邪悪な方々の事しか考えていなかったと思う。


 さらに、暗黒空間内を覗き見たり、暗黒空間内の物体の時間を止めたり進めたり、直接いじったりもできる。

 邪悪な方々は、孤独で精神の病んだ人に干渉して、悪の道に引き込むために、この機能を使うのだろう。

 しかし、本当に良くできたアイテムボックスだ。


 生物を格納するには少々難ありだけど、便利なアイテムボックスとして活用していこう。

 もしかしたら、生物も気絶させて格納すれば、精神が病むことが無いかもしれない。


 最初は絶望しかけたけど、【暗黒魔法】はなかなか良い転生特典ギフトだと思う。

 転生神ネフリィ様、本当にありがとうございました。


 結局、アイテムボックスを使える様になりました。

 2017/1/10 誤字や分かりにくい箇所を直しました。


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