28.ミリア王女の不幸 3
本日投稿3話目です。
少し短めの内容になっています。
グレンタール卿が魔人化して国王陛下を襲ったため、急遽グレンタール邸を調査する事になった。
そして何故か、その調査に私とシェリスも同行する事になった。
グレンタール邸は王城からほど近い貴族街にあり、王城からものの十分程度で到着した。
グレンタール卿の家族や使用人達が逃亡しない様、衛兵たちがグレンタール邸を包囲した状態で調査に入る。
「セト、これが何か分かるか?」
ローレン様から、宝石箱に入った黒い石について尋ねられる。
見ただけでは何か分からないので、【ステータス】を使って確認してみる。
【黒い石の鑑定結果】
【名称】 瘴気の石
【等級】 希少品
【特殊能力】
・瘴気を発生させ、周囲の動植物を浸食する。
・瘴気に浸食された動植物は、魔力が増加する。
・瘴気の浸食が一定以上進んだ動植物は、魔物や魔人へと変化する。
どう見ても、今回の騒動の原因だ。
危険度の高い品なので、早々に浄化をしてもらう必要がありそうだ。
早速、ローレン様に報告する。
「ローレン様、鑑定した結果、これは瘴気の石という品だと判明しました。この石の付近に居ると瘴気に侵され、いずれ魔物や魔人に変化する様です」
「これが瘴気の石か。書物では読んだことがあるが、まさか実物をこの目で見る事になるとは思わなかったな。グレンタール卿が魔人化した原因は、これで間違いなさそうだな」
グレンタール卿の使用人から瘴気の石について聞いたところ、素上の知れない商人から購入したと分かった。
使用人から聞いた所、その商人は『持っているだけで魔力が増える奇跡の石』との触れ込みで、グレンタール卿へ売り渡したそうだ。
また、その商人は言葉の端々にシャピナ共和国の訛りがあったことから、シャピナ共和国出身だろうということが分かった。
結局、グレンタール邸では、それ以上の事は分からなかった。
◇◇◇
魔人騒動から数日後、私とシェリスは再度王城へ呼び出された。
これまでの功績から王国貴族に叙爵してもらえる事になったので、その儀式の打ち合わせだ。
「本当に、私が貴族になっても良いのでしょうか」
確かに、これまでに何度か王国の危機を救ってきたが、それらは全て貰い物の力のおかげだ。
貰い物の力で貴族になるなんて、少し落ち着かない。
「何を言っておるのだ。セトが貴族になれなければ、今頃貴族の数は半分以下になっておるわ」
そう言うのは、ローレン様だ。
「そういう事でしたら、有難くお受けします」
「そうしろ。それにな、セトが貴族になると、私や陛下が気軽にセトへ依頼を出せる」
そういう事ですか。
まあ、王国としてもタダ飯食らいな貴族なんていらないだろう。
そして叙爵の当日、事前の打ち合わせ通り叙爵の儀が行われる。
「ペスト流行の鎮圧に加え、瘴気の沼の浄化、レッドドラゴンの討伐、そして儂やミリア王女の命を助けた事、これらの功績からセトを男爵位に叙する」
「我が力、プロイタール王国のために使う事、ここに誓います」
これで、私はセト・イツクシマと名前を変え、プロイタール王国貴族になった。
最下級とはいえ、参政権のある正式な世襲貴族だ。
家名については、セトつながりで、瀬戸内海にある厳島神社から取った。
プロイタール王国の貴族は上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵があり、これらの貴族には参政権が与えられている。
また、準貴族として、準男爵、騎士爵があるが、これら準貴族には参政権が与えられていない。
「セト、これでアタシ達も貴族だね」
シェリスについても、男爵夫人として貴族の仲間入りだ。
「うん、そうだね。といっても、普段の生活はこれまでと変わらないけどね」
「そうよね。貴族になったからと言って急に裕福になれるわけじゃないのよね」
「一応、年金をもらえるけど、裕福に暮らせるほどの額じゃないから、これからも働かないとね」
領地をもらえない代わりに、毎年年金が支払われる事になっている。
しかし、使用人の雇用や貴族同士の付き合いといった経費が増えるので、貴族になった方がお金は足りない。
まったく、世知辛い世の中だ。
◇◇◇
叙爵の儀を終えた後、私とシェリスはミリア様のお見舞いに訪れた。
「ミリア様、体調の方は如何でしょうか」
「あ、セトとシェリス、来て下さったのね。体の調子はとても良いわ」
ミリア様の容態は良い様で、【ステータス】で確認しても、異常なさそうだ。
「それは何よりです。それと、アレクライヒ・デュッセル様と復縁なされたこと、おめでとうございます」
「あ、もう聞いていました? そう、アレクライヒ様と復縁して、婚約者に戻ったの! とても嬉しいわ」
ミリア様は、とても嬉しそうな様子で復縁の話をする。
デュッセル伯爵子息の事が本当に好きなのだろう。
「それよりも、セトとシェリスは貴族になられたのですって? 素晴らしいわ!」
「そうなの、アタシとセトは今日から貴族になったのよ。これでいつでもミリア様に会いに来られるわ」
「そうね! ねえ、セトとシェリス、私とお友達になって下さいませんか? 命の恩人ですもの、おじいさまもきっと喜んで下さるわ」
「そうね、これでアタシとミリア様はお友達ね」
シェリスはミリア様と握手しながら、応える。
その後、私もミリア様と握手し、友人となった。
それから1時間ほど雑談し、ミリア様の寝室を後にした。
これからは、ちょくちょく遊びに来る事にしよう。
次回の投稿は11/13の予定です。




