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 なんだ、これ。

 鬱屈とした薄暗い空間に踏み込んだ瞬間にそう思った。

 くせぇ。何の匂いだよ。思わず鼻を突く匂いに顔をしかめる。

 顔を背けてから「やべっ俺今旅芸人」という考えがよぎるけど、でもさ、そういうの抜きにして臭すぎだよ。

 王宮だろ、ここ。

「香の匂いだ。気になるかもしれんが、我慢しろ」

 横に立つオッサンに小声で呟かれる。わかったよ、失礼にあたるんだろ。

 だからってこんな空気の悪いところで芸しろってどんな拷問だよ。

 あー。でもきっと今回も報酬はたんまりとくれるんだよな、我慢するしかないよな。

 それにここで帰りますなんて言って帰してくれるわけが無い。

 しょうがないから顔を背けるのを止めて正面を向いてみる。

 煙はどうやらそちらの方から漂ってきているようで、視界に白くたなびくものが見える。その奥に人影がどうやらあるらしい。

 ここが「奥」なのか?

 祭宮と酒場で話してから約1ヶ月。

 ついにオッサンからお声が掛かって、俺はまた王宮に来ることになった。前回呼ばれた時に言われた「奥の方々」に芸を見せるために。

 で、連れて来られた訳だけれど。

 確かに前回よりもだいぶ入り組んだ道を進んできたような気がするし、ついでにだいぶ距離も歩かされた。

 だから物理的には、前回よりも奥に来ていることは間違いない。

 一体何を見せてくれるつもりなんだ、祭宮。

 芸の道具を入れた袋を握る手に自然と力が入る。

 水竜様が眠っているかどうかという情報と天秤にかけてもいいような、王宮にとってのかなり重要な何かを見せてくれるってことだろう。

 それなりの物を見せてもらわなければ、こちらの情報を明かすのに不利益が生じる。

 といっても、水竜様とお嬢に関する部分に関してはトップシークレットなわけで、正直に祭宮に教える気は全く無い。

 例えどんなものを見せられても、だ。

 これだけは俺が守らなきゃいけない最後の一線でもある。

 大概の情報はそれと引き換えに得られるものがあるならば開示しよう。

 でも、お嬢が水竜様の声が聴こえないっていう事実は水竜の神殿の根幹を揺るがしかねない問題だ。それをおいそれと、敵に成り得る人物に教える事は出来ない。それに情報を持つ人間が多ければ多いほど漏洩の可能性も多くなる。

