表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/58

22.ペスト大流行 3

 本日投稿分の4/4です。


 テマニアから乗合馬車に乗り、夕方にはマリトールへ到着した。

 ペストで封鎖されているとはいえ、テマニアからマリトールへ物資輸送するため、少ないながらも乗合馬車が通っていた。

 歩き旅にならず、本当に助かった。


「セトさん、シェリスさん、お待ちしていました。私は魔導ギルドのマリトール支部で働いている、アリアです」


 マリトールへ到着すると、魔導ギルド職員のアリアさんが迎えてくれた。

 アリアさんは、背が高くメガネの似合う美人さんだ。

 お互いに挨拶をして、本題に入る。


「シェリス、もう日が傾いているけど、今日のうちにペストを殺菌してしまおうと思う。それでも大丈夫かい?」

「アタシは大丈夫よ。馬車の中で寝ていたから、まだまだ元気よ!」


 かくいう私も、馬車の中で爆睡してしまった。

 他の乗客から、こんな時によく眠れるものだと、少し呆れられていた。


 そんな事よりも、【呪殺】の掛け方の相談だ。

 マリトール市はなかなか広い都市で、とても1度の【呪殺】では網羅できない。

 そこで、マリトール市を半分に分け、それぞれを私とシェリスで分担して【呪殺】する事にした。


「シェリスはマリトール市の南半分を、私が北半分を担当して【呪殺】します。魔法の掛け方は、マリトールの中心地に行き、半円状に【呪殺】を掛けます」

「えっ、病院を回って一人ずつ治療するのでは?」


 アリアさんのいう通り、一人ずつ治療する方法も考えた。

 しかし、マリトール市には病院からあふれるほどペスト患者が居るので、一人ずつ治療していると時間が掛かりすぎる。

 せっかく【呪殺】は範囲魔法なのだから、マリトール市内全部を対象にして1回で済ませたい。


「アリアさん、一人ずつ治療すると時間が掛かりすぎます。この都市全体を対象にして魔法を使う方が速いですよ」

「そ、それもそうね。アハ、アハハ……」


 何故か、アリアさんは引きつった笑顔で笑っている。

 何がそんなに想定外だったのだろうか。


「アリアさん、私達は作業に取り掛かりますので、宿屋の手配をお願いしても良いでしょうか」

「あっ、ハイ。お気をつけて」


 そして、事前の打ち合わせ通り【呪殺】を掛けて回る。

 私もシェリスも【呪殺】を5回ずつ使った所で、ようやくマリトール市内全域を網羅できた。

 シェリスは平気そうだが、私は魔力欠乏で少しめまいがしている。


「セト、大丈夫?」

「大丈夫だ。魔法の使い過ぎで、少しめまいがしているだけだよ」

「あれ、そういえば、セトは人族なのに5回も【呪殺】を使えるの? しかも、5回使った後で軽いめまいで済んでいるって、どういう事なの?」


 普通は、【呪殺】を連続して使えないのだろうか?

 そう言われてみれば、テマニアで治療したテレンさんの最大魔力は50だった。


「転生した時、私の魔力は1000だったので、【呪殺】を5回使って丁度魔力が切れた所だと思うよ」

「そんなハズ無いわ。魔力が切れたら、とても立っては居られないハズよ。それに、人族の魔力は多くても200程度のハズなの」


 少し気になるので、久々に私の【ステータス】を確認してみる。


【セトのステータス】

  【名前】 セト

  【性別】 男(人族)

  【年齢】 17

  【職業】 魔法使い

  【体力】 121/121

  【魔力】 340/1340

  【腕力】 28

  【俊敏】 22

  【知力】 153

  【器用】 31

  【状態異常】 魔力欠乏(軽度)

