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10.生産ギルドと商業ギルド

ちょっと長いので3話に分けました。

本日の投稿1/3です。

 王都プロイデンに到着した翌朝、まずは生産ギルドへ行くことにする。

 暗黒魔法が生産ギルドで活躍できるとは思えないが、何か収穫があるかもしれないので前向きに話を聞こうと思う。

 受付で事情を話すと、しばらく待たされた後、ギルド長室へ案内される。


「ようこそ、セトさん。私は生産ギルド長のジーニアです」


 そう挨拶されたのは、50歳ほどの物腰静かな女性ギルド長だ。


「初めましてジーニアギルド長。異世界から参りましたセトです」

「ギルドの説明に入る前に、単刀直入にお聞きします。セトさんは【空間魔法】が使えますか?」


 ギルド説明の前に空間魔法の有無を聞かれるとは、人気が計り知れないね。


「いえ、残念ながら私が使える魔法は【暗黒魔法】のみです」

「そうでしたか。生産ギルドは異世界人からの人気が無く、これまで生産ギルドへ加入された異世界人は、【空間魔法】使いのアキトさんだけなのです」


 ジーニアギルド長は、残念そうに答える。

 確かに、異世界人が転生特典ギフトを使いこなしつつ生産活動に人生を費やすというのは、なかなかイメージできない。


「なるほど、そういう事ですか。もしかして、アキトさんは魔導車や草刈り機を開発された方ですか?」

「そうです! アキトさんは名声や魔物討伐には目もくれず、この世界の発展に尽力して下さいました。この世界へ貴重な技術を残して頂いた、数少ない異世界人の一人なのです!」


 話しぶりからすると、もう亡くなっている様だ。

 アキトさんの発明に興味あったが、ここは商業ギルドの話を聞くのが優先だろう。


「やはりそうでしたか。アキトさんのおかげで、快適な馬車旅を満喫できましたよ。ところで、生産ギルドについて教えて頂けないでしょうか」

「そうですね、生産ギルドは農業・鍛冶・裁縫・細工・食品加工といった部署に分かれていて、それぞれの部署で資材の共同調達や技術の共有を行っています。ただし、販売については独占に繋がることから、一切関知しません」


 なるほど、生産ギルドは日本で言う組合とほぼ同じ組織だ。

 色々と細かい話をしてもらったが、元SEで暗黒魔法使いの私が加入しても、出来ることは少ないな。


「ご説明ありがとうございます。申し訳ない事に、元の世界では農家や職人では無かったため、生産についての技術を持っていません。ですから、私ではあまりお役に立たないかと思います」

「そうですか、それは残念です」


 ネット上で仕入れた知識はあるけど、経験が伴っていないと役に立たないと思うので、伝えないでおくことにした。

 ネット知識で付け焼刃して役に立たない場面なんて、SE時代にいくらでも見かけたからね。

 ただ、【アイテムボックス】については代替の魔法があるので、それは伝えても良い気がする。


「ジーニアギルド長に、1つだけお話しておきます。私の使う暗黒魔法の中には、【暗黒空間】という【アイテムボックス】に似た魔法があります。緊急時にはお役に立てるかもしれませんので、覚えておいて頂ければ幸いです」


 そう言いながら、【暗黒空間】から背負い袋を出し入れして、実演する。


「確かに【アイテムボックス】そっくりの魔法ですね。【アイテムボックス】持ちは本当に少ないので、覚えておきましょう」


 それから少し世間話をした後、丁寧にお礼を言って退室する。


◇◇◇


 昼食を摂った後、最後に残った商業ギルドへ行く。

 商業ギルドは、冒険者ギルドや生産ギルドと比べると小規模で、レニス市の魔導ギルドほどの大きさだ。

 商業ギルドの受付で名乗ると、すぐにギルド長室へ案内された。


「ようこそ商業ギルドへ。私が商業ギルドのギルド長、クランディオだ」


 そう挨拶してくるのは、柔和な顔つきをした60歳前後の男性だ。

 しかし、こちらを窺う瞳は鋭く隙が無いので、気を引き締めて行こうと思う。


「初めまして、異世界人のセトです。本日はお時間を取って頂きありがとうございます」

「まずは、商業ギルドの説明からしておこうか。商業ギルドは、他のギルドと違い相互扶助は目的としていない。異世界人に分かりやすく言うなら、商業権を販売する組織だな」


 なるほど、国益に叶うよう、商人達をルールに従わせるのがギルドの目的か。

 ルール違反をするとギルドから強制退会になり、商業権を失うという仕組みだろう。


「なるほど、商人をルールに従わせる事が目的なのですね」


 そう答えると、何故かクランディオギルド長の目が大きく見開かれる。

 柔和な顔で瞳だけ動揺するとは、見ていて少し気持ちが悪い。


「まあそういう事だ……」


 少し残念そうな口ぶりからすると、ギルドの説明を端折らせてしまったらしい。


「一つ質問だが、セト殿は【空間魔法】は使えないのか?」


 また【空間魔法】か!

