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16.魔導ギルドでの初仕事 4

 本日最後の投稿です。

 【暗黒空間】から久遠のショートソードを取り出しつつ、オーガ達に対して精神を集中する。

 野犬や山賊と戦った時と比べると、何故か心が落ち着いている。

 守るべき人達が居るからか、引かずに戦うと心に決めたからなのか、おそらくその両方だろう。


 オーガ達は、私に近づいた所で二手に分かれる。

 馬車と私を同時に襲おうという魂胆だろう。


「させない」


――【激痛付与】


 以前に山賊を退治した時と同様、地面に【激痛付与】を使う。


「「グガァァァー」」

「「ギャァァァー」」


 激痛の威力を最大にしたからか、4体のオーガは泡を吹いて気絶した。

 しかし、オーガキングだけは耐えた様で、痛みに顔を歪ませながらこちらを睨む。


「ナゼ、ジャマヲスル」


 オーガキングが何かを叫びながら、私の方に襲い掛かって来る。

 会話に付き合うほど余裕が無いので、ここは無視しよう。


「オレハ、マオウヲタオシテ、カミニナルノダ」


 オーガキングが斧を振りかぶって来るが、激痛に耐えているからかその動きは鈍く、何とか避けられそうだ。

 斧が振り下ろされるタイミングを見計らって、全力で横へ避ける。


 その直後、私が立っていた地面に斧が突き刺さり、大きな音を立てて地面が爆ぜる。

 こんな斧が当たったら、一発であの世行きだ!


「ジャマヲスルナ、シネ!」


 オーガキングは、そう言いながら再度斧を振り下ろしてくる。

 これも何とか避けることが出来たが、さっきより振り下ろしが速い。

 オーガキングの動きが鈍重なのは幸いだが、このままではジリ貧だ。


 しかし、こちらは木偶の棒ではない。

 そろそろ反撃と行こう。


――【五感消失】


 【五感消失】の魔法を掛けた瞬間、オーガキングは地面に倒れ込む。

 立とうとしているが、フラついていて、うまく立てない様だ。


 今回、オーガキングから奪った感覚は「平衡感覚」だ。

 【五感消失】の魔法は、名前こそ『五感』消失だが、五感以外の感覚にも効果がある。

 いくらオーガキングでも、急に平衡感覚を失えば、まともに立つことも出来ないだろう。


「クソ、ナニヲシタ。ダガ、コレデシネ!【ファイアボール】」


 オーガキングは、魔法の【ファイアボール】を撃って来る。

 オーガキングの使った【ファイアボール】は、直径が2メートル以上もある巨大な火球だ。

 こんなのを食らうとあっという間に丸焦げだし、避けると馬車に当たってしまう。


 しかし、魔法の扱いに慣れつつある私にとって、この程度の対処は難しくない。


――【消滅】


 その瞬間、オーガキングの放った【ファイアボール】が消え去る。


「ナゼダ。ナゼ、マホウガキエルノダ……」


 オーガキングは、さらに3連続で【ファイアボール】を撃ってきたが、全て【消滅】で打ち消した。

 【ファイアボール】を放った後、オーガキングはかなり苦しそうにしている。

 【ステータス】を見る限り、どうやら魔力切れと激痛の2重苦に責められている様だ。

 これは、オーガキングに引導を渡すチャンスだな。


 しかし、ここは慢心せず、もう少し弱体化させてから倒すことにしよう。

 念のため、オーガキングの視覚と聴覚を奪っておく。


――【五感消失】、【五感消失】


「ウワァァァ! ミエナイ……、キコエナイ……、ダレカタスケロッ!」


 視覚と聴覚を奪われたオーガキングは、頭を抱えてうずくまってしまった。

 配下のオーガに助けを命じている様だが、付近のオーガは全員気絶させているので、安心だ。


 これでオーガの戦力は全て封じただろう。

 唯一気になるのは、私の剣術は毎朝素振りをしている程度なので、オーガキングへ致命傷を与えられない可能性がある。

 そう危惧しながら、オーガキングの背へ久遠のショートソードを突き立てる。


「ガフッ!」


 さほど抵抗なく、背中から刺した久遠のショートソードがオーガキングの心臓へ突き刺さる。

 オーガキングは、血を吐いてしばらくした後、動かなくなった。


 あっけなく倒せたのは、どう見ても武器の性能のおかげだ。

 久遠のショートソード、性能良すぎだろ!