 祭宮がその情報を手にした時、王宮の、例えば国王などに事実を伝えないとは言い切れない。

 ボンクラではない事は認めよう。けれど、それが即ち水竜の神殿にとって有益になるとは限らない。逆に俺の中では警戒すべき人物になったね。

 何で水竜の神殿においては、あんなロクデナシを演じているのか。

 姫やお嬢に丸め込めるようなタマじゃない。どっちかっていうと手玉に取れるんじゃないか、あの二人を。それなのに何故。

 そもそも、祭宮は水竜の神殿に対してどのような意図を持っているのか。

 疑い出せばきりがないが、味方になるとは限らない相手を用心するに越した事はない。

 煙い視界の中をぐるりと見渡すと、悠然と構えている祭宮の姿が見える。中央にある薄い幕に覆われた部分の手前に立っているようだ。

 オッサンの後ろを、さも緊張しているかのように静々と着いて歩く。

 祭宮がいる付近から少し離れた場所に着くと、オッサンが最敬礼をするので、それに倣うように頭を下げる。

 この間はこんな事しなかったぞ。

 頭を下げつつも視線だけは前を見据える。

「御苦労様。よろしく頼む」

 祭宮が短く告げると、オッサンは顔を上げてこちらを見る。

「先日お見せしたものを、こちらでもお見せするように」

「はあ」

 神妙な表情で告げるオッサンに対し、俺はあんまり緊張感とか無い。

 この何ともいえない鼻に付く匂いが臭くって、そっちが気になってまともに芸が出来るかどうかの方が心配だった。

 多分あの薄衣の向こう側に誰か偉い人がいるんだろう。

 それが誰かわからないし、誰とも告げられないし、薄暗い部屋の煙の中で淡々とやるかって感じだな。

 オッサンがふいっと横からいなくなり、だだっ広い部屋の中心に一人になり、昨日まで王都の街の中でやっていたのと同じ芸を始める。

 客はいるんだか、いないんだかって感じで手ごたえが無く、ちょっとした罰ゲーム気分になる。

「はーい。見えますか~?」なんて振っても無言だし。ワザを決めて決めポーズしても無音よ。

 二度とこんな仕事受けねえ。

 恐ろしく長く感じた時間が過ぎ、全ての芸を終えると、前回同様祭宮がパンパンと派手な音を立てて手を叩く。

「ありがとう。楽しかったよ」

 お世辞は結構です。

 そう思ってんなら、それなりの反応しやがれ。遣り甲斐のない。

「いかがでしたか、陛下」

 こそっと呟いた祭宮の言葉が耳を掠める。

 陛下、だと。

 煙と布に遮られた向こう側にいるのは国王?

 なんで表に出てこないんだ。こんな薄暗いところに閉じ込められ……。

 閉じ込められる?

 俺、今何考えた。閉じ込めるって誰がやるんだよ。

 大体あんなに精力的で権力欲まみれの男が黙ってこんなところに閉じこもるわけが無い。

 我が耳を疑った。

 けれど、祭宮はそのまま言葉を続ける。

「お気に召しましたようでしたら、またこのような機会をお作り致しますが」

 甲斐甲斐しくお世話しているかのような口調、態度。

 だけど国王にはそれが伝わっていないのか、返答は無いようだった。

 まあ俺の芸が気に入らなくてダンマリ決め込んでるのかもしれないけどな。

 でも一応自分の弁明の為に言いたい。俺の芸はこんな薄暗い、亡霊が出てきそうなところでやるもんじゃねえんだよ。

 お日様燦々の明るい場所でやるもんなんだ。

 観客の手拍子と歓声があってこその芸なんだよ。

 頭の中で目一杯文句を言っていると、祭宮がひょいひょいと手招きをする。

 俺?

 一応左右を見回してからもう一度祭宮を見ると、こくんと頷いて手招きをする。

 祭宮の傍に近付くほどに、匂いがきつくなっていく。

「お言葉があるそうだ」

 薄笑いを浮かべる祭宮に薄気味悪さを感じつつも、奴が引く布の端から中を伺う。

 ぞわーっと全身に鳥肌が立った。

 なんだよ、この化けモン。

 血の気も無く虚ろな瞳は俺を見ていない。宙を見据えたまま動こうともしない。

 辛うじてそれが、国王だったモノだったってのがわかるのは、身に着けている衣類の豪奢さとか頭上で鈍く輝いている王冠とかがあるからだ。

 土色の肌。落ち窪んだ目。

 何でこんな事に。誰がこんな事をしたんだ。お言葉なんて言えねえだろ、この廃人。

 視線をふいっと祭宮に移すと、例のアルカイックスマイルを浮かべてこちらを見ている。

 どうしろっていうんだよ。俺にはこれ以上対応のしようがないってのに。

 困惑していると、ボソボソと耳障りな言葉が耳を掠める。

 眉をひそめて国王だったモノを見返すと、暗い瞳がこちらを見て口が微かに動いている。

 読解不可能! 今すぐここから逃げたい!

