48.地震からの復興
今回はあまり時間が取れなかったため、少し早送りな展開になります。
申し訳ありませんでした。
自宅が倒壊してしまったので、私達家族4人は王城へ行くことにした。
王城へ行くと、そこはハチの巣を突いたかのような大混乱になっていた。
「東の門前で火事が発生しました!」
「南東の大通りで家が倒れて生き埋めが多数発生している模様!」
「火事は消防隊と水魔法使いを同行させろ、生き埋めは救急隊と兵士を派遣だ!」
地震のせいで発生している各地の被害は、王国軍の兵士が中心となって対応している。
兵士の皆さんが指示通りテキパキと動いているのは、日頃の訓練の賜物だろう。
人命救助は兵士の皆さんに任せるとして、私達は宰相ローレン様の所へ行く。
「ローレン様、地震で私の自宅が倒壊してしまったので、しばらく王城の一室を貸して頂けないでしょうか」
ローレン様の執務室に入り、開口一番にお願いしてみる。
「家が倒れたのか、それは災難だったな。とはいえ、王城の客室を貸し与える訳にはいかんぞ」
「それは承知しております。シェリスの【ルーム】があるので、兵士や使用人の休憩室を1室お借り出来れば、それで構いません」
シェリスの使う【ルーム】があれば、狭い部屋でも関係なく快適に過ごせる。
【ルーム】を安心して使える環境と、お手洗いを使わせてもらう事が出来れば、困りはしないだろう。
さすがにお風呂を借りる事は出来ないだろうが、そこは王都内にある銭湯にでも行けば良い。
「分かった。使用人の休憩室を貸そう。その代わり、地震の被害復興を手伝ってもらうぞ」
やはり、そう来たか。
まあ、想定していた事なので快く引き受ける事にしよう。
「わかりました。被害復興については、貴族の義務と心得ていますので、喜んで手伝わせて戴きます」
「うむ。それでは、部屋の方は手配しておこう」
ローレン様にお礼を言い、執務室から退室した。
案内された部屋は、上級貴族の侍女や下級貴族が宿泊するための客室だった。
客室は貸せないと言われたが、それはローレン様のちょっとした冗談だった様だ。
さすがに、貴族を使用人の休憩室に住まわせる訳にはいかなかったのだろう。
この恩は、地震の復興に尽力する事で返す事にしよう。
その日はミリア王女に挨拶をして休むことにした。
さすがに疲れていた様で、ベッドに入るとすぐに眠りに落ちた。
◇◇◇
翌朝、近隣の貴族達が集まり会議が開かれた。
議題はもちろん地震の被害復興についてだ。
会議の冒頭で、地震の主な被害について報告がなされたが、想像していたよりも被害は少ない。
私の家や魔導ギルドのある辺りは被害が大きかったが、その他の地区ではそれ程でもないらしい。
私の家の周辺は情緒があって気に入っていたが、古い建物が多かったので被害が大きいのだろう。
「火災は全て鎮火したのか、それは一安心だな」
「未だ倒壊した建物の下敷きになっている人が多く居るのか。まずは、そういった人の救助が必要だろうな」
「家を失った者も多いだろう。そうした者への支援も必要であろうな」
集まった貴族達は、それぞれに意見を言うが、どことなく他人事だ。
まあ、自分たちが被災した訳でも無いし、自分たちの領地でも無いので、力が入らないのは仕方がない事かもしれない。
私はローレン様から手伝えと言われているので、積極的な話をしよう。
「昨日、私は倒壊した建物の調査や下敷きになった人の救助を行いました。また、家を失った人達を遠隔の都市まで転送できますので、そういった方面で支援したいと思います」
「さすが敏腕魔法使いのセト殿、我々の出る幕は無さそうですな」
「王都の復興も、セト殿に任せれば安心であるな」
私が支援を表明すると、幾人かが復興作業を私に押し付けようとする。
さすがにそれは、王国貴族としてどうかと思う。
ローレン様を見ると、顔をしかめている。
そこで、トール・ミュンセン子爵が助け舟を出してくれた。
「私の家臣には体力自慢の者が多いので、人命救助を中心に支援しよう。して、その他の方々は資金援助を申し出る、という事で間違い無いかな?」
さすがに、そこまで言われると何も援助をしないとは言えない様で、他の貴族達は渋々といった感じで資金援助に応じた。
私は新興貴族で経済力は皆無なので、資金援助の免除は有難い。
まあ、その分はしっかり働いて返すことになりそうだが。
「それでは、セトとトールは救助を指揮している指揮官の指示に従ってくれ。特にセトは救助の難航している現場を頼む。それと、夕刻に被災者の輸送を行うので、魔力の消費に気を付けておいてくれ」
ローレン様からの指示を受け、その場は解散となった。
私達4人は、王城前で待っていた家臣3人と合流して指揮官の所へ赴いた。
◇◇◇
最初の現場は、集会場の様な大きめの建物だ。
木造の建物で、正面から向かって右半分が倒壊している。
ここは、下手に建物を動かすと完全に倒壊する恐れがあるので、手を出せないらしい。
また、どれだけの人が建物内に残されているのかが分からず、救助が捗っていないとの事だ。
まずは、ミルスとトーヤに建物の中を調べてもらう事にしよう。