  【能力】 【ステータス】Lv10、【暗黒魔法】Lv10、【剣技】Lv1、【転生神の祝福】

  【賞罰】 なし


「【ステータス】で見る限り、軽度の魔力欠乏で間違いないね。それと、最大魔力が1340まで増えているので、魔力欠乏が軽度で済んでいるみたいだね」

「うそ。人族でそんな魔力があるなんて。それも短期間で異常に成長しているわね。……まあ、セトはセトだからいいか!」


 シェリスの中では納得できたらしい。

 それよりも、【転生神の祝福】というのが気になる。

 いつの間にこのような能力を覚えたのだろうか。


【転生神の祝福】

  ・転生神ネフリィに祝福された夫婦へ贈られる能力。

  ・どんなに離れていても、夫婦の間で会話することができる。


 どうやら、転生神ネフリィ様は私たちの結婚を祝福して下さった様だ。


『シェリス、聞こえる?』

『セト、どうしたの? というか何これ。頭の中へ直接声が響いて来るのだけど』

『どうやら、私達がネフリィ様の祝福を受け、贈られた能力みたいだね。どんなに離れていても、夫婦の間で会話ができるよ』

『それは嬉しいわ! ネフリィ様が私たちの結婚を認めて下さった証よね!』


 気になる能力の確認も終えたので、アリアさんに予約してもらった宿屋でゆっくり休むことにした。

 もちろん、銭湯でしっかり体を洗うのも忘れていない。


 ただ、食料の調達に難があるとの事なので、食事は自前で用意することになった。

 王都出発前に買い込んでおいて助かった。


◇◇◇


 翌朝、魔導ギルドへ行くと、アリアさんが待ち構えていた。

 昨日施術した【呪殺】の結果が気になるので、聞いてみようと思う。


「おはようございますアリアさん。昨日のペスト対策は上手く効いたでしょうか」

「セトさん、シェリスさん、おはようございます。昨日の魔法の効果は上々ですよ! 市内の全域で、ペスト患者が快方に向かったと連絡が入っています」


 どうやら、私とシェリスで行ったペストの殺菌は上手く効いてくれた様だ。


「という事は、ペスト患者は全員助かりそうですか」


 そう聞くと、アリアさんは少し申し訳なさそうな顔をしながら答える。


「残念ながら全員とはいきませんでした。ペストによる体力の消耗が激しい患者さんは、亡くなっています。しかし、そういった手遅れの患者さんを除けば全員助かりそうです」


 全員は助けられなかったのか。

 最初から分かっていた事ではあるが、少々悔しい。


「そうですか、全員は助けられませんでしたか……」

「あまり思いつめないで。セトのおかげで大多数の患者が助かったのよ。セトは胸を張ってもいいわ」


 少し気を落としていると、シェリスが慰めてくれる。

 シェリスは本当に良い嫁だな。

 今回は助けられない人も出たが、【呪殺】で感染症を治す場合、患者の体力が失われてからでは手遅れと言う事が分かった。

 今後は、シェリスの神聖魔法も併用して治療する事にしよう。


「シェリス、ありがとう。今後は感染症の患者を治す時、シェリスの神聖魔法も併用してもらっても良い?」

「ええ、もちろんよ。神聖魔法の【体力回復】を使えば、病気で失われた体力も回復できるわ」

「お二人とも、仲が良いのは分かりますが、これから色々と説明してもらいますからね」


 それから1週間、新たなペスト患者は発生せず、マリトール市とテマニアの封鎖は解除された。

 しかし、封鎖が解除されるまでの間、魔導ギルドや現地の医者の質問攻めに遭い、ゆっくり休む暇も無かった。


◇◇◇


 王都へ戻って3日後、王城へ呼び出された。

 マリトール市をペストから救った事で、私とシェリスへ褒賞が渡されるとの事だ。


「セト、アタシ緊張してきたわ」

「私も緊張しているよ。本来のシェリスは人族の王様より偉いのだから、礼さえ守れば大丈夫……だと思う」

「でも、今は人族として暮らしているのよ。王様に会うなんて、ネフリィ様に会うより緊張するわ」


 シェリスの一言で、転生神ネフリィ様に会った時を思い出す。

 少し勘違いはあったけど、思慮深く良い神様だ。

 そんな事を思っていると、いくぶん緊張が和らいだ。


 そうしている間に、褒賞の授与式が始まる。


「魔法使いセト、前へ」

「はっ」

「魔法使いセト、マリトール市の市民をペストから守った事、大儀であった。褒賞として、救国英雄の称号を授ける」

「はっ、ありがたく頂戴致します」


 そう言いうと、マントとバッジを手渡される。

 事前に打ち合わせた通り、その場でマントとバッジを付け、一礼して引き下がる。

 シェリスも同様に、救国英雄の称号を受けた。


 救国英雄の称号は、貴族でこそないものの、貴族に準じた扱いを受けられる。

 また、年金として毎年金貨50枚を支給されるので、贅沢しなければ一生食うに困る事は無さそうだ。

 当初は、命を危険に晒してまでペスト撲滅に助力した事から、貴族への取り立ても検討されたらしい。

 しかし、1度の功績で貴族になった例は過去に無く、保留されたらしい。


 とはいえ、貴族になりたかった訳でもないので、有難く頂戴することにした。

 これで、生活費を気にする必要が無くなり、より一層平和に暮らして行けそうだ。


 ペストに関して少しは調査しましたが、もしかしたら誤っている部分があるかもしれません。

 そこは物語補正ということで流して頂けると幸いです。

 次回は10/30に投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