 一体どれだけ人気なのだろう。


「残念ながら、私が使える魔法は【暗黒魔法】だけです。他のギルドの皆さんも【空間魔法】を気にされていましたが、需要は大きいのでしょうか」


 そう返すと、クランディオギルド長は凄い勢いで【空間魔法】について力説し始めた。

 話を要約すると、【アイテムボックス】やその上位互換の【マイルーム】、さらに【ワープゲート】まで使えるならば、物資を迅速・安全・安価に運べ、商人としての成功は約束されている、という内容だった。

 特に【マイルーム】や【ワープゲート】が使えるならば、人員や家畜等も運べるため、その価値は非常に大きいとの話だ。


  ・【空間魔法】Lv5 【アイテムボックス】 幌馬車10~20台程度の容量を誇る格納庫。出し入れに魔力が必要。

  ・【空間魔法】Lv6 【マイルーム】    亜空間の『部屋』へと通じる扉を作り出す。『部屋』には生命体を格納できる。

  ・【空間魔法】Lv9 【ワープゲート】   一瞬で長距離移動できる門を作り出す。


 確かに、これらの魔法が使えれば、商人としてのアドバンテージは計り知れない。

 しかし、現状の私には商売の伝手がない。

 このまま商業ギルドに加入しても、大商人の下で忙しい毎日を送るだけの人生になりそうだ。

 それだと、わざわざ転職させてもらったのに、平和でのんびりした生活を送れない!


「ところで、セト殿よ。この世で何より大切なのは誠実さだとは思わないか?」


 瞳を怪しく光らせながら、クランディオギルド長が切り出す。

 一体、何を言いたいのだろうか?


「本当のところ、セト殿が【空間魔法】を使えるのは分かっている」


 私は【空間魔法】の能力を持っていないのだが、何かの駆け引きだろうか。


「我々の調査では、レニスから王都の馬車旅で、セト殿が【アイテムボックス】を使った事は確認済みだ。国の機関である我々に対して嘘をつくとは、いささか誠実さに欠ける行動だと思わないかね。王家への報告も視野に入れねばならんな」


 どうやら、クランディオギルド長は少々面倒なタイプの様だ。

 SE時代に何度か見たが、相手の弱みに付け込んで、有利な契約をねじ込む営業と同じ顔をしている。

 王家への報告を脅しに、自分の手駒としてこき使おうという魂胆が見え見えだ。

 まあ、ただの勘違いなので、恐れる事は何も無いけどね。


「とても残念なお話ですね。私の使う暗黒魔法の中には【アイテムボックス】に似た【暗黒空間】という魔法があます。そして、レニスから王都への馬車旅で何度か【暗黒空間】を使用したのは確かです。ただ、この【暗黒空間】については、防衛隊のレオナルフ殿へ事前に報告しています」

「そ、そうか。それで、その【暗黒空間】とはどういった魔法なのだ?」


 クランディオギルド長が顔を少し赤らめながら聞いてくる。

 これ以上付き合うのは疲れるし、所属先も決めたので、少し意趣返しさせてもらおう。


「暗黒魔法の詳細につきましては、近日中に魔導ギルドから発表があると思いますので、そちらでご確認下さい」

「なっ!」


 クランディオギルド長は、顔を真っ赤にしながら何も言えない様だ。

 異世界人を魔導ギルドへ逃した挙句、脅迫したという事実が残り、盛大に自爆したことに気づいたのだろう。

 さて、これ以上は時間の無駄なのでお暇させてもらおう。


「それでは、本日は商業ギルドの説明を頂きありがとうございました」


 クランディオギルド長は何かを言いたそうにしているが、事務的な謝礼を言った後は即座に退室する。


『ネット知識で付け焼刃して役に立たない』というのは、実際に小説を書いてみてとても実感しました。

私にとって小説を書くというのは思った以上に難しいです、はい。

面白い小説かどうかは別として、まずは小説を書いて、投稿して、経験を積む事にしました。

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