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あの子が傍にいる。

作者: 寧祈

 だいぶ意味の分からない話になってしまいました。こんな小説ですが読んでやってください。よろしくお願いします。


「ねぇお母さん、ブランコ乗ってくるね」

 遠くにいる母親に向かって手を振り、幼い少女はブランコへ駆けて来た。ブランコに座っていた僕は、遊び場所をふさぐのはマズいと思い、ズボンのホコリを払いながら腰を浮かせた。少女が僕を見上げ、不思議そうに訊いて来る。

「お兄ちゃん、ブランコで遊ばないのー?」

 僕はもうすでに20歳越えしているのだが、少女のような子供には、大人も子供も関係無いらしい。

「一緒に遊ぼうよぅ」

 ぷう、と頬をふくらませる顔が、僕の記憶の底にいる『ある子供』と重なり、僕はついうなずいてしまった。

「いいよ―」


 僕には、小さな子供がいた。3歳の女の子で、名前は結。赤いスカートが似合う、我が子ながら可愛い―いや、我が子だからこそかもしれないが―娘だった。

 月並みな物言いだが、今もここに結がいたのなら、この少女のようだったのだろうな、と思う。年齢から言ってもぴったり。少女は5歳くらい、結も今頃は5歳になるはずだった。

 それは叶わなかった事なのだけれど―死んだ子の年は、いけないと思っていても数えてしまうものだ。


『お父さんっ、肩車ー』

『お母さん、誕生日にはハンバーグ食べたいっ』

『お父さん、お母さん、結はどっちも大好きだよ』


 目をつぶれば聞こえてくるような気さえする。結。たった1人の僕の娘―…。


「…ちゃん、お兄ちゃん」

「えっ?」

「お兄ちゃん、ぼぉ〜っとしてる」

 僕はやっと、少女に呼ばれている事に気が付いた。

「聞いてなかったでしょー」

「…ごめん」

「もうっ。私は『ゆい』、お兄ちゃんは? って言ったんだよぅ」

 ゆ…い?ゆい…結…?

「ど、どういう字書くの?」

「んとねぇ、お母さんが、『ゆいいつ』の『ゆい』だって」

 唯…結、とは違うか。いや、当たり前だ。だってこの子は僕の娘の『ゆい』じゃない。

「ゆい、ちゃんか。僕はね、なお、っていうんだよ。素直の『なお』」

「ふぅ〜ん、なお兄ちゃんかぁ。でもなお兄ちゃんって、お父さんっていう気がするよ」

 

『なお…お父さん…』



『お父さん、お父さん』

『どうした? 結』

『今日幼稚園でね、お父さんの絵、描いたんだよ』

 女の子らしい色使いで描かれた絵を、結は広げて見せる。

『似てる? 似てる?』

『うん、本当のお父さんよりカッコイイな〜』

『えへへーっ』

 笑う結が、眩しくて…。


『うぁーん…ひっく…』

『おいおい、どうした? 結』

 泣いている結を、よく廊下で見かけたものだった。

『お母さんが怒ったぁーっ』

『一体何をやらかしたんだ? ほら、お父さんに言ってみろ』

 そんな時、結はしゃくりあげながら、僕を見上げて言うのだ。

『お皿、割っちゃったの。お母さんの大事なお皿、割っちゃったの』

『そっかぁ、じゃあ、もう少ししたらお父さんと一緒に謝りに行こう?』

『…うん』


『お父さん、奈々子ちゃんの家に遊びに行って来るねー』

『遅くなるんじゃないぞ、4時までには帰ってきなさい?』

『はぁーい』

 結の最期に聞いた、あどけない声。

『行って来まーす』

 最期の言葉に なるなんて―…。


 横断歩道で、信号無視のトラックに突っ込まれた結は、何の抵抗も出来ずに跳ね飛ばされた。

 結の小さい身体。どれだけ痛かった事だろう。結の小さな心。どれだけ怖かった事だろう。結―…。

 気が付くと僕は、トラックの運転手につかみかかり、最後には泣き崩れていた。トラックの運転手を突き飛ばし、家内になだめられ―それでも感情は沈んだまま。


 僕が空っぽの、ただ『生き物』というだけの何かに成り下がっている間に、結の身体は焼かれ、小さな入れ物に収まった。

 その僅かな灰と骨は、土の中に静かに埋められた。あの可愛らしかった結は? こぼれるような笑顔は? 結、どこにいるんだ…?


「…お兄ちゃん?」

 僕はゆいちゃんの声で、現実へと返った。

「どうしたの? ゆいちゃん」

「…」

 ゆいちゃんは目を細めて、僕をじっと見つめた。

「なお兄ちゃん、なんで泣いてるの?」

 僕はすぐには、頬を流れる涙に気付けなかった。やがて、温かい水の粒が涙だという事を知る。

「哀しい事、あったの?」

「哀しい事…」

 結…。忘れられない、哀しい記憶―…。


「結…」


 僕はとうとう声に出して結を呼んでしまった。2年経った今でも、結が愛おしくて仕方が無い。


「お父さん」


 声がした。それが『結』の声だったのか、『ゆいちゃん』の声だったのか―…それは分からないけれど、とても優しい声だった。

 それが『結』だとしても、『ゆいちゃん』だとしても、『ゆい』は僕の傍にいる。いつだって忘れない。


「ゆい」


 自分でも不思議な、柔らかい声音だった。

 結、いつだって忘れない。 結、いつだって想ってる。 結、いつだって傍にいるよね―。

 

 前書きの通り、意味の分からない話だったと思います。『小説評価』で、ご指導お願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうもです(礼) 意味が分からないことはありませんが、ちょっと淡々としすぎてるかなと思いました。 プロローグ的な感じというか、これで終わるには物足りない感じでしょうか。 唯ちゃんと名前以上の…
[一言] とてもいい感じにまとまっていて読みやすかったです。あえて苦言を呈するとすれば、もう少し子供と父親との思い出が書かれていればなぁ、とおもいました。(あくまで個人的な感想なのであまり気にしないで…
2006/07/24 00:12 チェルシー
[一言] 泣けたけどもっと子供についてくどくても良かったかも
2006/07/23 23:25 にゃんちゅぅ
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