第8話 土魔法とカノン
リリィと別れた俺は、次なる目的地を探して演習場を歩いていた。
風魔法は「射程距離不足」という課題が見つかったが、まあ魔法自体は出た。
この調子で他の属性も試しておきたい。
「次は……土属性にしましょう」
土属性といえば、カノンが確かそうだったはずだ。
あいつ、なぜかは知らんが俺のことが大好きだからな。行けば喜んで教えてくれるだろう。
俺は土魔法の演習エリアへと足を向けた。
すると、少し離れた場所で地面を隆起させて真面目に練習しているカノンを見つけた。
「ごきげんよう、カノン」
「えっ!? お、お姉様!?」
声をかけると、カノンはババッ! と勢いよく振り返った。
俺の姿を確認するなり、その顔がパァァァッと輝く。
もし尻尾があったら、ブンブン振って突風が起きているレベルだ。
「どうされたのですかお姉様!こんなところでなにを?」
「土魔法の練習をしようと思いまして」
「!?お姉様、土属性だったのですか!これはまさしく運命ですね!!」
「そうですわね。運命ですわ。」
このくだりさっきもやった気がするぞ。
本当は「全属性」なのだが、いちいち説明するのが面倒くさい。
リリィの時みたいに驚かれて質問攻めにされるのも疲れるし、カノンなら「さすがですお姉様!!」と大声で叫んで目立ちそうだ。
ここは適当に合わせておこう。
しかし、カノンが感極まったように両手を合わせて俺を見つめてくる。
目がハートになりそうだ。
「やはりこれは運命……!お姉様と同じ属性なんて!やはり私たちは魂で繋がっているのです!」
「そ、そうですわね。繋がっていますわ」
なんか逆にもっとめんどくさくなったな……
本人に悪気はないしまあいいか……
「というわけでカノン、わたくしに土魔法のイロハを教えてくださる?」
「もちろんです!!このカノン、お姉様のために土魔法の全てを解説してみせます!」
「いえそこまでは……」
前から思っていたがこの子、言うことがいちいち過激なんだよなぁ。
ちょっと心配になるぞ?
「ではお教えしますわ! 土魔法の極意は『硬度』と『形成』です!」
カノンはビシッと地面を指差した。
「地面にある土を魔力で掌握し、自分のイメージ通りの形に固める! 硬く、強く、思い描くのです!」
なるほど、粘土細工みたいなものか。
リリィも言ってた通り、大事なのはイメージすることなんだな。
こっちのほうが風魔法よりイメージしやすいかもしれない。
「例えば、こうですわ!」
カノンが手を振り上げると、地面がゴゴゴッと音を立てて盛り上がり、高さ2メートルほどの土の壁が出現した。
「おお……」
「どうですお姉様!
これが大地の障壁です!これでどのような敵からもお姉様をお守りしてみせます!」
「すごいですわカノン!とても頼もしいですわね!」
「そうでしょうそうでしょう!」
カノンがドヤ顔をしながら満足げな表情を浮かべた。しかし土の壁はすぐ崩れてしまった。
「あら?」
「こ、これは違うんですお姉様!壁を作るのは簡単なのですが、維持するとなるとなかなか大変で……しかし例え一時的であったとしても防御には使えます!」
カノンは必死に言い訳する。
なるほど、確かにずっと維持できるとしたらこの世界は土の壁だらけになってしまう。
「土魔法は主に防御に使うのですか?」
「いいえ!土魔法は防御だけでなく攻撃にも使うことができます!」
「壁で防御するだけではありませんの?」
「はい!石を作り出し、相手に飛ばす魔法などがあります!初歩では小さいものしか作り出せませんが、熟練の土魔法使いは超巨大な岩を飛ばすと聞いたことがあります!」
超巨大な岩って……隕石みたいなものか?
とんでもないな……
「それでは実際にやってみますね?」
そう言ってカノンは的に向かって両手を構える。
「いきますね!」
という声とともにカノンの前に小さな石が何個か作り出された。
そして、石たちが的のほうに飛んでいく。
ドガガガガッ!
と、的に命中した。
「これが大地の礫です!
どうですかお姉様?」
「すごいですわ!それにかなり威力がありますのね!」
「硬い石を思いっきり投げてるようなものですからね!小さいとはいえ、まともに食らえばダメージはかなり入ると思います!」
攻撃と防御、両方いけるんだな。
どっちも試してみたいぞ!
「よし、わたくしもやってみますわ!
まず攻撃のほうから試してみましょう。」
「頑張ってください!お姉様!」
俺は的に向かって両手を構える。
風魔法のときと似たような感じでやればいいのかな。
射程距離もあるだろうが風と違って石なら視認もしやすいし、出せたかどうかもわかりやすいだろう。
石か。石を集めて飛ばすイメージだな。
狙いはあの的だ。
無数のつぶてを叩き込んでやる!
「はぁっ!!」
気合とともに魔力を放出する。
すると、目の前に無数の石が形成された。
「でましたわ!」
「さすがですお姉様!
その石をあの的に放つんです!」
石を放出するイメージをする。
そしたら
ドガガガガッ!
と、的に命中した!
成功したのか……!?
「や、やりましたわ!できましたわ!」
「喜ぶお姉様……なんとお美しい……」
カノンが横でとろけるような笑顔を浮かべてうっとりとしているが、いまはそれどころではない。
初めてちゃんとした魔法が撃てた。
今まで小さい火を出すとか、射程距離が短い風を起こすとかしかできなかったのに!
今回はちゃんと石が生成できたし、的まで飛ばして命中させることができたぞ!
こんなに嬉しいことはない!
女神が作った肉体が、ちゃんと魔法に適応してきているということか?
いまなら火魔法や風魔法ももっと上手く使えるかも!
俺が喜びに浸っていると
「――やるじゃないか。
さすがだな、セレスティア」
と男性に声をかけられる。
うげっ!この声は!聞き覚えがあるぞ!
まさかと思い声がしたほうを向くと――
そこにはクロード殿下がいた。
「それでこそ僕の婚約者にふさわしい。
そろそろ僕のプロポーズを受けてくれないか?」




