大好きな君へ
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初めて会ったとき、君はとても小さくて両手のひらにおさまるサイズだった。
けれどいつの間にか両腕で抱えるほどの大きさになっていたね。
お手、おすわり、ふせはお兄ちゃんが教えたけれど、最近はご飯が早く食べたくて、はぐはぐと待てずに、けれどおいしそうに食べていたね。
階段を上ることを教えたのは私だけど、降りることはできなくて、上ってはクーンクーン鳴いて助けを呼んでいたね。
雷は嫌いで怖いくせに、強がって鳴いてばかりで。病院でも注射が痛いくせに、一鳴きもしなかった。本当にえらくて感心しちゃった。
でもね、まだ君は十歳しか生きてなかったんだよ。九月二十五日で誕生日を迎えて、十一歳になるはずだった。
でも君は八月三十日に私の腕の中で旅立ってしまった。
犬を飼おうと決めたとき、君を選んだのは私だったんだよ、知ってる?
最初に抱かせてもらって、そして最期を抱いたのも私。
君は私と出会えて幸せだったのかな。幸せだったら、いいな。
君が入院する二日前。腰が痛いのに無理して二階への階段を上がってきてくれたね。口では上がってきてだめでしょ、腰が悪いんだからと言ったけれど、本当は嬉しかったんだよ。
腰が悪くなる前、散歩禁止って言われて最期に一緒に散歩したのパパでもママでもなく私だったね。それが最期の散歩になっちゃた。もっと、一緒に散歩したかったな。
そして一日前。腰の病気じゃない他の原因で急に君はすごく弱ってしまった。でも、夜寝る前に、いつもは絶対にパパとママと一緒のベッドで寝ている癖に、動かない後ろ脚を必死に動かして、だるい体を引きづって、私の部屋まできてくれたね。君のあの時の一生懸命な姿は一生忘れない。あのとき君はもう、私の部屋に来ることができない、自分はもう長くないってわかってたのかな。
そして入院当日。病状は悪化を辿る一方で病院の原因は不明、臓器が全部悪くなっていて一刻を争う状態だった。そのまま入院することになってしまって、つらい点滴も注射もよく我慢したね。その夜に中々帰ってこれないお兄ちゃんとお見舞い行った時は辛かっただろうに、僕は大丈夫だよって言うみたいに立ってこっちを見てくれた。君が頑張っているのに、私ばかり泣いちゃってごめんね。
次の日。私がバイトしている間、ママが君をお見舞いしに行ったって言ってたよ。そのときも立って歩いてくれたんだってね。ママがとても嬉しそうにしていたよ。けれどその日の夕方体調が悪化してしまって、心臓が少しずつ動かなくなってきた。その電話が病院からかかってきたとき、本当に私の心臓が止まるかと思った。本当はその日、皆用事があったはずだったんだ。ママは習字の先生、パパは残業、私はバイト、お兄ちゃんは医者という仕事。でも、君は皆の都合を全て神様に頼んだかのように無くしてくれたね。ママの習字教室は予定より十五分早く終わって、パパと電話してた。その時に病院から君が危ないってかかってきたから、パパは残業をやめて帰ってきたんだってさ。お兄ちゃんも本当は県外へ研修に行くはずだったのに、なぜか急にキャンセルになっちゃったんだって。そして私はバイトが六時まであったのがその日は三時で終わることができた。本当、奇跡に近いことだと思うよ。
着いたとき、君はまだ息をしていて、皆が間に合ったんだ。一パーセントでも君が助かる可能性があるなら、お医者さんに頼みたかったけどもう駄目だってわかっちゃったから。もう一度君と一緒に過ごしたあの家へ帰りたかった。
そして、家についたと同時に君は安心したのか旅立ってしまったね。
ずっと車の中で、私が君のこと抱いていたんだよ。隣でママが運転席でパパが、別の車で急いで仕事先から直行したお兄ちゃんがずっと声をかけていたの知ってる?
本当に、本当に君と過ごした十年間幸せだったよ。
けど、けれどもう少し君と一緒にいたかったな。ご飯を一緒に食べて、一緒に遊んで、一緒にいつもみたいにソファでお昼寝したかったな。
君の声、君の顔、君の触り心地、君の癖、君の匂い。どれも好きだった。もっと一緒に痛かったよ。せめてあと五年は一緒にいたかった。
飼い主のくせに、声を聞いてあげることができなくて、できることはお医者さんに見せることだけで、本当に本当にごめんね。
そして君が死んでしまって今日。火葬場へ行く前に車で皆そろっていつもの散歩コースをぐるっと一周したね。君は見えていたのかな。
火葬する前、御経を唱えてたけどそのとき、君の名前をお坊さんが様付けで呼んでいたの聞こえていた? 私は君はやっぱりちゃん付けで呼んだ方が君らしいってずっと思いながらそれを聞いていたよ。
そして立会火葬。待っている間、君が熱くて鳴いてるんじゃないかって思った。だから車の中で何度も何度も君を小さくゆすった。寝てるなら早く起きて欲しかったから。本当に君の顔は眠っているかのようだったんだ。
それが終わってしまって骨だけになってしまった君。あぁ、本当にもういなくなってしまったんだって思った。私はまだどこかで生きて元気にかけよってくるんじゃないかと思ったんだろうね。本当はね、骨は家に持って帰らずに全部埋めてあげようと皆が言ってたんだ。でも止めたのは私。だって、君とまだ離れたくなかったから。だから少しだけ持って帰ることになったんだ。本当は全部持って帰る予定だったんだけど、大きな台がないから、置く場所がないって話になって。だから全体から少しだけ。君の一部を持って帰ることにした。ママがね、言ってたよ。君はさびしがり屋だから、君だけのお墓を立てるんじゃなくて皆と一緒のところに、合同墓地って呼ばれる場所に埋めてあげようって。そうしたら君は寂しくないだろうからって。
家に帰ってきたら、いつも出迎えてくれるはずの君がいないからしんとしていた。扉を開けてもかけよってくる君の姿はなくて。でも、数日前まで君が使っていたトイレシートや君の部屋、ベッドやお気に入りのクッション、餌皿は置いてあるんだ。ご飯だってまだ買ってきたばかりだった。君の大好きなご飯だって用意してたんだよ。
見ているだけで泣いちゃった。最期まで笑って送ってあげられなくてごめんね。でも今まで本当にありがとう。
一緒にソファで転がりながら私が一方的にだけど、話していても最後まで聞いてくれたね。君だけなんだよ、私が何でも話せた相手って。
なんでだろうな。九年間、一緒に過ごすことが当たり前でずっと写真なんか撮ってなかったのに、今年になってから急に私は君の写真がいっぱい欲しくて、写真をいっぱいとった。どれもどんな時にとったのか、覚えているよ。
君はもしかしたらそのときから、私に教えていてくれたのかな。
写真を見ると思いだして泣いちゃうし、君のいるリビングにだって、君との思い出がありすぎて泣いちゃう。
でも泣いちゃばかりじゃ君は嫌だよね。
でも、今だけは、今だけは君を想って泣くことを許して。
こうやって書いてる間も泣いていることを許して。
いつか必ず、前を向いて笑って見せるから。
大好きな君へ。