4.魔法を使ってみましょう
ガイドに転移をしてもらった俺。
転移の影響で先程までいた洞窟の中とは全く違う景色が目の前に広がっていた。
先ほどまでの洞窟の中のように薄暗くなく、日が差し込んで明るい森の中にいるようだ。
俺は早速立ち上がり、森の中を探索することにした。
少し歩くと、先の方から物音が聞こえる。
『ソールさん、何か魔物がいるかもしれません。魔物のステータスを確認してみて下さい』
『え? まだ目で確認もできていないのに使えるのか?』
『はい。自分以外の生物や物の情報は【観察】で確認できるのですが、ソールさんの【観察】は最大レベルですから。それ位のことは朝飯前ですよ。ちなみに相手がいる辺りを意識すれば使えます』
そういえば確かに最大レベルまで上げたっけな。
何の努力もしていない、というかほとんど使ったことすらないから実感湧かないわ。
まあ便利なことは良いことなんだけどさ。
とりあえず【観察】を使ってみよう。
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ワイルドボア lv1
HP 18/18
MP 1/ 1
攻撃力 12
防御力 8
魔法攻撃力 1
魔法防御力 2
素早さ 9
スキル
突進lv1
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なるほどな。
lv1だからか、俺よりもちょっと高い位のステータスだ。
……ってこれ、俺に勝ち目なくね?
lv1の魔物でこれじゃ、俺、この世界で生きていけないだろ。
『大丈夫です。戦いに必要なスキルは揃えておきましたから、安心して下さい!』
『戦いに必要なスキル……【剣技】は剣を持っていなくて使えないだろうから炎魔法を使うということか?』
『その通りです! きっと美味しい肉の丸焼きができますよー! あっ、魔物の姿が見えましたよ!』
すると確かに魔物が茂みから出てきたのが見えた。
辺りをキョロキョロと見渡している。
見た感じ、イノシシみたいだな。
焼いて食ったら、それなりに美味いんじゃないだろうか?
こちらにも気が付いていないみたいだし、今がチャンスかもしれない。
『確かにチャンスです。では早速私が炎魔法の使い方の説明をしますね!』
『ああ、よろしく頼む』
『ではまず炎のイメージをして下さい。その次に相手を意識して、その相手に手のひらを向けて炎をぶつけるイメージをしましょう。そうすれば炎魔法lv1【ファイア】が使えます』
それだけでいいのか。
何か難しい詠唱でもするのかと思ったけど、それなら俺でもできそうだな。
なら早速やってみるか。
炎を意識して、それをイノシシにぶつけるっと。
ブゴォォォ!!!
俺の手から勢いよく炎が噴き出された!
その炎がイノシシに襲い掛かり、イノシシはあっという間に絶命する。
いや、倒したのはいいけど、これはやり過ぎじゃないか?
イノシシ黒焦げになってるぞ?
それに今更気付くのが遅いけど、一歩間違えたら火事になるよな!?
ここ、森の中だしさ……
『火事の心配はありませんよ! 自分の魔法の炎は自分の意志で消せますので』
『そ、そうなのか、便利なものだな』
『当たり前です。もし火事を気にして使えないような魔法なんか私がすすめる訳ないじゃないですか!』
ま、まあ、そうだよな。
もし火事を気にする場所で使えないとなると使い勝手が悪すぎる。
そんな魔法をすすめるようじゃガイド失格だろう。
まあその心配はなさそうだけど。
『ところでせっかく倒したイノシシは食べないんですか? お腹が空いたのでしょう?』
『あっ、そうだった! でもこのイノシシ黒焦げだしな……』
『それは大丈夫です。ちょっと焦げの部分をとれば熱々に焼き上がった身を食べることができるはずですよー』
そうなのか?
とりあえず文句を言っていても仕方ないからイノシシを食べるとしよう。
ガイドの言う通り、焦げを少しはらってみる。
すると焦げの下にはほどよく焼かれた美味そうな肉が見えてきた!
『おおっ!? これは美味そうだぞ!』
『お分かりいただけました? その肉をガブッと豪快に食らいついちゃってください! あっ、その前に結界魔法を張っておいて下さいね』
『結界魔法って何だ?』
『あっ、説明してなかったですね。えっとつまり、肉の匂いにつられて他の魔物がよりつかないようにするんです。結界を張りたい範囲とあとはそこを覆うイメージをしていただければ結界魔法は使えます』
そうだったな。
肉を焼いた良い匂いをさせていたら、他の魔物が寄り付いてくるに決まっている。
せっかくの食事なのに、その最中に他の魔物に襲われて死亡なんてシャレにならない。
という訳で、俺は自分の周辺を意識して、そこを覆うようなイメージをしてみた。
すると、その指定した範囲に薄い緑色の膜みたいなものが覆いかぶさった!
『おめでとうございます! 結界魔法、無事成功です!』
『おっ、そうか。ならもう肉食ってもいいか?』
『どうぞどうぞ、お好きなだけお召し上がりください!』
腹が減った俺は夢中でイノシシの肉にかぶりつく。
これが結構美味い。
味付けとか一切ないけれども、腹が減っていたからか、あまりそういうことは気にならなかった。
結局俺はあっという間にイノシシをほとんど平らげてしまった。
『いい食べっぷりでしたねー。結構大食いなんですか?』
『いや、そんなことはない。食べようと思えばそれなりに食べることができるというだけだ』
『そうなんですね。で、これで食に関しては満足できましたか?』
『ああ。ちょっと味気なかったからもっと調味料使って味付けしたいところだったが、とりあえず腹は膨れた』
まあ別に調味料はあったらさらに良いという感じで、なくても大丈夫だった訳だけどな。
『それは良かったです。調味料に関してはお金が貯まったら買いましょう。もう少しの辛抱ですよ』
『お金が貯まるまでか……この世界でもお金がないと色々と不便なんだな』
『そうですね。あっ、そういえばソールさんが少し食べ残したそのイノシシ、収納魔法でしまいこんでおきましょう! 素材として売ればちょっとしたお金になると思いますよ!』
おお、魔物の素材がお金になるのか!
そうなると、魔物を倒していけば自然とお金が貯まりそうでいいな。
俺はガイドさんに方法を教えてもらいながら収納魔法を使い、イノシシを謎の空間にしまい込んだ。
ちなみにこの収納魔法で発生させた謎の空間では、時間が停止しているらしい。
なので中に入っている物は腐敗することはなく、食料の保存にも使えるのだとか。
なかなか便利なスキルだよな。
『お腹もいっぱいになったことですし、周囲を探索してみませんか? 色々と発見があって楽しいと思いますよ!』
そうだな。
ここでじっとしていても仕方ないし、辺りを散策してみるとするか。