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40.漁村シーティカ 3

 本日投稿1/3です。

 話は次話に続きます。


◇◇◇


 翌日、さっそく街道作りの準備に取り掛かる事にした。


 まずは、馬車1台をレンタルする。

 移動するだけなら転移門を開けば良いが、整備した街道に問題ないか確認するためにも、馬車で移動した方が良いだろう。


 次に、冒険者を雇う事にする。

 男性冒険者のミリオさん、女性冒険者のサーシャの計2名を雇う事にした。

 ミリオさんは馬の扱いに長けているという話なので、御者と馬の世話を任せる事にした。

 サーシャさんは街道での護衛経験が豊富らしいので、街道に不都合な点が無いか点検してもらう事にした。


 そして、出来立ての弁当やスープを中心に、食料を購入する。

 いつも使う手だが、これらの食料を【暗黒空間】に入れておけば、いつでも出来立てを味わえる。

 今回は冒険者の食料も購入しておく事にした。

 いくら何でも、私達だけが美味しい食事を食べるのは忍びないからね。


 最後に、シェリスに【マジックサイト】を使ってもらって、公都レイタルとシーティカの間の詳細な地図を作ってもらった。

 その地図の上に、街道の予定地を書き込んで行く。

 予定通り街道が出来上がれば、公都レイタルとシーティカの間は馬車で2日程に短縮できそうだ。



 街道の整備に取り掛かって2日目の朝、公都レイタルを出発した。

 公都レイタルを出発してしばらくは、馬車に乗って進む。

 しかし、森の入口に差し掛かると、馬車では通れないほど道が細くなっている。


「これは、道と言うの? 人が通る道とは思えないわね」


 シェリスの言う通り、森の中には獣道かと思うほど細い道が続いている。

 シーティカを開拓した頃は、もう少しマシな道だったのだろうが、人が通らなくなって荒れたのだろう。

 こんな道を7日間も歩いて支援物資を届けるのは、相当に大変そうだ。


「さて、街道を作るので少し下がっていてください」


 シェリス達と冒険者を後ろに下がらせて、私は街道を作る事にした。

 真っ平らな岩で舗装された街道をイメージしながら魔法を使う。


――【荒廃】


 ズズーン


 大きな地鳴りがしながら、森の一部が陥没し、その後に陥没した部分から岩がせりあがって来る。

 地鳴りが収まった頃、目の前に幅10m程の、平らな岩で舗装された道が現れた。

 以前に【荒廃】の魔法を試した時、岩や砂から成る土地であれば、かなり自由に土地を作り変えられる事が分かった。

 今回は、『硬い岩』からなる、細長く『荒廃した土地』を作り出したのだ。

 そして、それを街道として使おうという訳だ。


「うん、やっぱり【荒廃】の魔法は迫力がありますね。それでは、冒険者のお二人さん、岩の質や付近の安全を確認して頂けますか。 ……って、あれ?」


 冒険者へ声を掛けようと振り返った所、冒険者の2人は呆けた顔で固まっていた。

 事前に、魔法で街道を作ると説明しているのだから、そんなにショックを受けなくても良いと思う。


「セト、いつも思っているけれど、どうすればこんな発想が出来るのかしら」


 シェリスも半分呆れた口調だ。


「ミルスは、奇跡をこの目にしました。セト様は、神様の御使いなのでしょうか」


 いいえ、私は神様の御使いではなく、女神様の旦那です。

 冗談はさておき、全員が正気に戻るまでしばらく待つことになった。


◇◇◇


 全員が正気に戻った後、街道の岩の質を確かめてから、出発する事にした。


 サーシャさんによると、一般的な石畳の街道と変わらないそうだ。

 これで、街道として使うには困らないだろう。

 街道として問題が無い事を確認できたので、馬車に乗って進むことにした。


 馬車で進み始めて30分程経過した頃、馬車が止まった。

 御者台に顔を出すと、ミリオさんが声を掛けて来る。


「セト様、川がせき止められて水があふれそうです。このまま進めなくもありませんが、どうしましょうか」


 御者のミリオさんに言われて前方を見て見ると、街道となっている岩が、川をせき止めてしまっている。

 山の麓に沿って街道を作ったが、どうやら川を遮る形で街道ができてしまった様だ。

 さすがにこのままだと街道として使えないので、ここは橋を作る事にしよう。


「橋を作ってきますので、皆さんはここで待っていてください」


 橋の作り方だが、街道となっている岩について、川を遮っている部分の底へ穴をあける事にした。


