53話 戦闘力。
53話 戦闘力。
ズガンッ! と、左の拳を、デイガの腹部にぶちこむユズ。
今はデスサイズで切り裂くよりも、力いっぱい殴りたい気分だった。
存在値の差を考えれば、一撃で粉砕できるはず……と、そう思ったが、しかし、
「ぐっ! 貴様ぁああ! 不法侵入だけでは飽き足らず、愚連である私に殴り掛かるとは! 公務執行妨害だぁあ! 現行犯で逮捕するぅう!」
口から血を吐きながらも、デイガは、ギラついた目でユズを睨みつけ、手錠を取り出して、にじり寄ってくる。
それを見て、ユズは、訝しげな顔で、
「バチャル……これ、どういうこと? アタシ、今、本気で殴ったのに、こいつ死んでないんだけど」
(ユズ、貴様は、まだオーラの扱いがなっていない。対して、その男、デイガは、オーラの扱いが非常になめらか。『オーラ』は肉体を補強する補助システム。それがまったく使えない貴様と、素晴らしい練度のデイガの差は大きい)
「ちっ……ウザ」
「暴れるな! 愚連に逆らって得する事など一つもないぞ!」
そう叫びながら、デイガは、ユズを拘束しようとする。
ユズは、それを回避しながら、
「あんたみたいに、『正義ヅラ』しているやつ……マジで嫌い」
イライラした顔でそうつぶやくと、心の中で、
(こうなったら、こいつを練習台にしてやる。存在値って『999』がカンストなんでしょ。じゃあ、オーラとやらが上手く扱えるようになれば、私は、ほぼ最強ってことじゃん!)
オーラの生成を意識しつつ、肉体を丁寧に動かして、デイガに攻撃をしかける。
今度は全力の殺意をもってデスサイズを振り回した……が、
「ふんっ! 貴様、肉体強度は、かなりのものだが、戦闘力が随分とお粗末だな!」
デイガは、ユズのデスサイズを完璧に回避してみせた。
『あえて紙一重でよけてみせる』という煽りを受けて、ユズの眉間にシワがよる。
デイガは続けて、ユズに、
「へたなダンス以下! ガキのお遊戯! もしかして、貴様、戦闘経験が皆無なんじゃないか?!」
ユズのお粗末な攻撃を全て完璧に回避してから、
「本来であれば適当に組み伏せて逮捕するだけなんだが……今回だけ特別に、少しだけ私の高みを見せてやろう。光栄に思うがいい! 閃拳!!!」
そう叫びつつ、正拳突きをぶちかます。
「ぶふぅう!!」
盛大に吐血するユズ。
一瞬、気を失いかけた。
……『閃拳』というセンエースの必殺技は、ゼノリカ内部で神聖視されている。
狂信者は、毎朝何百何千と、感謝の閃拳突きをこなし、
その間、ずっと、腹の底から『リラ・リラ・ゼノリカ』と讃美歌を歌うのが日課。