 ぞわーっと虫が這い上がるような気持ち悪さを感じつつも、何かを言い終えたと思ったところで一礼して祭宮に視線を移す。

 もう十分だろ。俺、十分すぎるほど仕事したぞ。

「ご苦労だった」

 その短い一言で、開放されたんだという安堵感が広がってきた。

 もう二度と、例えどんなに金貨積まれても、絶対に王宮で芸なんてしない。俺は大河を越えて王宮になんて二度と来ねえ。



 祭宮には悪いとも思ったが、ここは一旦引こうと思った。

 一度他のところも回って、王宮に関わる情報じゃなくて、戦乱の被害状況とか天変地異の発生状況なんかを調べようと思った。

 係わり合いになりたくない。それが率直な感想だった。

 例えば国王のあの状況はネタとしては十分すぎる位のネタだ。

 あの国王じゃ国を動かすなんて不可能だ。これからまだ波乱が起こることも予想できる。それを神殿に伝えて事前にそれなりの対応策を練ることも出来る。

 そういう意味ではいいネタ提供ありがとうと言いたい。

 が、それ以上に触れてはいけない「穢れ」に触れてしまったようで、全身を覆いつくすような嫌悪感から離れたくなった。

 以前の情報提供者とも接触できない今、これ以上王都にいてもどんどん闇に侵食されていってしまいそうだ。

 情けねえ。何ビビってんだか。

 そう鼓舞してみても、もう足が動かなかった。

 定宿にしている安宿から足を踏み出して日中芸をやる気にもならず、夕方から飲み歩く気にもならず。

 頭の中をぐるぐると回る予想や妄想で、息苦しいくらいだ。

 明日には王都を出よう。

 宿には明朝出ることを言ってある。王都を出てどこへ行くという当てがあるわけではないが、ここにいるよりはいいだろう。

 荷物の整理をしていると、トントンと扉を叩く音がする。

「はい」

 扉の向こうの人物に返答をしたが、これといった反応が無い。

 咄嗟に枕の下から短剣を取り出し懐にしまい、足音を極力立てないように扉に近付く。

 宿の主人なら返事がないのはおかしい。

 ある種禁断の光景を目にしてしまった自分の命が狙われていないとも限らない。

 警戒しながら、そっと扉を押し開く。

「やあ、片目」

 緊張感の無い声に、逆に末恐ろしさを感じる。

 一体どうやってここを突き止めたんだ。ついでになんてタイミングで現れるんだ。

 いや、こいつに掛かったらきっと俺がどこにいても見つかってしまうんだろう。

 諦めの溜息をつくと、祭宮がにっこりと笑う。

「ちょっといいかな」

 扉の向こう側にはゴッツイのがいるけれど、そいつは入ってこようとはせず、祭宮は静かに扉を閉める。

 狭い、ベッド以外には書き物が出来る程度に机と椅子しか無く、祭宮はその椅子に腰を下ろす。

 近くに来るように手招きをする祭宮に素直に従うのは癪だか、ここで突っぱねたところで何か状況が好転するわけじゃない。

「なんですか。こんな小汚いところまでわざわざお越しになられるなんて」

「あれ、今日は敬語なんだ。片目らしくない」

 俺らしいってなんだよ。くっそー。

「一応敬意を払うべきじゃないかと思ったからですよ。だって今はあなたは俺にその身分を隠してはいらっしゃらない。周囲に誰もいない状況下で他人の目を気にする必要も無い。それならば最低限の礼儀を払うべきと思っただけです」

