第81話 ごちそう
「あ、セレスティア様」
「やっほー」
「あら、リリィとサフィアじゃないですの」
ダンジョン探索を終え、エリスたちと学園まで戻ってきたら偶然二人に遭遇した。
「ちょうど良かった。今から一緒に肉食べに行こう」
「肉ですの!?ちょうどわたくしもお腹ペコペコだったんですわ!」
「あとミーナも」
「えっ、私もいいの!?」
「うん。この前約束したでしょ。オークジェネラルの肉、一緒に食べるって」
「あー、あれかー!」
「ついにオークジェネラルが食べられるんですのね!」
疲れと空腹で下がっていたテンションが爆上がりする。
それにしてもサフィアってちゃんと約束守るんだな。
「それでは私は先に帰りますね♪私はオークジェネラル討伐に参加してないですし♪皆さん楽しんできてください♪」
「そうですわね、ごきげんようエリス」
「じゃあねーエリスちゃん!」
エリスがスタスタと先に帰っていったかと思いきや、すぐに振り返り戻ってきた。
「なんですの?」
「……ちょっとひどくないですかぁ、セレスティアさん。ここは普通『そんなこと言わずにあなたも一緒にどうぞ』とか言って引き留めるでしょう」
「めんどくさ!なんでわたくしがあなたなんかにそんな気を遣わなきゃいけないんですの!?」
「ぶーぶー!ルームメイトなのに悲しいですよぉ……」
そうして不貞腐れるエリスを見かねたミーナが提案する。
「なかないでエリスちゃん。ほら、私だってオークジェネラル討伐に参加してないし!エリスちゃんも一緒でいいよね?」
「えーやだ」
「サフィアちゃん!?」
即拒否するサフィア。
「だって、私の食べる肉の量が減る。ミーナはリリィの代わりに食べるって話だから仕方なくだし」
「そうですわね。ほら、さっさと帰りなさい」
「うぇーん」
泣き声をあげたと思ったら、すぐ表情をいつものニヤつき顔に戻すエリス。
「な〜んて、冗談です♪ちょっと遊んでみました♪」
「ほらやっぱり。ミーナ、あんまりエリスの言うことを真に受けてはいけませんわよ」
「う、うん……」
「では今度こそ、おいとまさせていただきますね♪楽しんできてくださーい♪」
エリスはブンブンと手を振りながら楽しそうに去っていった。
「早く行こう。お腹すいた」
「そうですわね。楽しみですわ!」
「はい……!」
「よーし!私もお腹すいたし、たくさん食べるぞー」
こうして肉を食べるため、四人で移動を開始する。
「……って、そもそもどこに行くんですの?」
「ギルドにあるレストラン。そこで調理してもらう」
「へー、ギルドって食事もできるんだねー」
「いつもたくさんの冒険者様で賑わっているみたいです……!私は行ったことありませんが……」
「わたくしも初めてですわ。いつもクエストの受付しかしてなかったので気づきませんでしたわ」
いつも掲示板とにらめっこしてたからなぁ。
周りはあんま見てなかったから気づかなかった。
そうして談笑しながら街を歩いていると、いつものギルドに辿り着いた。
「こっち」
サフィアに案内されると、テーブルがたくさんあり、冒険者たちで賑わっていた。
――ワイワイ!ガヤガヤ!
「すごい賑やかな場所ですわねー」
「あぅぅ……す、すごいです……」
「あっ、あそこ空いてるよ!とりあえず座ろうよ!」
「うん」
こうして俺たちは席につく。
すると、店員さんらしき人がやってきた。
「いらっしゃいませー!ってサフィアさんじゃないですか。オークジェネラル肉ですね、すぐにお持ちします!」
サフィアの顔を見るやいなや、キッチンに向かう店員さん。
「知り合いですの?」
「うん。いつもクエストで獲った肉はここで食べてるから」
さすがサフィアだ。
食欲だけでランクを上げただけある。
初めての場所だがスムーズで助かるなぁ。
しばらく待っていると――
「おまたせしましたー!」
俺たちのもとへ大量のオークジェネラル肉のステーキが運ばれてきた。
「わわっ!すごい量がきたね!?」
「おお!うまそうですわ!早速頂きましょう!」
「うん」
肉を一口食べてみると……
――ッッッ!?
な、なんだこれ、めちゃくちゃうまい!!
分厚い肉に歯を立てた瞬間、ほどけるような柔らかい繊維の中から閉じ込められていた濃厚な肉汁が大洪水のように溢れ出してくる!
普通のオーク肉とは完全に次元が違う!
口内を支配する圧倒的な旨味とコクの暴力!
一口食べただけで、脳髄が痺れるほどの美味さがダイレクトに伝わってくる!
極限までの空腹状態も最高のスパイスとなり、もはや理性を保てなくなりそうなほどの中毒性だ!
「これうっまいですわ!!これならいくらでも食べられますわね!」
「うん。おいしい。私が全部食べる」
「お!大食い対決?なら私も負けないよー!」
「み、皆さん……喉を詰まらせないように気をつけてくださいね……」
俺たち三人がバクバクと肉を食べている姿を見て、リリィは心配そうにしていた。
まだ肉は大量にある。
リリィも少しずつだが、肉をパクパクとおいしそうに食べていく。
――数十分後
「はわぁ〜、もう食べられないよ〜……お腹パンパンだよぉ……」
ミーナは大きく膨れたお腹をさすり、ぐったりしている。
「ふぅ、ごちそうさまでした。うまかったですわね」
「うん。最高だった。あと三枚はいける」
テーブルの上にあった大量のオークジェネラルのステーキは、見事に一つ残らず平らげられていた。
まあそのほとんどは俺とサフィアの胃袋に消えたわけだが……
「あ、あんなにあったお肉の山が……綺麗になくなってる……」
リリィは空っぽになったお皿の山を見て、呆然としていた。
「セレスティア様、サフィア様……ミーナ様の何倍も食べてましたよね……? なんでそんなに平然としてるんですか……?」
「ダンジョンで魔力も体力もたくさん使いましたからね。これくらいペロリですわ」
「肉はいくらでも入る。私の胃袋は特別だから」
「あ、あうぅ……」
明らかにリリィは引いた目をしていた。
限界を迎えてぐったりしているミーナとドン引きしているリリィをよそに、俺とサフィアにとっては最高の夕食になったのだった。




