リスと僕
冬の童話参加作品です。
雪の降る夜、狐は山を歩いていた。
狐は孤独だった。
友達はいない。
両親もいない。
生まれたときから、一人ぼっちだった。
今まで必死に生きてきた。
生きる意味を何度も考えた。
答えは出なかった。
それでも生きてきた。
しかし、限界が訪れた。
食べ物はない。
寝床は川の増水で流された。
もうダメだと思った。
崖の上に登って、下を見る。
全てがちっぽけに思えた。
自分が生きていることまでも。
最後の一歩を踏み出そうとした。
その時響き渡る、鳴き声。
振り向くと、増水した川で小さなリスが溺れいた。
植物にしがみついていた。
必死で抗っていた。
あんなに小さなリスも、必死に生きようとしている。
それなのに僕は……
気がついたら、リスを助けていた。
そうしなければいけない気がした。
人生を終わらせるのは、まだ早いと思った。
リスも、僕も。
その後僕はリスと共に、冬を過ごした。
リスは僕になついてくれた。
食べ物は必死で探した。
今までよりも必死でできた。
なぜだろう。
その答えも、何となく分かってきた。
守るべきものがあるから。
今までは、自分のことしか考えていなかった。
だけど、今では違う。
このリスにも、両親がいない。
だから、僕が守らなければ。
ギリギリだったが、何とか冬を過ごした。
それから、春がきた。
また食べ物をさがして、山をさまよっていた。
ガシャン、という音と共に、激痛が走る。
僕は、罠にかかってしまった。
遠くから猟師の足音。
それは近づいてくる。
必死にもがくが、外れない。
遂に、猟師の姿が見える。
猟師の猟銃が火を吹く。
わき腹を弾丸が貫通する。
猟師が近づき、罠を外して足を掴む。
その瞬間、猟師に頭突きを喰らわせて、駆け出す。
乱射された弾丸が全身をかする。
それでも走り続ける。
リスの元にたどり着く。
前は自分と死のうとしたのに
今では生に執着する。
守るべきものがあるから。