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4.とても行き届いた配慮

本日最後、4話目の投稿です。

 日が傾いてきた頃、ようやくレニス市内へ入ることができた。

 案内のレオナルフさんは、ややスリムな体系のさわやか青年剣士だ。


 何はともあれ、レオナルフさんの案内で宿屋向へかう。

 街中を歩いている間、レオナルフさんはその宿屋について熱く語ってくる。


「これから行く宿屋のアマツ屋は食堂も兼ねていてね、料理が美味しいから僕もよく利用するよ。宿泊の方は少々高めな料金だけど、サービスがよくて異世界人からの人気も絶大だよ」


 何でも、アマツ屋の創業者は異世界人で、よき故郷の再現に相当な情熱を注ぎ込んだらしい。

 パールナイトの人々からも大人気で、ほとんどの大都市にはアマツ屋の支店があるそうだ。

 そんなアマツ屋に宿泊させてもらえる配慮に、とても感謝だね。


「王都への出発は3日後の朝なので、それまではアマツ屋でゆっくりしてよ」


 レオナルフさんが話を締めくくった所で、宿屋に到着する。


 外見は少し大きめの宿屋だが、中に入ると1階は食堂と銭湯、2階と3階が宿屋の様だ。

 そして、30前後と思われる受付嬢の、お淑やかな挨拶に迎えられる。


「いらっしゃいませ、レオナルフさん。本日はご友人とお食事でしょうか?」


 レオナルフさんが私の事を紹介しつつ、宿泊手配してくれる。


「こんばんは、タリアさん。今日の用事はこちらセトさんの宿泊手配だよ」

「初めまして、セトです。今日からよろしくお願いします」


 今日から3日間の宿泊と、3日後の朝までの食事を手配してもらう。


「セトさん、僕は仕事が残っているから、今日の案内はここまでだよ。明日は朝9時から案内できるので、アマツ屋の前で待っているよ。」


 宿泊と食事の手配が終わると、レオナルフさんは詰所へ帰って行った。


◇◇◇


 タリアさんが、宿屋の説明をしながら番号札を渡してくれる。

 その仕草は、とても丁寧で気品がある。


「セトさんのお部屋は2階の203号室になり、こちらが鍵と番号札です。この番号札をお持ちになれば、お食事と銭湯を無料でご利用頂けます。何かありましたら、私タリアか娘のタニーにお申し付け下さい」


 銭湯に入れるとは、旅人にとって実に嬉しい配慮だね。

 まるで温泉旅館のように至れり尽くせりだ。

 まずは、お腹が空いているので、食事から堪能することにしよう。


 アマツ屋の食堂は、ちょっとお洒落な居酒屋の雰囲気だ。

 こういった雰囲気まで気を遣うとは、創業者の情熱は相当だね。


 宿泊客は好きな定食が食べられると言われたので、本日のお勧め定食を選ぶ。


 そして出てきた料理が、煮魚、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、そして白米のご飯だった。

 煮魚と肉じゃがは、ほどよい加減の出汁と醤油味が中まで浸み込んでいて、とてもおいしい。


 きっと、創業者は日本料理の材料集めのために、世界中を旅したに違いない。

 もしかすると、ここの創業者以外にも、日本食の再現に情熱を注ぐ異世界人が居るのかもね。

 その情熱のおかげで、この世界でも日本食が食べられることに感謝しよう。


 メニューには焼肉定食や味噌カツ定食なんて料理も並んでいるので、肉料理もしっかり食べられそうだ。


「ごちそうさまでした」


 さあ、食事の後は銭湯だ。

 この食堂を体験すると、銭湯にも期待してしまうね!


◇◇◇


 アマツ屋の銭湯は、男湯と女湯に分かれて間に番台がある、現代の銭湯と似た感じだ。


 この世界に銭湯があると知って少し驚いたが、公衆浴場は古代ローマの時代から存在していたし、別に不思議な事じゃなかった。

 さらにいうと、異世界人が頻繁に訪れるなら、銭湯の文化も持ち込まれているだろうしね。


 そういえば、体を洗うためのタオルや石鹸を持っていない。

 その事を番台さんに伝えると、アマツ屋宿泊客には無料で貸出しているそうだ。

 ついでに、荷物も預かってもらえるらしい。

 本当に細かい配慮が行き届いていて、創業者の情熱が伝わってくるよ。


 まず目に入ったのが、広い浴槽だ。

 大人が10人以上入っても余裕がありそうなほど広い。

 こんな大量のお湯をどうやって汲み上げているのだろう。

 次に気が付いたのは、照明器具が浴室を照らしている事だ。

 銭湯は夜遅くまで営業しているので照明器具が必要になる事は想像できるが、どういう仕組みか気になる。


 浴室に気を取られていると、近くのおじいさんが話しかけてきた。


「兄ちゃん、銭湯は初めてかの? まずは体を洗ってから、あの湯船に浸かるのじゃ。タオルは湯船に入れちゃいかんぞ」


 つい深く考え込んでしまったが、傍からは戸惑っている様に見えたらしい。

 体を洗いつつ、お湯の汲み上げと照明について聞いてみよう。


「はい、初めてなので助かりました。ところで、天井の光やお湯の汲み上げの仕組みをご存じでしょうか?」

「なんじゃ、そんな事を気にしとったんか。天井の光はメンティス帝国の『高輝度魔導照明』じゃの。お湯の汲み上げも、メンティス帝国の『高出力魔道ポンプ』を使っとるらしいの。」


 なるほど、名前からすると魔石を使った魔導具の高性能版かな。

 メンティス帝国は工業が優れているという話なので、高性能な魔導具も得意なのだろう。


「なるほど! さすがメンティス帝国という事ですね」

「そういう事じゃ。プロイタール王国でも魔導具は作られておるが、メンティス帝国製ほどじゃないの。ま、そのぶん食い物はこっちの方が美味いがの!」


 そんな話をしながら、お湯に浸かる。

 ちょっと熱めだけど、いいお湯だね!