「ミルスとトーヤ、ここの建物内に残されている人を探してきてくれるかい?」
「私の出番ですね!」
「任せてください!」
相変わらず、2人とも元気いっぱいだ。
ミルスとトーヤが飛びながら建物内に入って行くのを見て、周囲の人達は驚きの声を上げる。
野次馬の何人かがミルスとトーヤの正体を聞いてきたが、作業の邪魔になるのでお引き取りを願った。
「セト様、生きている人を1人見つけました」
「僕の方も1人見つけました」
ミルスとトーヤが、1人ずつ生存者を見つけて来た。
どちらも、崩れかけた部屋に閉じ込められている様だ。
既に亡くなっている方も何人か居たが、そちらについては建物を片付けるときに運び出してもらう事にしよう。
「それでは、生存者を救助して来ます」
私達の付き添いで来ていた兵士に声を掛け、生存者の居る付近の壁までやってきた。
この壁に穴をあけて、そこから生存者を運び出す事にしよう。
――【腐敗】
直径1m程の範囲を対象にして、木の壁を腐らせる。
壁に【腐敗】を掛け続けると、壁はボロボロと崩れ去り穴が開いた。
これで中に閉じ込められている人を救助できる。
「アルフさんとレニアさんは、中に閉じ込められている人を救助して下さい」
後の事はアルフさんとレニアさんに任せて、私は次の人を救助しに向かう。
次の人は、石壁の向こうに閉じ込められていた。
しかし、幸いな事に石壁には通気口があり、中を見通す事が出来た。
中を見通す事が出来れば、転移門で中に入れる。
――【消滅】
転移門を作り出して壁の中に入ると、人が倒れていた。
倒れた本棚に足が挟まれていて、動けないらしい。
その人は苦しそうに呻いているので、本棚に挟まれた足を骨折しているのだろう。
「助けに来ました。もう大丈夫ですよ」
倒れている人に声を掛け、救助を始める。
――【暗黒空間】
倒れていた本棚は【暗黒空間】へ格納し、取り除く。
その後、私とシェリスで閉じ込められていた人を外に運び出す。
足の怪我は、シェリスの神聖魔法で治療してもらった。
こちらの救助が終わった頃、アルフさん達の方も救助が終わった様だ。
「これで、この現場は一段落つきましたね。次の現場に行きましょうか」
シュリさんの風魔法で王城内の指揮官と連絡を取ってもらいつつ、その日は計3か所で人命救助を行った。
どうやら、救助の難航している所は3か所だけだった様で、人命救助は一段落した様だ。
人命救助を終えて王城に戻ると、今度は被災者たちの輸送が始まった。
王都プロイデンの南東門を出てすぐの所に、他都市に身寄りのある被災者たちが集まって来ている。
身寄りのない被災者たちは、しばらく国や神殿が面倒を見る事になっている。
「それでは、トリス市へ行く方は集まってください」
そう言って被災者に集まってもらい、トリス市への転移門を開く。
隣では、シェリスが同じようにクルテン市への転移門を開いている。
「おお、これがワープゲートの魔法か」
「かあちゃん、凄いよ! あそこの先にトリスが見えるよ!」
転移門を見た人々は、みな興味津々だ。
中には、転移門の向こうとこっちを行ったり来たりしている人も居る。
そういう人たちは、特に邪魔にならない限りは、そっとしておいてあげようと思う。
普通に暮らしている限りは転移門なんて見る事は無いので、瞬間移動を体験する良い機会だろう。
そうやって被災者達が転移門の向こうへ行くのを見守っていると、今度は向こうの都市から馬車がやって来た。
支援用の食料などを積み込んでいる馬車だ。
この世界は現代日本ほど流通が整備されておらず、しばらくの間は食糧難になりそうだったので、とても有難い。
その後も、マリトール市、レニス市、レイタル市等の主要都市へ転移門を開き、被災者の人々を送り届けた。
◇◇◇
地震が発生してから数週間は、転移門を開く仕事で大忙しだった。
王都周辺の街道が地震で通行できなくなったため、流通がマヒしてしまったからだ。
シェリスと2人で対応したにも関わらず、朝から晩まで馬車が途絶える事は無かった。
不幸中の幸いは、転移門の通行時に通行料を徴収していたのだが、そのうちの何割かは私達の報酬として頂ける事になった。
いくら緊急時とはいえ、転移門を無料で使わせるのは王族関係者だけだ。
そうしないと、地道に旅をしながら商売している商人と、転移門を使う商人の間で格差が生まれてしまう。
そのおかげで、復興に掛かり切りだったにも関わらず、魔導ギルドで仕事をする程度の収入は得られた。
倒壊した自宅は、お隣の家の土地を買い取り、2軒分の土地で新たな建物を建てる事になった。
さすがに子爵にもなって小さな家に住むのは止めろと、ローレン様から苦情を言われたからだ。
お隣の夫婦は付近の中古物件を購入するつもりだったらしく、喜んで土地を売ってもらえた。
ちなみに、王都内が落ち着いてきたので王城を引き払って宿住まいにしようかと思ったが、ミリア王女の反対で居座り続ける事になった。
なんだか居候の様で落ち着かないかと思ったが、定期的にローレン様が仕事を持ってくるので、結局は持ちつ持たれつになっている。
そうしている間に2ヶ月が経ち、季節は春になった。
次話は2月5日に投稿する予定です。




