第83話 リーダー
火属性のクレア、土属性のカノン、風属性のリリィ、そして全属性の俺の四人グループができた。
「それではグループのリーダーを決めてください」
パンッと手を叩いて先生が告げると、隣にいたクレアがこちらを向いた。
「だって。どうする?」
誰かが立候補するのを待つような空気になったが、それをぶち破るようにカノンが鼻息荒く身を乗り出してくる。
「そんなの決まってるでしょう!お姉様以外ありえません!」
「えー嫌ですわ」
「お姉様!?」
目を輝かせるカノンに対し、俺は即答した。
なんかめんどくさそうだし……
「あたしもやだなー」
「私も……そういうのは……」
クレアは肩をすくめて苦笑いし、リリィは自信なさげに目を伏せている。
クレアとリリィもあまりやりたくなさそうだ。
「ぐぐぅ……し、仕方ないですね。私がやります」
「カノン。あなたならできますわ。頑張ってください」
なんか押し付けた感じだが、カノンは生徒会らしいし、まあ大丈夫だろう。
リーダーはめんどいから嫌だが、サポートはできるだけしてあげたい。
「わたくしたちもなんとかサポートしますから」
「そうだね。同じグループだし」
クレアも俺と同じく、リーダーは嫌だけどサポートする気はあるようだった。
「ていうかあなた誰!?なんかお姉様に馴れ馴れしくない!?」
「そんなこと言われても……別に普通じゃない?あたしだってセレスティアに振り回されて、いつも大変な目にあってるんだから、これくらい許してよね」
「何言ってんの!?お姉様がそんなことするわけないでしょ!ねえ、お姉様?」
「えっ?いやぁ〜、まぁ……その……ねぇ?」
俺は焦って何も言えず、目を逸らしてしまった。
「えっ、なんですかその反応」
「ちょっと、なに誤魔化そうとしてんのよ。あんた森燃やそうとして――」
「あー!あー!リーダーも決まったことですしもういいではないですか!先生、リーダーが決まったのですが!?」
クレアが余計なこと言う前に遮り、俺は先生に質問する。
「そうですか。では、あちらの机に用意してあるものを持っていってください。地図と森林サバイバルセットです」
先生が指差した先には、周辺の地形が記された地図と大きな荷物が置いてあった。
「はい! ではリーダーの私が運びますね!見ててください、お姉様!」
意気揚々と机へ向かったカノンだったが、荷物を持ち上げようとしてピタッと動きが止まる。
「ふ、ふぬぬぬっ……!」
なんか小刻みに震えている。
どう見ても重そうだ。
「大丈夫ですの?わたくしが持ちますわよ?」
「お、お姉様に持たせるわけには……あっ」
見かねてカノンから荷物を受け取った、その瞬間――
「うわっ、重っ!?」
地図と一緒にまとめられた道具一式は、予想以上にずっしりとした重みがあった。
俺は補助魔法で筋力を強化しながら、荷物を持つことにした。
「それでは、ここの森に向かってください。あとは各々好きなように魔法を使いながら、一日自由に生活してください。頑張ってくださいね」
先生が地図を指差し、場所を教えてくれた。
激励の言葉もかけてくれる。
「よし、これで準備万端ですわね」
「はい、お姉様!ではみなさんいきますよ!」
「はい……!」
「はいよー」
こうしてカノンはリーダーらしく先導し、俺たちは後ろをついていくのであった。
学校から森までの道のりは、思っていたよりのんびりした雰囲気だった。
カノンは地図を片手に迷いなく進んでいく。さすが生徒会というべきか、頼もしい。
「こちらのルートで行けば、遠回りせず森まで行けます!ついてきてください!」
「さすがカノンですわね。頼りになりますわ」
「リーダーですから!当然です!」
「ふふん♪」とご満悦な様子のカノン。
普段生徒会で不良生徒を取り締まっているだけあって、根は真面目で頼りになる。
しばらく歩いていると、木々が段々と増えてきた。
道の脇に不自然に石が転がっているのが目に入る。
「なんですの、あれ」
「あっ……」
リリィが急に足を止め、じっと石を見つめていた。
「リリィ?どうしましたの?」
「……この石の転がり方……獣道のしるしだと思います……魔物や野生動物がよく通る道に、こういう風に石が転がるって……本で読んだことがあります……」
「へえ。結構勉強してるのね。そんなことまで書いてあるんだ」
クレアが感心したように言う。
「はい。森に入るときは獣道を避けた方が安全って……」
「なるほどー。カノン、少し迂回した方がよさそうですわね」
まあここらへんの魔物なら、俺とクレアがいればなんてことないだろうが、できるだけリリィは危険な目にあわせないようにしたい。
「そうですね。では少しルートを変えます!リリィ、他に気をつけることはある?」
カノンがすかさずリリィに確認する。リーダーとして情報をちゃんと活かすあたり、さすがだ。
「えっ、あの……そんな急に言われても……えーっと……あ、あと大きな木の根元に黄色いキノコが生えてたら近づかない方がいいです……痺れ毒があるので……」
「物知りなのね、リリィって」
「そ、そんな……読んだだけなので……役に立てているかどうか……」
クレアに褒められ、リリィが恥ずかしそうにもじもじしている。
かわいらしい。
「十分役に立ってますわよ、リリィ」
「……っ、ありがとうございます……!」
リリィの顔がゆでダコみたいにぱっと赤くなった。
……なんか見てたらこっちまで照れてくる。
しばらく進むと、木々がさらに生い茂り、木漏れ日が柔らかく降り注ぐ場所に出た。
「……ここからが森です!」
カノンが振り返り、きっぱりと宣言する。
「よし!ここから先も私が先頭に立ちます!みなさんついてきてください!」
「ええ」
「はいよ」
「はい……!」
さて、ここからが本番だ。
初めての組み合わせで初めての野外演習。
何が起こるかわからないが……退屈はしないだろう。
俺たちは何が潜んでいるかわからない薄暗い森の中へと、ゆっくりと踏み込んでいった。




