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15.魔導ギルドでの初仕事 3

 本日投稿3/4です。


 クルテン市へ到着した翌日、今度は王都に向けて出発した。

 本当はゆっくり観光でもしたかったが、その場合は王都までの旅費が自腹になってしまう。

 懐事情を考え、アクアリーナさん達と帰る事にした。


 帰りの馬車でも、シェリスとアクアリーナさんは仲良くおしゃべりしているし、ビスタルクとブルームは昼寝をしている。

 そこで、今日はダリウスさんと話をしようと思う。

 元冒険者という事なので、色々と冒険譚を聞けそうだ。


「ダリウスさん、少し世間話をしませんか?」

「セト殿か。儂と話してもつまらんと思うが、それでも良いなら隣に座ると良い」


 お言葉に甘えて、ダリウスさんの隣に座る。


「ご存知かもしれませんが、私は異世界人です。世間知らずなので、どのようなお話でも大歓迎です」

「ああ、そうだったな。それなら、この世の事情を教えるとしよう」


 どうやら、私の意図を読み取ってもらえたようだ。


「まずお聞きしたいのは、クルテン市へ向かう間に魔物を2回見つけるというのは、そこまで異常なのでしょうか」

「ああ、異常だな。普段であれば、魔物の報告なんぞ年に2回~3回程度だ。よく考えてみるが良い、それくらい安全でないと、護衛も付けずに交易なんて出来ん」


 確かに、全ての商人が護衛を雇うなんて無理だろうから、よほど安全でないと交易路として成り立たない。


「確かに、その通りですね。という事は、魔物が出現する原因を解消しない限り、クルテン市は苦しいままという事ですか……」

「まあ、その通りだな。とはいえ、王都を出た時には冒険者ギルドが本腰を上げておったので、そろそろ解消するだろうな」


 それなら一安心だ。

 それにしても、原因は何だろうか。


「ダリウスさん、魔物が出没する様になった原因は、想定できますか?」

「それは、付近にダンジョンが出来たか、強力な魔物が発生したか、そのどちらかだろう」


 過去の経験から、ある程度の想定は付く様だ。

 それにしても、強力な魔物が原因で各地に魔物が頻出する理由が分からない。


「強力な魔物が発生するのと、各地で魔物が出没するのは、どの様な関係があるのでしょうか」

「弱い魔物は、強力な魔物から逃げる様に、周囲に散るのだ。特に支配者クラスの魔物が発生すると、討伐が厄介で被害が大きくなるな」

「支配者クラス? それはどういった魔物でしょうか」

「ああ、『キング』や『クイーン』といった名前を持つ特殊個体だ。そいつが強いのも厄介だが、特定の種族を強化するのが厄介だ。支配者クラスの現れた種族は、全ての個体が普段より1ランク強くなる」


 支配者クラスは、ゴブリンキングやアントクイーンといった名前の魔物の事だろう。

 確かにそんなのが現れると、倒すのも苦労しそうだ。


「なるほど。そうで無い事を祈りますよ」

「だな」


 それから宿場町サイロンへ着くまで、ダリウスさんと世間話をして過ごした。


◇◇◇


 宿場町サイロンに入ってしばらく進むと、やけに騒がしい事に気が付く。

 街中で怒声が飛び交い、住民はクルテン市方面へ逃げる様に移動している。


「すみません、サイロンで何かあったのでしょうか?」


 クルテン市方面へ移動中の住民に声を掛けてみる。


「君たちは旅人か? この街へオーガの群れが迫っていると情報が入ったので、私たちはクルテン市へ避難している所だ。君たちも引き返した方が良いぞ」

「わかりました、ご忠告ありがとうございます」


 どうやら、緊急事態の様だ。


「ダリウスさん、馬車の中でアクアリーナさんと相談しましょう」


 馬車の中に入り、アクアリーナさんに状況を説明する。


「オーガはCランクの魔物ですから、私達には対処できません。すぐに引き返しましょう」


 アクアリーナさんは即決で判断する。

 まあ、私達は半分が非戦闘員なので、魔物の群れへ突撃するなんて自殺行為だね。


「ちょっと待てよ。また魔物から逃げるのかよ。俺たちは一体何のために雇われたんだ」


 ビスタルクが話に割って入る。


「そうですよ。町が襲われるというのに逃げるのは、冒険者のする事ではありません。オーガ討伐に参戦すべきです」


 ブルームもオーガと戦いたいらしい。

 しかし、非戦闘員の私達を巻き込まないで欲しい。


「いい加減にしてください。あなた達の役割は、セトさんとシェリスさんの護衛です。護衛対象を放って魔物討伐に向かうなんて、許されません」


 アクアリーナさんは、怒りに声を震わせながら、冒険者の2人へ言い渡す。


「いい加減にするのはアクアリーナの方だろ。冒険者を雇った癖に魔物から逃げてばっかりだ。それに、オーガを1体でも倒せば、俺はCランクになれる。こんなチャンスを棒に振ってたまるか。俺はオーガ退治に行く」

「僕も、街に危機が迫っているのに見過ごす事はできません。引き留めないで下さい」


 そう言いながら、ビスタルクとブルームは馬車から出て行く。

 正直なところ、この冒険者2人組にはあまり期待していない。

 それでも、護衛の依頼を放棄して、勝手に出て行くとは思わなかったよ。


「まったく、あの2人は何を考えているのでしょうか……。とりあえず、ここに居ると危険なので、クルテン市へ引き返しましょう」

「儂もアクアリーナ嬢に賛成だな。出来るだけ早く、この地から離れるのが良いだろう」


 私とシェリスも賛成なので、うなずいて返す。

 とにかく、身の安全が第一だ。


◇◇◇


 ビスタルクとブルームが出て行った後、急いでクルテン市へ向けて引き返した。

 そして、サイロンの出口に差し掛かった頃、悲鳴が聞こえる。


「ギャー」

「こっちへ来るな、助けてくれ!」


 とても嫌な予感がする。

 馬車から顔を出すと、百メートルほど先で惨殺シーンが展開されている。


 そこには、街の住人だったと思われる十数人の遺体がある。

 力任せに殺されたのであろう、どの遺体も首や手足が変な方向に曲がり、血の池を作っている。

 そして、その惨殺シーンの中では、角を生やした2メートル以上の巨躯を持つ巨人が、5体ほど佇んでいる。

 あの角を生やした巨人が、オーガなのだろう。


「ダリウスさん、急いで反転を!」

「ダメだ、馬が怯えて動かない!」


 オーガ達に見つかった様で、こちらへ迫ってきている。

 このまま何もしなければ、ここで殺されてしまうだろう。

 野犬にすら勝てない私だが、シェリス達を守るためには、ここでオーガ達を倒すしかない。


「シェリス、オーガが迫ってきています。私はオーガを迎え撃つので、馬車の事は任せました」

「セト……気を付けて」


 馬車の中はシェリスに任せて、私は外へ飛び出る。

 幸いなことに、オーガ達はあまり素早くないため、多少は観察する時間がある。

 オーガ達の中で、ひときわ体格の良いオーガの情報を確認しよう。


――【ステータス】


【魔物のステータス】

  【名前】 タカオ

  【性別】 オーガキング

  【年齢】 19

  【職業】 鬼族の王

  【体力】 280/280

  【魔力】 20/100

  【腕力】 85

  【俊敏】 15

  【知力】 20

  【器用】 75

  【状態異常】 異常なし

  【能力】 【ステータス】Lv7、【身体強化】Lv6、【火炎魔法】Lv7


 どうみても、今回の騒動の原因だった。


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