49.ハゼルの頼み事
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本日も1話のみの投稿となります。
地震が発生からおよそ3か月が経ち、王都プロイデンの復興も一段落してきた。
気温もだいぶ暖かくなり、少し汗ばむ事もある程だ。
そんな中、私とシェリスは、シャピナ共和国へ行くことにした。
今回の地震について、真の評議会が関係していないか、確認するためだ。
彼らは心を入れ替えている筈だし、彼らに地震を起こすほどの能力は無いので、今回は無関係だと思う。
とはいえ、あれだけの事をしでかしたので、念のため確認して来いと宰相のローレン様から言われているのだ。
「レニアさん、シャピナ共和国へ行こうと思うのですが、ついて来ますか?」
「ハゼル様の所へ行かれるのですか? それでしたら、ぜひお供させて下さい!」
家臣のレニアさんに付いて来るか聞いたところ、少し嬉しそうに答えて来た。
やはり、レニアさんもたまには帰郷したいらしい。
ということで、アルフさんとシュリさんには、守護霊の2人とともに留守をお願いする事にした。
シュリさんは風魔法で私達と連絡が取れるので、何かあった時のために残ってもらえると安心だ。
また、守護霊の2人は城のメイド達から大人気なので、連れて行こうとしたらメイド長から大反対された。
2日ほどで準備をして、ハゼルさんの所へ出発する事にした。
今回は緊急事態ではないので、正式な手続きを経てシャピナ共和国に入国する事にしている。
トリス市から北へ馬車で1日程進んだ所へ、国境の町がある。
そこで入出国の手続きを行ってから、ハゼルさんの家がある都市まで転移門で移動する事にした。
国境の町まではシェリスに転移門を出してもらい、そこから先は私の転移門で移動したので、出発して2時間も経たないうちにハゼルさんの家の前までたどり着く事ができた。
「相変わらず、セト様達の魔法は凄いですね。こんな人のいる国と戦争するなんて、愚かな事をしていました。どうせなら、助けを求めた方が良かったでしょうに」
「理由はどうあれ、戦争は勘弁ですね。困っているなら素直にそう言ってもらえる方が助かりますよ」
戦争の事はもう忘れよう。
それよりも、ハゼルさんに会って話を聞かないといけない。
ハゼルさんの家に行くと、応接室へ案内された。
あらかじめ連絡をしてあったので、ハゼルさんが不在という事も無く、すぐに会う事ができた。
「セト達よ、よく来たな。レニアも元気そうで何よりだ」
ハゼルさんは、柔らかい笑顔で私達を迎えてくれる。
こうして見ると人の良いお爺さんだが、これでも国を支配する4人のうちの1人なのだから油断できない。
「ハゼルさん、早速ですが本題に入らせて頂いても良いでしょうか」
「ああ、私に聞きたいことがあるという事だが、何かな?」
「3か月ほど前にプロイタール王国で発生した地震ですが、この国の関与が疑われています。その真偽のほどを確認しに来ました」
私がそう伝えると、ハゼルさんは一瞬だけ嫌そうな顔をし、真剣な顔つきに変わった。
濡れ衣を着せられるのは、気持ちの良い物ではないだろう。
しかし、今まで行ってきた事のツケだと思って受け入れてもらうしかない。
「もちろん、我々シャピナ共和国は何も関与しておらん。そもそも、そういった事ができる者はこの国におらん。しかし、この程度の答えでは納得してもらえんのだろう?」
ローレン様からは、どのような魔法を使っても良いので、真相を聞き出せと言われている。
だが、どうもその必要は無さそうだ。
「いえ、今のお言葉で十分です。ハゼルさんが思っているより、今の言葉は重いですから」
実は、ハゼルさんと話し始める前に、とある魔法を掛けておいた。
ハゼルさんの座っている椅子に対して『嘘や不誠実な言葉を発する』と発動するように、激痛付与を掛けておいたのだ。
もし、ハゼルさんが嘘をつたなら、今頃は激痛に襲われて話をする所ではない筈だ。
ハゼルさんは諜報組織のトップなので、知らなかったと言う事も無いだろう。
正直に話してもらえたので、これで王家からの依頼は完了だ。
◇◇◇
ここからは個人的に気になる話を聞くことにした。
もちろん、ハゼルさんの椅子に掛けている魔法は解除だ。
「ところで、真の評議会の方々は今何をされているのですか?」
真の評議会の4人は、誰もが特別な力を持っているので、何をしているのかがとても気になる。
大丈夫だとは思うが、また何かを画策していないかと心配になって来るのだ。
「そうだな、特に秘密にしている訳では無いから話しておこうか」
ハゼルさんの話では、4人とも人道的に力を発揮しているらしい。
ハゼルさん自身は、その諜報能力を生かして犯罪調査組織を立ち上げたそうだ。
また、その調査能力は犯罪調査に留まらず、様々な情報収集に役立てているらしい。
