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第84話 釣り

森の木々を掻き分けてしばらく進むと、ぽっかりと開けた少し広い空間に出た。

地面も平坦で、野宿するにはちょうどよさそうな場所だ。


「ここをキャンプ地にします!」


先頭を歩いていたリーダーのカノンが高らかに宣言する。


「いいんじゃない?結構スペースあるし」


クレアも賛同する。


「ふう、疲れましたわー……」


俺は強化魔法でなんとか運んできた重い荷物を、ドサッと地面に下ろした。


「ところで、この荷物はなにに使うんですの?」

「お疲れ様ですセレスティア様。その荷物は野宿用のマジックテントだと思います」

「マジックテント?」

「コンパクトに持ち運べて、なおかつ四人横になれるくらいの広さがあるテントです。組み立てる必要がありますが……」

「へぇ〜、リリィはなんでも知っていますのね」

「いえ、そんな……たまたま本で読んだことがあっただけで……」


褒められたリリィが、えへへと照れくさそうに笑う。

そんな様子を見て、カノンがバッと勢いよく口を開いた。


「お、お姉様!一緒にマジックテントを組み立てましょう!」

「え?でもわたくし、組み立て方全然わかりませんわよ?」

「大丈夫です!私がレクチャーしますから!」


ドンッ!と胸を張るカノン。

リリィに対抗心を抱いたのか、心なしか瞳がメラメラと熱く燃えている気がする。

そんな熱気あふれるカノンたちを華麗にスルーして、クレアはそそくさとどこかに行こうとしていた。


「じゃ、あたしは食料調達でもしてこようかな〜」

「食料調達?どこに行くつもりですの?」

「地図見たらさ、近くに川があるみたいだから。そこで釣りでもしようかな〜て」

「釣り道具なんてあるんですの?」

「あんたが持ってた荷物に入ってたわよ。マジックテントの組み立てはあんたたちに任せるわ。なんか得意そうだし」

「そんなこと言って、ただサボりたいだけじゃないの?」


カノンがクレアを睨みつけていた。

しかし、釣りかぁ。

俺もやってみたいなぁ。


「待ってくださいカノン。食料調達も大事ですわ!クレア、わたくしも連れていってくださいません?わたくしも釣りがしたいですわ」

「え?別にいいけど。カノンはいいの?」

「お姉様の言う通りですね!食料調達は大切です!マジックテントの組み立ては私とリリィに任せて、思う存分釣ってきてください!ねえ、リリィ?」

「えっ?あっ、はい……!」

「ありがとうカノン、リリィ。では行きましょうクレア」

「うわぁ……」


クレアは若干引き気味に俺を見ていたが、それはともかく。

俺とクレアが食料調達、カノンとリリィが拠点組み立て担当になった。


そして――

道具を持ち、川があるという場所に向かってクレアと歩いていく。


「あんたさぁ……カノンがなんでもしてくれるからって、なんでもかんでも押し付けすぎじゃない?」

「いやぁ〜、まあ、ええ」


痛いところを突かれた。


「いやでもほら、クレアだって!ほんとはテントの組み立てめんどくさかっただけでしょう?」

「えっ、いや、うん」

「お互いさまですわ」

「まあ、そうね。あんたがついてくるって言わなきゃカノンに止められてただろうし」


そんな話をしていたら川に着いた。

緩やかな流れの綺麗な川だ。

魚もはっきりと見える。


「おっ、着きましたわね。魚もたくさんいますわ」

「はい、これあんたの釣り竿」

「これだけでいいんですの?餌とかは?」

「そんなのいらないわよ。針に魔法が込められてるから、ただ釣り糸を川に垂らせば魚が食いついてくれるのよ」

「へぇ〜、楽でいいですわね。では早速釣りまくりますわよ!」

「気合い入れすぎて釣り竿壊したりしないでよ?学園のやつなんだし」


こうして各々、釣れそうなポイントに移動し、釣り竿を川に垂らした。


クレアとは少し離れた場所に陣取り、静かに水面を見つめる。

森の中に川の流れる音が響き、爽やかな風が吹いていて心地良い。


「ああ……めっちゃ落ち着くなぁ……」


学園での騒がしい日々から解放され、一人でのんびりとした時間を過ごしている。

大自然に癒やされながら、ただ無心で釣り糸を垂らす。

……純粋にめちゃくちゃ楽しい。


そんな穏やかな時間を楽しんでいると、ふいに手元の釣り竿がグンッと重くなった。


「おっ、きたな!」


勢いよく竿を引くと、銀色に光る丸々とした魚が水しぶきを上げて宙を舞った。


「おお、やったぞ!結構な大物だ!」


餌なしで本当に釣れるとは、学園のマジックアイテムは便利だな。

パタパタと跳ねる魚をバケツにしまい、再び糸を垂らす。

その後も順調に釣果を伸ばし、気がつけばバケツの中には四人で食べるには十分すぎるほどの魚が集まっていた。


「セレスティアー。そろそろいいんじゃない? こっちも結構釣れたし」


満足そうな顔をしたクレアがこちらへ歩いてきた。


「そうですわね。カノンとリリィも、そろそろテントを完成させている頃でしょうし」

「じゃあ戻ろっか」


帰り道も特に魔物に遭遇することなどなく、平和な森の空気を満喫しながら歩を進める。

やがて開けた空間――キャンプ地に戻ると、そこには立派なテントがドンッ!と建っていた。


「あっ! お姉様! クレア! おかえりなさい!」

「お、おかえりなさい……!」


汗を拭いながら満面の笑みで駆け寄ってくるカノンと、その後ろで控えめに挨拶するリリィ。


「戻りましたわ。見てください、大漁ですわよ!」

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