表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/58

13.魔導ギルドでの初仕事 1

 1~2話程度にするつもりが、4話になってしまいました。

 という事で、1時間毎に計4話投稿します。

 魔道ギルドへ加入した翌日、私はとある問題に直面していた。


「シェリス、困った事があります」

「何かあったの?」

「このまま何もしなければ、1週間で生活費が尽きてしまいます」

「え、何でそんなに切羽詰まっているの?」


 シェリスが凄く軽い感じで聞き返してくる。

 さすが、元引きこもりの暗黒神様、原因の半分が自分にある事を理解できていない様だ。


「元からあまり余裕が無かった上に、扶養者が一人増えたので、財布が厳しいです」

「うっ、それは出て行けって事……?」


 シェリスは、捨てられた子犬の様に目を潤ませながら聞いてくる。

 さすがに、私はそんなに鬼じゃない。


「さすがに、そんな事は言いませんよ。ただ、仕事を手伝って欲しいかな、と思います」

「あ、そういう事ね。アタシに出来る事なら手伝うわ!」


 何とか、仕事を手伝ってもらえる様だ。


 まずは、【暗黒魔法】の詳細を報告書にまとめ、魔導ギルドへ提出しようと思う。

 私の使える能力を魔導ギルドへ伝えないと、仕事を斡旋してもらう時に職員が困るからね。


 その後、シェリスに手伝ってもらい、【暗黒魔法】の報告書を半日で仕上げた。

 シェリスは【暗黒魔法】の熟練者だけあって、【ステータス】の表示よりも随分と詳しく使い方を知っていた。

 ただ、【暗黒空間】が【アイテムボックス】の代わりになる事には、気づかなかったらしい。


「【暗黒空間】が【アイテムボックス】に間違われた話を聞いて不思議に思っていたけど、そんな使い方は気づかなかったわ……」


 どうも、シェリスは【アイテムボックス】が使いたくて【空間魔法】を自力習得したらしく、落ち込んでしまった。

 シェリスが落ち込む所なんて見ていられないので、その日の午前はシェリスを慰めるために費やした。


◇◇◇


 午後になってシェリスが落ち着いたので、報告書を提出するために魔導ギルドへ行く事にする。


「ようこそセトさん。昨日は慌ただしくて挨拶もできず申し訳ありませんでした。私は受付のカルナと申します」

「いえ、こちらも急ぎの用があり、ご挨拶しないまま出て行った事、申し訳ありませんでした」


 昨日は、シェリスと商業ギルド対策の事で、私にも余裕が無かった。

 これはお互い様だね。


「あら、急用でしたか。ところで、本日はどの様なご用件でしょうか」

「私の使う【暗黒魔法】について、報告書にまとめましたので提出に来ました」

「それでしたら、まずはギルド長へ報告する様に指示されております。すぐにご案内しますね」


 そう言われ、そのままギルド長室へ通される。

 ギルド長へ報告している間、シェリスは魔導ギルドへの加入手続きをするらしい。

 ギルド長室へ入ると、テリオルギルド長が機嫌良さそうに待っていた。


「セト殿、【暗黒魔法】の報告書についてだが、これまで記録に無いLv10能力ということで、研究部門で扱いたいと思っている。 もちろん、研究部門への貢献として報奨金を出すつもりだが、構わないかな?」