「ふーん。別にいいけどね」

 偉そうに(本当に偉いんだが)足を組んで腕組みをする。

 整った顔つき、印象的な心地よい声音。優雅な仕草。その全てが俺とは違っている。

「端的に言うよ。俺に雇われる気は無いか」

「は?」

 突飛な物言いに、思わず素に返る。何言ってんだ、こいつ。

「そんな話、いつ出ましたっけ」

「うん。今言った。悪いけど、今まで片目が使っていたルートは潰させて貰ったよ。もしこれからも諜報員として神殿で生活したいなら、俺と手を組まないかと言っているんだ」

 にっこりと笑っているが、脅迫にしか聞こえない。

 俺が使っていたルートっていうのは、以前まで情報源だった近衛の奴のことで、それを潰したってのは一体どういうことだ。

 コイツがやったのか? その気になったら俺くらい簡単に捻り潰してくれそうだな。王都の町外れで死体になるか、それとも人知れず山にでも捨てられるのか。

 やべ、溜息しか出てこない。

「別に俺に構うことはないでしょう。あなたは十分すぎるほどの情報源を持っているじゃないですか。俺がそれ以上にあなたのお役に立つとは思えません」

「謙遜は結構だよ」

「いや、謙遜じゃなく」

 理解できない。なぜ俺が必要なのかが。

 恐らく神殿内の様々な人間関係や出来事など仔細に報告されている事だろう。

 俺が巫女付き(補助)の一人だという事も知っているように。巫女様をお嬢、神官長様を姫と神官たちが呼んでいるのを知っているように。

「君が有能だという事は知っているよ。他の諜報員たちよりもね。だからこそ長老も君を彼女の傍に置いたんだろう」

 ふわっと笑みを見せる。その穏やかな笑みが、明らかに何か企んでますっていう雰囲気で構えずにはいられない。

「それに忠誠心。君は決して北の人々を裏切るような事をしないだろうね」

 褒め殺しに出たのか? その裏で何を考えていやがる、気味が悪い。

「北のシステムを崩壊させない為に、手を結びたい。言っている意味がわかるかな」

 さっぱりわからん。

「教本を手に入れ、身近に裏切り者がいると外部から警告の出来るあなたが俺を飼う意味がわかりません。第一、システム崩壊を防ぐなら正攻法で姫と手を結べば済む話です」

「甘いな。今回の顛末は元を正せば姫の過剰すぎるご主人への愛情だろう。今後もそのような行き過ぎが無いとは言い切れない。それを他の者に利用される可能性もあるだろう。二度とこのような事件は起こしたくないんでね」