私が以前に話をしたジャガイモについても、シャピナ共和国の寒冷な土地に適した品種を見つけたという話だ。
日本に居た頃から情報の重要性は認識できているので、その情報網がとても羨ましい。
私の所にはレニアさんしか居ないので、どうしても集められる情報に限界があるのだ。
ジャノンさんは、瘴気の研究成果を応用して瘴気浄化石を開発したそうだ。
持っているだけで付近の瘴気を吸収するので、魔物の森や迷宮に点在する瘴気スポットへ立ち入れる様になったらしい。
ただ、瘴気を吸収しきると瘴気を放出し始めるので、その処分方法について研究中との事だ。
この事業が上手く行くと、シャピナ共和国の特産品になるだろう。
冒険者達の安全のためにも、いち早く実用化して欲しいと思う。
シノさんは、シャピナ共和国の軍隊を再編成して、対魔物の部隊を作り出したそうだ。
冒険者とは違い、集団戦を得意とするので、強力な魔物や大量の魔物が発生しても、ある程度は対処出来る様になったらしい。
また、対魔物用の兵器もいくつか開発しており、より安全な狩りが行える用になったとの事だ。
そういった兵器は冒険者にも払い下げられるため、冒険者の成果も上昇傾向との話だ。
最後のハノイさんだが、魔物使いの能力を使って危険な魔物を討伐して回っているそうだ。
しかし、老齢な事もあり、なかなか成果を出せていないらしい。
さらに、魔物使いの能力はハノイさん固有の能力であり、他の誰かに教える事も引き継ぐことも出来ないそうなのだ。
ハノイさんの【ステータス】を確認した時、は魔物使いの能力が記載されていなかったので、この世界から【能力】として扱われていないと思われる。
「私達4人の近況は、ざっとこういった感じだな」
どうやら、4人とも上手くやっている様だ。
ハノイさん以外は、後継者も育ちつつあるらしく、将来性もありそうだ。
戦争の賠償と引き換えに、何人かプロイタール王国へ招いて技術を教えてもらうのも良いかもしれない。
「懸念はハノイさんですか」
ハゼルさんは、ハノイさんの話をするときだけ、少し声のトーンが落ち込んでいた。
この老獪な爺様も、ハノイさんの事は相当気になっている様だ。
まあ、つきあいの長い仲間だろうから、当然と言えば当然か。
「ああ。ハノイの奴、最近どうも思い詰めている様なのだ。後継者を作れない事が、ずっと気になっている様だったな」
……。
……。
ハゼルさんの言葉に、皆沈黙してしまう。
「なあセトよ。ハノイの能力を他人に引き継がせてやる事はできないのか?」
ハゼルさんの言葉を聞き、シェリスの方を振り向く。
するとシェリスは顔を横に振った。
『やっぱり、ダメなんだ』
『ええ、そうよ。この世界から【能力】として認められていないなら、教える事も譲る事もできないわ』
『どうすれば、この世界に【能力】として認めさせられる事ができるか、知っている?』
『それは、創造神エリクト様だけがご存じよ。エリクト様も、よほど偶然に恵まれないと新たな【能力】は作れないとおっしゃっていたわ』
それは残念だ。
だが、逆にこの世界から【能力】として認められていれば、自分の意志で【能力】を譲渡できるらしい。
私の【暗黒魔法】Lv10も、誰かに譲る事が出来るのか。
おっと、それよりも今はハゼルさんの質問を答えなければ。
「ハゼルさん、残念ながら私にはハノイさんの能力を引き継がせる事はできそうにありません」
「できそうな者に心当たりはあるか?」
「そちらについても、創造神エリクト様であればもしや、という程度しか……」
「ううむ。創造神エリクト様となると、お頼みするにしても交信する方法がないな……」
シェリスや創造神エリクト様といった一部の神様には、どんなに高位の神官でも交信できないらしいのだ。
しかし、おそらく私やシェリスなら創造神エリクト様と交信できるだろう。
ただ、それは秘密にしておいた方が良さそうだ。
そんな事が知れ渡ってしまうと、私達の身が危険だ。
「セトよ、ハノイの能力譲渡については置いておいて、悩みを聞くだけでも聞いてやってはくれんか」
ここまで来て、なかなか断りづらい雰囲気だ。
あまり手出しをすると内政干渉になるが、ここでハノイさんが脱落すると少し困る。
プロイタール王国に手出しをしてこない様に、ハノイさんにはしばらく国政の手綱を握っていてもらう必要がある。
「わかりました。この後、ハノイさんの家に行ってみます」
その後、少し世間話をしてからハゼルさんの館を出た。
レニアさんは、ハゼルさんの家に数日留まる事になった。
久しぶりにハゼルさんと会っただろうから、話したいことも沢山あるだろう。
そしてハノイさんの屋敷に行き、面会を申し込む。
「ハノイ様はお出かけになられました。……もう生きて戻られる事はありません」
すると、執事と思われる男性から衝撃的な事を言われてしまった。
次話は2/12に投稿する予定です。
セトがハゼルの頼みを聞く場面で、承諾する理由を少し詳しくしました。




