6話 神帝陛下がいかにすごいか……
6話 神帝陛下がいかにすごいか……
……私は、第50アルファで『最強』の存在だった。
圧倒的な力を誇る絶対的頂点だった。
――私の存在値は『730』。
存在値とは、『レベルを底値』とした、その人間の強さの総合力。
一般人だと、『30』が精々。
『100』もあれば軍のエース。
『500』を超えていると世界を滅ぼす事も出来る。
その気になれば、私一人で、第50アルファの人間を皆殺しに出来た。
しかし、そんな私も、ゼノリカでは、ゴミみたいなもの。
「命の王が御歩みあそばす道は、それ全て至上の聖域なり。ああ、主よ……リラ・リラ・ゼノリカ……」
猊下は、ことあるごとに、賛美歌を口にする。
パメラノ猊下だけではなく、幹部連中は全員そう。
よく、そこまで、『他人』を愛せるものだ。
私には分からない感覚。
私は、まだ、誰かを愛したことがない。
★
私は、神帝陛下に会ったことがない。
会えるわけがない。
私のような『下っ端の下っ端』が会えるような御方ではない。
現在、私は、『第2アルファ・神帝城』の一階にある『講演の間』で猊下から講義を受けている。
本来、私のような『ド下っ端』が、この城に足を踏み入れる事はありえない。
――今回、私は、ありがたくも、パメラノ猊下から『再連の中でも、最高格の資質を持つ』と判定された。
『将来的に、幹部に昇格できる可能性がある者』という高評価。
結果、猊下から、『特別講義』を受けられる権利を獲得した。
……それを知った再連の同胞たちは、みな、血の涙を流して悔しがり、私のことを心底から羨ましがっていた。
正直、それに関しては、強烈な優越感を覚えた。
猊下の『センエースがいかにすごいか』という話を聞くのは正直ダルいが、『出世』のためにも、ここは我慢。
……講演の間の高窓から、城下がちらりと見えた。
石造りの屋根が幾何学みたいに連なり、魔導灯の琥珀色が昼間でも薄く街路を縫っている。
空には飛行船がゆっくり浮かび、遠くで魔導列車が音もなく滑っていく――煙がないのが、逆に不気味なくらいだ。
清潔すぎる路面、静かすぎる群衆、警備兵の徽章に刻まれた紋章の淡い光……全部が『秩序』を装っていて、息が詰まりそうになる。
この世界は過剰なほど平和。
ゼノリカが誇る支配システム。
武装警察組織『楽連』の抑止と、
隠密暗部組織『百済』の粛清と、
行政担当『沙良想衆』の厳格な民衆統治。
この城とこの街は、魔法をレゴブロックにした文明もどきじゃない。
ゼノリカという名の『仕組み』そのものが、人々の命を支えている。
病的な潔癖……それを具現化したような世界が、この第二アルファ。
「講義はここまでにしようかのう。次に、ぬしの『全力』を見ておきたい。地下の訓練室に向かうぞ」




