第76話 物理攻撃
「グルル……」
ダンジョンの通路を進んでいくとまたストーンウルフの群れが現れた。
それに加えてカタカタ……とスケルトンも数体いる。
「なんかいっぱいいますわね。めんどくさいですわ」
「でもあいつらを無視して先に進めそうにはないわよ?」
「そうですわね。では全員ぶっ飛ばしましょうか。次はわたくしの番ですし。あっ、これ持っててください」
「うわぁっ」
俺はヘカーティが入っているゴーレムくんをポイッ、とオフィーリアに向けて投げ、彼女は見事にキャッチする。
「ふぅ……ナイスじゃオフィーリア」
「ちょっと!ご先祖様投げんな!てかあんた一人で大丈夫なの?けっこう数いるけど。手伝ってあげようか?」
怒っていたと思ったら、すぐに表情を切り替えオフィーリアがニヤニヤしながら煽ってくる。
「こんな雑魚、わたくし一人で十分ですわ」
「まあそうね。さっき私はミノタウロスと戦ったけど、あんたはまだ雑魚としか戦ってないもんね」
「嫌味ですの?わたくしはさっきあなたに魔力を吸われたり、ゴーレムくんを作ったりして魔力を消費してるんですけど!」
「そんなの知らないわよ。ご先祖様はあんたのこと評価してるみたいだけど案外大したことないのね」
「おっ、いいぞオフィーリア!もっと言ってやれ!」
なんなんだこいつら……
好き放題言いやがって。
なんかムカついてきた。
オフィーリアに格の違いを見せつけてやる!
「ふん、だったらわたくしはこいつらを属性魔法を使わずに倒してやりますわ。あなたたちのせいで魔力を消費したので節約しなくてはなりませんからね」
「へぇ〜、言うわね。やってみなさいよ」
ニヤニヤと煽ってくるオフィーリア。
抱えられているヘカーティのほうは「頑張るんじゃぞー」と呑気なことを言っていた。
「いきますわよ!」
俺は魔物の大群の中に飛び込んでいく。
するとストーンウルフが一体飛びかかってきた。
「ガウッ!」
「ふんっ!」
――ドゴォ!
「グギャッ!?」
俺はすかさず拳を叩き込む。
ストーンウルフは壁まで吹っ飛んでいき、消滅して魔石になる。
俺は自分がイメージした通りのことができて感動していた。
「うまくいきましたわね」
「なっ!?ご先祖様、今のは一体?ただのパンチに見えましたけどとんでもない威力でしたよ?」
「ふむ、あれは殴る瞬間だけ『身体強化』を使っておるな。一瞬だけしか使わんから魔力の消費も抑えられるというわけじゃな」
ヘカーティの言う通り、俺は殴る瞬間だけ拳を強化していた。
属性魔法は使わないと言ったが補助魔法を使わないとは言っていない。
――カタカタカタッ!
今度は、背後からスケルトンがボロボロの剣を振りかぶって襲いかかってきた。
「おっと、危ないですわね」
俺は振り返りざまに鋭い回し蹴りを食らわせる。
当然、インパクトの瞬間だけ脚を『身体強化』で強化している。
――バキィィィンッ!!
「……ッ!?」
まるで爆発したかのような破壊音。
蹴りを喰らったスケルトンは、頭部の骨を粉々に砕かれ、体の骨は力を失い消滅した。
「これ、けっこういいですわね。ストレス解消にもなりますわ。さっき散々オフィーリアたちに振り回された怒りを、あなたたちには存分に受けてもらいますわよ!」
――ドゴォ!バキィ!メシャァッ!
こうして俺は、容赦のない打撃音を響かせながら、ストーンウルフやスケルトンを次々と物理でボコボコに粉砕していく。
「あやつ、なんか凄く楽しそうじゃな……」
「はい、あんな笑顔のセレスティアは初めて見ました……」
そして俺は全ての魔物を物理で粉砕し、手をパンパン、と叩きながらオフィーリアたちのほうへ向き直る。
あたりには魔石がたくさん転がっていた。
「まあこんなもんですわね。さ、あなたたちも魔石拾いを手伝ってくださいません?ヘカーティも小さい身体とはいえそれくらいはできるでしょう?」
「え、ええ」
「お、おう」
こうして俺達は魔石を拾い集める。
ヘカーティもトテトテ、と歩き回りながら一生懸命魔石を集めている。
戦闘中いちいち数えてなかったので正確な数はわからないが、とにかくたくさんの魔石が手に入った。
「ふぅ……これであらかた集め終わりましたわね。では、先に進みましょうか」
「あ、あんためちゃくちゃよ!物理攻撃だけで魔物の集団を倒すなんて見たことないわ!」
「?理にかなった戦い方ですわよ?」
「まあそうだけど!そもそもそんなデタラメな強化の仕方できるやつなんていないでしょ!なんなのよもう……」
「まあよいではないかオフィーリア。妾は見てて楽しかったぞ?見事にバッタバッタと倒していったなぁ!くははは!」
そう笑いながら、しれっとまた俺の肩に乗るヘカーティ。
「ほら、ヘカーティも楽しそうですし。あなたもうなだれてないでさっさと先に進みますわよー」
「ちょっとー!待ちなさいよー!」
俺がスタスタと歩き出すと、オフィーリアが駆け足で後を追ってくる。
そのまま先に進んでいくと、なにかダンジョン内の空気が変わった気がした。
「なんかさっきまでと雰囲気ちがいません?魔物も全然いませんし」
「確かにそうね。なんか空気が冷たいというか……」
すると目の前に大きな扉があることに気づいた。
「これ、さっきミノタウロスがいた部屋の扉と同じじゃない?」
「ええ。でも……中にいるのは、ミノタウロス以上の魔物ですわよ」
俺は扉の向こうから、肌がヒリつくようなとてつもない生命反応を感じ取っていた。
「つまり、さっきのミノタウロスが中ボスで、こっちが本当のボスってことですわね」
「じゃあ私たちはもう最奥部まで辿り着いたってこと?あっという間ね」
「それほどお主たちが優秀ということじゃよ。それにここは大したダンジョンじゃないからのぉ。こんなもんじゃろ」
ヘカーティがそう教えてくれた。
「さて、では参りましょうか」
「ええ、どんなやつがいるのか楽しみだわ!」