 それにしても、ライトにポンプとは、思ったよりずっと文明が発達しているね。

 中世ヨーロッパ程度の文明だと勝手に思い込んでいたけど、思ったより快適な生活が期待できそうだ。


 意外とハイテクなお風呂も堪能したし、部屋に行くとしますか。


◇◇◇


「た、畳張りだ!」


 2階の客室フロアへ行き、203号室の扉を開けた瞬間、つい心の叫びが漏れてしまった。


 広い浴場のお風呂、美味しい食事、そして畳張りの部屋。

 しかも、防音構造になっているらしく1階の音が全く聞こえない。

 アマツ屋創業者の情熱は、一体どこまで行くつもりなのか。


 そして、畳の上には布団が敷いてあり、寝巻まで準備されている。

 本当に、温泉宿並みの配慮に驚かされるね。


◇◇◇


 就寝するにはまだ早いので、能力の確認をしよう。

 以前ステータス確認した時、能力欄にあった【ステータス】だ。


 よくある異世界転生ファンタジー小説では、特に能力が無くても自分のステータスを確認できる場合が多い。

 しかし、転生神ネフリィ様から強化したと言われているので、他にも何かあるのだろう。


 自分の【ステータス】能力に対して【ステータス】を使用してみよう。


 ――【ステータス】


【ステータス】Lv10

  ・パールナイトで誕生した生命体は、全てLv1の【ステータス】を所有する。

  ・対象の情報を得ることができる。

  ・ステータスLvに応じて、取得できる情報が増加する。

  ・ステータスLv8以上の習得には、非常に厳しい条件の達成が必要。


  【ステータス】Lv1

    ・自身の名称が分かる。


  【ステータス】Lv2

    ・自身のステータス値が全て分かる。


  【ステータス】Lv3

    ・自身の持つ能力と、その詳細が分かる。


  【ステータス】Lv4

    ・自身の所有する物品の名称が分かる。


  【ステータス】Lv5

    ・全ての物品の名称が分かる。


  【ステータス】Lv6

    ・自身の所有する物品の詳細な情報が分かる。


  【ステータス】Lv7

    ・全ての物品の詳細な情報が分かる。


  【ステータス】Lv8 《習得条件達成:上位Lvの条件を達成した》

    ・他者の名称が分かる。

    ・偽名を使用している場合、それらも全て分かる。


  【ステータス】Lv9 《習得条件達成:上位Lvの条件を達成した》

    ・他者のステータス値が全て分かる。


  【ステータス】Lv10(MAX) 《習得条件達成:自己のLv10能力の詳細を確認した》

    ・他者の持つ能力と、その詳細が分かる。


 ……どう見ても、テンプレ通りの完璧なチート鑑定能力だった。


 転生直後の【ステータス】はLv7だったので、転生神ネフリィ様から頂いた能力はLv7までだね。

 確かに、何も知らない異世界の森の中で生き延びるには、【ステータス】Lv7は必須だろう。

 食べ物を調達しようにも、見たことのない動植物ばかりなので、何が食べられるかも分からない。


 ちょっとナナメ上な転生神ネフリィ様の配慮が心に染みる。


 それにしても、【ステータス】Lv10を習得するには、他の能力Lv10の自力達成が必要なのか。

 確かに「非常に厳しい条件」なのかもしれないが、私にとっては「ほぼ無条件」だったね。


◇◇◇


 所持品の詳細が分かるらしいので、転生神ネフリィ様から頂いた装備の詳細を確認してみる。


【ショートソードの鑑定結果】

  【名称】 久遠のショートソード

  【等級】 神授級

  【特殊能力】

    ・オリハルコン製のため、硬く強靭な武器であると共に、優れた魔法発動体でもある。

    ・手入れをしなくとも武器としての能力が低下せず、永久に使い続けることができる。

    ・このアイテムが破損した場合は自動的に修復され、全損しても1週間後に蘇る。

    ・所有者の元から一定間隔離れた場合、所有者の手元へ転移する。


【ナイフの鑑定結果】

  【名称】 久遠のナイフ

  【等級】 神授級

  【特殊能力】

    ・オリハルコン製のため、硬く強靭な調理道具であると共に、優れた魔法発動体でもある。

    ・手入れをしなくとも調理道具としての能力が低下せず、永久に使い続けることができる。

    ・このアイテムが破損した場合は自動的に修復され、全損しても1週間後に蘇る。

    ・所有者の元から一定間隔離れた場合、所有者の手元へ転移する。


 ……どう見ても、非日常的でオーバースペックな装備だった。


 その他の装備品は【等級】が量産品なため、普通の装備だと思われる。


 確かに、森の中で長い時間生き抜くためには、手入れせずとも壊れないタフな刃物は必要だろう。

 また、魔法も使うので、刃物を装備したまま魔法が使えるのも、ありがたい。

 だからといって、ここまで全力全開な特殊能力でなくとも、十分に生きていけると思う。

 そして、オリハルコン製の調理道具とは、一体何を調理させたいのだろう。


 ここで、とある事に気が付いた。

 これらのアイテムと、【暗黒魔法】、【ステータス】の能力があれば、初日からでも森の中でサバイバル生活して行けるだろう、と。


 転生神ネフリィ様の、本気で全力な配慮に意識が昇天しそうだ。


 転生神ネフリィ様、本当に、本当に感謝しています。

 でもね。

 決して、森の中での俗世から離れた生活を望んでいた訳じゃない!

 そこだけは誤解だったと強調したい!


 2017/1/10 分かりにくい表記を直しました。

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