――【消滅】


 街道の岩の底へ半円状の穴をあけると、そこから水が通り始めた。

 川の幅がそれなりにあるので、横にも同じような穴をあけて行く。

 これで、大雨で増水しても大丈夫だろう。


「橋を作りましたので、先に進みましょうか」

「え? もう橋が出来たのですか。何も変わっていない様に見えますが……」


 馬車に戻って橋が出来たことを伝えると、サーシャさんから疑問の声が上がる。

 他の2人の冒険者は、一々気にしない事にした様だ。

 あまり時間を使っていられないので、ここは簡単な説明で終わらせよう。


「川を塞いでいる岩の底に、穴を作っただけですよ」

「確認しますので、少し待って頂いて良いでしょうか」


 そう言うと、サーシャさんは馬車から降りて橋の方へ走って行った。

 サーシャさんは橋を少し眺めた後、戻って来た。


「とても丈夫そうな橋ですね。このまま通行しても問題ないと思います」


 安全の確認が取れたので、馬車を進める事にした。


 その後、何度か橋を作りつつ2時間ほど進むと、道の終わりに辿り着いた。


「セト様、街道の終わりに着きました。そろそろ食事の時間なので、休憩しても良いでしょうか。馬達も休ませたいです」

「そうしましょう。食事の準備をしている間に、続きの道を作ってきますよ」


 1度の【荒廃】で、どこまで長い道を作れるか試してみたかったが、あまり長いと途中の川を長時間せき止める事になる。

 休憩の時間を計る意味も込めて、最初と同じ位の長さにしよう。


――【荒廃】


 ズズーン


 続きの道が出来上がった。

 念のため、予定通りに街道が出来たかどうか、出発前にシェリスに確認してもらおう。

 最初に作った部分は予定通り出来ていたので、今回も問題ないと思うけどね。


◇◇◇


 街道を作り始めて2日目の昼下がり、平原の端を進んでいると、唐突に念話が届いた。


『セト殿、一つ頼みを聞いて欲しいぞい』


 この話し方は、豊穣神ドリート様だな。

 神様から頼み事とは珍しい。


――豊穣神ドリート様、如何なされましたか?


『そこの平原の中央付近に、エヴィル・トレントという魔物が居るのじゃが、長年平原を荒らして困っておったのじゃ。そやつらを倒してくれると、嬉しいぞい』


 まさかの魔物討伐の依頼だった。

 街道付近に凶悪な魔物が跋扈するのも良くないし、ここは討伐依頼を受諾しよう。

 それに、神様からの依頼を断るなんて事は出来ないしね。


――豊穣神ドリート様、承知致しました。


『ほっほっほ、よろしく頼んだぞい』


 さて、この事を他の皆に伝えないといけない。

 まずは馬車を止めてもらおう。


「ミリオさん、馬車を止めて下さい」


 そう伝えると、すぐに馬車が止まる。


「セト様、何かありましたか」


 付近を監視していたサーシャさんから、疑問の声が上がる。


「先ほど豊穣神ドリート様から、この平原に住む魔物を倒して欲しいと依頼がありました。この街道の安全のためにも、討伐して行こうと思います」

「は?」


 サーシャさんは、今までの丁寧な口調も忘れて、間抜けな声をあげている。

 私だって、驚いたよ。


「セト、ドリートお爺様から連絡があったの?」

「うん。豊穣神ドリート様から突然念話が届いて、私も驚いたよ。平原に居るエヴィル・トレントを倒してくれと言われたよ」


 シェリスと話していると、ミリオさんが叫び声をあげた。


「エヴィル・トレントだって! Aランク上位の魔物じゃありませんか。セト様、私達二人では到底かないません。討伐は中止にして頂けないでしょうか」


 ミリオさんが悲痛な声を上げている。

 しかし、少し勘違いをしている様だが、倒すのは私だ。


「ミリオさん、落ち着いて下さい。エヴィル・トレントは私が倒してきますので、知っている事を教えてください」

「そうでした。セト様はレッドドラゴンを倒せるほどの方でしたね」


 平原の中を走りながら、ミリオさんとサーシャさんから、エヴィル・トレントの特徴を教えてもらった。

 エヴィル・トレントは樹木の魔物で、魔法は使って来ないが、力が非常に強いらしい。

 その力は、城壁さえも簡単に砕くらしいので、遠くから魔法で倒すのが常套手段との事だ。


 エヴィル・トレントの事をあらかた聞き終わった頃、エヴィル・トレントの姿が見えて来た。

 そこでは、全長5m以上の黒い樹木が2体動いていた。


 次話は12/11に投稿する予定です。

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