14 二人の少女
「そうか、受けてくれるか」
「それでは、私が足手まといではありませんか」
さっきまで空気だったエマさんがそう言った。
「そうは言ってもなエマ、貴族とは優秀な冒険者を使って、箔を付けるものなんだよ」
「それでもです」
「あの、エマさん俺は別にいいのですが」
「アキラ様は黙ってて」
「はい......」
素直に黙ることにした。
「エマ、少しこっちにきなさい」
エマさんのお父さんは急にエマさんを呼びつけ、耳下に何かを言っている。それは俺には聞こえないが、エマさんは何か納得したような顔になっているので、了承したのだろうか。
「アキラ様。宜しくお願いしますわ」
そして急にokした。お父さん何した......
「改めて、よろしくエマさん」
「それではアキラくん、用意が出来しだい、迎えの馬車を送るよ」
「迎えは要りません。街を見ながら行きたいので」
馬車は便利なのだが、車みたいに楽な訳がなく、揺れが激しいため尻が痛くなるし、気分が悪くなるのだ。
「それと王都への道の馬車も要りません。エマさんが迷宮で直ぐにバテてもいけませんし、慣れて頂くため歩いて行きます」
本当は俺が乗りたくないだけなのだが、エマさんの為みたいな言い訳をする。
「それもそうだな」
言い訳が通ったようだ。
エマさんが何やらブツブツ言っていた。
「(アキラ様はわたしのことを思ってくれるのね)」
「どうしました、エマさん?」
「ひゃいっ。何もありません」
何故かエマさんは変な返事を返してきた。
「俺は今日はこれで」
さすがに今日は疲れたので帰ることにした。
「今日は送らせてもらおう」
道も分からないし、疲れているので送って貰う。まあ、馬車だから結局疲れるのだが。
~その帰り道~
がたんっ
大きく馬車が揺れ止まった。
「どうしたんですか?」
「アキラ様すみません、いきなり少女が出てきまして、今すぐどかせますので」
「ゆっくりでいいですよ」
「アキラ様は優しい人なのですね」
メイドは少女をどかしにいった。しかし、なかなか帰ってこないので、様子を見に行った。
「どうしたんですか?」
そこには、少女が二人いて、片方は足に怪我をしていた。
「どうやら骨折したそうで......」
馬車にびっくりして転けて骨折したそうだ。俺は少女に声をかけてみる。
「大丈夫か?」
怪我をしてない方の少女が答えた。
「すみません、今すぐどきますので、お許しください」
俺を貴族だと思っているらしい。
「俺は貴族でもなんでもないから安心しろ。それより、そっちの彼女は大丈夫なのか?」
「骨が折れただけで、重症じゃないので大丈夫だと思います」
骨が折れたら十分重症だと思うが、こちらの世界では、治癒力も違うかもしれないし、大丈夫なのかもしれない。俺は大丈夫だと思わないので、治療する為に前から試していた〈スキル造り〉をしてみる事にした。
読んでいただきありがとうございます。