「はい、もちろんです」


 報告書の重要性について詳しく聞いた所、前代未聞のLv10能力について書かれているため、どの国も欲しがる重要資料との事だ。

 報奨金についても、かなり高額になると予想でき、期待して良いそうだ。

 ただ、審査に1週間以上掛かるため、報奨金の支払いまで少し時間が掛かると言われる。


「了解しました。報奨金を頂けるまでの間、何か依頼を受けようかと思いますので、斡旋部門にも情報を開示して頂けると助かります」

「斡旋部門については、この報告書の複写を持たせるので、心配しなくていいぞ」

「なるほど、それならば安心です。報告書の扱いについてはギルド長へお任せしますので、よろしくお願いします」


 報告書の扱いが決まったので、お礼を言った後、ギルド長室から退室する。


◇◇◇


 ギルド長室を出た後、何か依頼を受けようと思い、受付へ行く。


 受付へ近づくと、妙に受付が騒がしいことに気づく。

 また誰かが暴れているのかと思っていると、受付嬢のカルナさんが声を掛けて来る。


「あ! セトさん、お待ちしていました」


 どうやら、私に何か用があるみたいだ。


「カルナさん、何かありましたか」

「はい。【アイテムボックス】持ちへの緊急依頼が2つ同時に来ているのですが、どちらか一方を受けて頂けないでしょうか」


 なるほど、それなら私を探す理由も分かる。

 【暗黒空間】が【アイテムボックス】の代わりになる事は、もう伝えてあるからね。

 受付が騒がしかったのも、他の【アイテムボックス】持ちギルド員を探しているのが原因の様だ。


「緊急依頼との事ですが、まずは依頼内容を教えて下さい」


 カルナさんの説明では、王都からクルテン市への緊急輸送依頼が2件同時に発生したらしい。

 クルテン市は、王都から馬車で4日ほど離れた場所にあり、鍛冶の盛んな都市だ。

 そのクルテン市と王都を結ぶ街道で、魔物が頻繁に出現するようになり、現在は交易が途絶えた状態との事だ。

 生産ギルドと商業ギルドが大被害を受けていて、それぞれのギルドから緊急依頼が来ているそうだ。

 昨日、生産ギルドで【空間魔法】について質問されたのも、この緊急事態が関係しているのだろう。


「このような依頼は、頻繁にあるのでしょうか」

「いえ、今回の様に交易が途絶えた場合のみの依頼です。そもそも【アイテムボックス】持ちが少ない上に緊急依頼とあっては、報酬が高額でも引き受けられない事が多いのです」


 報酬は金貨20枚で、旅費は依頼主が負担するそうだ。

 また、護衛として冒険者が随伴するらしく、道中の安全は確保される様だ。

 確かに、依頼の内容からすると、破格の待遇と言って良いと思う。

 受付のソファでくつろいでいるシェリスにも、意見を聞いてみよう。


「シェリスはこの依頼をどう思いますか?」

「アタシ? アタシはセトに付いていくわ」


 シェリスから、何とも嬉しい言葉が返って来る。


「カルナさん、シェリスが随伴しても良いでしょうか」

「はい、随伴は1名までなら依頼主が旅費を負担するそうです。シェリスさんの会員証は明日の朝までに作れるので、共同で受注という事にしておきましょうか」

「ええ、それでお願いします」


 ここは自腹を切らずに済んで、非常に助かった。

 もし、シェリスの旅費を出すとなったら、借金する運命だった。


「それでセトさん、生産ギルドと商業ギルドのどちらにしますか?」

「生産ギルドの依頼を受ける事にします」


 生産ギルド長には、緊急時に力になると約束したからね。

 それに、商業ギルド長とはいささか揉めたので、しばらく商業ギルドの依頼は受けたくない。


「それでは、手続きをしておきますね。今後につきましては、明日の朝に生産ギルドで指示を受けて下さい。それと、シェリスさんの会員証の受け取りも忘れないで下さいね」

「わかりました」


 これで、当面の生活資金は安心だ。

 後は、しっかりと依頼をこなすだけだ。


◇◇◇


 クルテン市への輸送依頼を受け付けた後、旅の準備をしようと思い市場へ出かける。


「シェリス、クルテン市へ行く旅の準備として、昼食の食材を買おうと思います」

「どうしてなの? 旅に必要なものは全部生産ギルドが用意するでしょ?」


 私も最初はそう思ったけど、レニス市から王都への馬車旅を思い出し、確認したら想像した通りだった。


「生産ギルドの用意する昼食は、全部携帯保存食なのです。嫌なら持参して良いと言われたので、パンやおかずを【暗黒空間】に入れておいて、昼食にしようかと思いました」

「保存食は食べた事無いけど、セトが嫌がるならよっぽど不味いのでしょうね……」

「不味い訳では無いですが、1食ですぐ飽きると言えば伝わるでしょうか」

「それなら、お弁当を買うのに賛成!」


 さすがに弁当は売っていなかったが、パン、スープ、串焼きやフルーツといった、すぐ食べられる食材を中心に買う。

 【暗黒空間】に入れておけば、作り立てを味わえるので、今から楽しみだ。


「そういえば、魔物に襲われると野宿になるかもしれないので、シェリスの毛布とかも買っておきましょうか」

「あ、それは不要よ。【マイルーム】の中にベッドがあるの。野宿する時は【マイルーム】に入ってベッドで寝るわ」


 シェリスが自慢げに言ってくる。

 みんな野宿している間、シェリスだけがベッドで安眠できるとか、うらやましい!

 ……私も空間魔法を覚えようかと、少し本気で考えてしまう。


 この話を聞いて、宿に泊まらず【マイルーム】で過ごせば良いのではと思った。

 しかし、シェリスに聞いてみた所、街中には安心して【マイルーム】を使える場所が無いので、それは最後の手段だと言われてしまう。

 最後の手段なら仕方ないね。


 結局、食材に加えて、野営で使う鍋や食器を購入し、宿屋ハッケイへ帰った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