◇◇◇


 オーガキングの死体は、【暗黒空間】へ格納しておく。

 このまま放置してアンデット化したら困るからね。

 それに、死体には魔石が入っているだろうから、後で冒険者ギルドにでも買い取ってもらおうと思う。


 その後、気絶しているオーガ達にもトドメを刺して回る。

 もちろん、オーガ達の死体も【暗黒空間】へ格納しておく


 オーガ達を倒した後、馬車へ戻るとシェリスが抱きついてくる。


「セト、よかったぁ……。アタシ、セトが死ぬかと思って、心配で、心配で……」


 どうやら、相当心配してくれたらしく、シェリスは半泣き状態だ。

 シェリスの淡い青紫の髪を撫でつつ、落ち着くまで待った。


 シェリスが落ち着いた後、アクアリーナさん達と今後の相談をする。


「今日はこの付近で野宿にしますか? それとも、サイロンの宿屋まで戻ります?」


 もうだいぶ日が傾いているので、サイロンの宿屋に戻る頃には薄暗くなりそうだ。


「どちらにしても、オーガに襲われる可能性があるな……」


 ダリウスさんが、困った様な顔をして意見する。

 そういえば、オーガキングを倒したのを伝えていなかった。


「ダリウスさん、先ほどオーガキングを倒したので、どちらにしても、オーガが襲ってくる可能性は低いと思います」

「なんだと? さっきセト殿の倒したオーガは、オーガキングだったのか! そう言われてみると、少し体格が良かったし、体の色も普通のオーガと違っていたな」


 魔法で弱体化させていたから、戦いを見ただけでは気づかなかった様だ。


「そういえばセト、オーガ達が突然倒れたり、オーガキングがフラついたりしていたけど、一体何をしたの?」


 シェリスは戦闘中に使った魔法が気になっている様だ。

 シェリスも私と同じ暗黒魔法を使えるので、教えておこう。


「オーガ達が突然倒れたのは、地面に【激痛付与】を掛けたのですよ。威力を最大にしたので、苦しむ前に気絶したみたいです。それと、オーガキングがフラついたのは、【五感消失】で平衡感覚を奪ったからですよ」

「へぇー。暗黒魔法って、そんな使い方ができたのね」


 シェリスが軽い感じで返してくる。

 いやいや、ちょっと待ってください暗黒神シェリス様、あなたは今までどんな暗黒魔法の使い方をしていたのですか。

 色々とツッコミを入れたいが、今は時間が無いので我慢する。


「セト殿の使った魔法の事は後にしよう。まずはこの後だが、サイロンの町へ引き返した方が良いと思う。それと、宿屋へ行く前に冒険者ギルドへ寄って、オーガキング討伐の報告をするべきだろう」

「私もそれが良いと思います。セトさんとシェリスさんも、それで構わないですか?」


 私とシェリスはうなずいて返す。

 住人の遺体を放置するのは気がかりだが、遺留品も含めて持って帰ろうとすると、日が暮れてしまうので仕方ない。


 その後、サイロンの冒険者ギルドへ行き、倒したオーガキングの死体を確認してもらった。

 すると、倒したオーガキングが今回の騒動の原因であると断定され、魔物出没事件の解決が宣言された。

 サイロンの王都方面にも十数体のオーガが出没したらしいが、そちらは冒険者の一団で討伐したらしい。


 冒険者ギルドでは、オーガ討伐を祝ってパーティーをするらしく、熱心に誘われたが丁寧に断っておいた。

 そんなパーティーに出たら、冒険者ギルドへの勧誘攻めに遭いそうだからね。

 それに、明日の朝の出発も早いので、今日はもう休みたい気分だ。


◇◇◇


 オーガの群れを倒した翌朝、宿場町サイロンから王都へ向けて出発した。

 ビスタルクとブルームの2人については、冒険者ギルド経由で連絡してもらったものの、帰って来なかった。


 護衛の冒険者2人が居ないので、街道に魔物が出没しないか心配だったが、魔物に会う事無く無事に王都へ到着できた。

 他の3人から『魔物が出ても、セトが何とかするから大丈夫でしょ』と言われたが、魔物との戦闘なんてもう勘弁してほしい。


「ここでお別れですね。短い間でしたが、本当にありがとうございました。報酬については、準備できていますので、受付で受け取ってください」


 王都の生産ギルドへ到着すると、アクアリーナさんがお別れの挨拶をしてくる。


「短い間だけど、楽しかったわ。アクアリーナ、次は仕事ではなく遊びに来るわ!」

「そうですね、私の方からも遊びに行きますね」


 どうやら、シェリスとアクアリーナさんは友達になれた様だ。

 ずっと仲良く話をしていたからね。


「セト殿、お主との旅はなかなか面白かったぞ。馬車に乗る時には、また声を掛けてくれ」

「ダリウスさん、こちらこそ色々と勉強になりました。また機会があれば、ぜひお願いします」


 王都へ着くまでの間、ダリウスさんから馬車の操車を教わった。

 その間にダリウスさんの冒険譚も聞けたし、なかなか良い旅だったと思う。


 挨拶を終えた後、報酬を受け取って生産ギルドから出た。


◇◇◇


 宿屋へ帰る前に冒険者ギルドへ寄って、オーガとオーガキングの死体を売却した。

 すると、オーガやオーガキングの死体は、魔石以外にも需要があるらしく、合わせて金貨35枚にもなった。


 まとまったお金が手に入った事だし、シェリスも自分のお金が必要だろうから、いくらか渡そうと思う。

 宿屋に戻ってすぐ、シェリスへ報酬の分け前について話を切り出す。


「シェリス、今回の依頼で稼いだお金の半分をシェリスに渡そうと思っていますが、受け取ってもらえますか?」

「え? それって、手切れ金……なの?」


 報酬の分け前の話をしただけなのに、どうやったら別れ話に受け取れるのだろうか。

 シェリスが少し泣きそうな顔をしているので、ここははっきり言っておこうと思う。


「いえ、一緒に働いたのだから、分け前を渡そうと思っただけです。それに、私はシェリスが好きだから、別れたいなんて言いませんよ」

「え、だって……アタシ暗黒神なのよ……アタシ嫌われ者なのに……それなのに好きって……うぅっ……えぐっ……」


 結局、シェリスは泣き始めてしまった。

 暗黒神だろうと、嫌われ者だろうと、そんなの関係ないね。


 シェリスが落ち着くまで待った後、もう一度分け前の話を聞くと『お金の管理は面倒だから、全部セトに任せるわ』と言われてしまった。

 シェリスは、自活する気なんて全く無い様だ。


 本当に、可愛い女神様だよ。


 戦闘シーンは、本当に難しいですね。

 もっと躍動感あふれる表現が出来る様になりたいものです。

 次回は10/16投稿の予定です。

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