 それはそうかもしれないが。

 だが、俺じゃなくてもいいはずだ。もっと適任がいるだろう。

「何故俺なんだ」

「こっちにとって都合がいいからに決まっているじゃないか」

 さも当然という感じで言い放たれて、がくっと肩の力が落ちる。

 そうだよな。利用するのに都合がいいからに決まっているよな。何を俺は期待していたんだ。

「こちらと北の領地を自由に行き来でき、どちらにも入り込む事が出来る。それはかなり稀有な存在だと思うけれど。違うかな」

「そうかもしれないな」

 悔しいがそれは当っている。

 どちらの内部にも入ることが出来る。

 それを証明する為に、わざと祭宮は王宮に入れる手筈と整えたのだろう。そして、あれを見せたのだろう。

「一つ聞いてもいいですか」

「何?」

「こないだ引き合わされた人は、何故あのような事になったのでしょうか」

 首をかしげ、視線を宙にさまよわせ何か考えるようにしている。意外にこれに関しては歯切れが悪いのか。

「自業自得。自分のやった事に耐え切れず奥に逃げ込み、そして薬に溺れた。それだけだよ」

 額面通りに受け取っていいものだろうか。

 俺の中では、こいつが何かをやったんだろうという考えが拭えない。

「で、そんなことはどうでもいいんだが、君たちのご主人は眠っているのかな」

 ピーンと空気が張り詰める。

 祭宮の視線が真っ直ぐ俺を貫いていて、これで目を逸らしたらそれだけで答えを言ってしまうようなもんだ。だから決して目を逸らさない。

「どうしてそんなことが気になるんです。例え眠っていたとしてもあなた方には支障は無いと思いますが」

「気になるというか、確信が欲しいだけなんだ。色々話を付き合わせるとそれが自然だなと思っただけでね」

 はぐらかそうにも本題に戻されてしまう。

 何とかそのことについては明確な答えを告げるのを避けたいのだけれど。誤魔化しきるのは難しいか。やんわりとだけれど外堀から埋められていく。

「何故そこまで知りたいのでしょうか。それはあなたの仕事の使命感からでしょうか」

「いや。個人的興味」

 はあ? なんじゃそりゃ。

「最近なんでお嬢様は自分の言葉で喋っているんだろうと思ってね。ご主人が不在なら辻褄が合う」

「自分の言葉? 言っている意味がよくわかりませんが」

 くすっと祭宮が笑う。

 嘲笑されたわけではないというのは、その笑みの質から伝わってはくるが、いけ好かない。

「一生懸命、俺に伝えようとしていたよ。自分で考えて自分の言葉で。普段なら過保護すぎるほどのご主人が、ちょっとでも彼女が躓くと、でしゃばってくるのにさ。だからご主人が不在なんだなと思っただけだよ」

 言いたい放題だな、おい。

「お嬢の命を危険に晒したくせに暢気ですね」

 思わず嫌味の一つも言ってやりたくなった。

 お嬢の説明どおりだとしたら、確かにコイツが直接何か手を下したわけじゃないってことになる。未だ神殿で言われているような毒殺説なんていうのは根も葉もない噂で。

 しかしそうだとしても、お嬢の命を軽く扱った事には変わらない。

 お嬢のっていうよりも「水竜の神殿の巫女」の命を簡単に危険に晒したことを、俺は許してはいない。例えお嬢自身がそのことを深く考えていなかったとしても。祭宮を赦していたとしても。

 もしも本当にお嬢があの時に命を落としていたら。

 予定調和で姫が巫女に昇格しただけだが、それでも神殿に深い影を落とした事は間違いない。

「それに関しては弁明出来ないな。片目の言うとおり、彼女の命を危険に晒したことは間違いないわけだから」

 ふっと祭宮の顔色が曇る。

「俺は国と彼女の命を天秤にかけて、国のほうを取ったんだ。しかしその選択も間違っていたかもしれない。そもそも、そんなことをする必要なんて無かったんだ。今思えば、だが。もっと違う事をすべきだったんだ」

 ふーっと溜息をつき、祭宮が苦笑いを浮かべる。

「一生後悔すると思うよ、これだけはね」

 本当に後悔しているのか、それとも言葉だけなのか、俺にはわからない。

 上手く自分の感情を隠してしまい、偽る事も出来る相手の言葉など、信じるに値しない。

「二度と同じ過ちを繰り返さない。北の領地に手出しする者を排除したい。それが俺の希望なんだが。協力してくれないかな」

 自責の念から動いているというのか。そんな俗っぽい感情で。

 いっそ国家転覆を企んでいるとか、それとも王位簒奪を狙っているとか言われる方が信じられる。

「では、あなたが国王になればいい。そうすればその権力をもって北の領地を守る事も可能ではないですか」

 本当はそれが狙いなんだろう?

 祭宮なんて閑職じゃなく、光り輝く玉座を狙っているんだろう。

 はっきり言ったらどうなんだ。カイ・ウィズラール殿下。

「それは嫌だ。国王には自由が無い。外に飲みに行く事も気軽に出来ないじゃないか」

「そんな理由かよっ」

 思わず突っ込んでしまうと、祭宮がにやりと笑った。

「というわけで、影から国を動かしたい。協力してくれるかな。片目」

 嫌なこった。

 全力でお断りだ。




 といって、断れるわけも無く。

 結局水竜様に関する情報を祭宮に伝える事はなかったが、奴は納得したようでそれ以上追及しようとはしなかった。

 俺はたまに王宮に芸をしに呼ばれる。そして国を放浪してから神殿に帰る。

 利用されているのか利用しているのか。それはわからないが、収入源と情報源が増えるのは悪くは無いだろう。そう思うことにした。

 全てを掌握しているのであろう祭宮に抵抗する事は、自分の見たものから考えても、確実に命を失う事になりえない。悪いが、自分の命も惜しい。

 自分の知る全てを明かさなければ良いだけ。そういう方法で守れるものも、きっとある。

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