第72話 セレスティアの戦い方
「オフィーリア、よく見てなさい。わたくしの魔法を!」
そう高らかに宣言する。
まずはあたりを照らさないと。
片手だと戦いづらい。
てか炎で自分の服とか燃えたら嫌だし。
俺は炎を消し、光魔法を放つ。
「まずは照らしますわ!『閃光球』!」
「なるほどね。明かりなら火魔法より光魔法ってことね」
光の球を出し、上空に浮かせる。
パッと遺跡の通路が昼間のように明るく照らし出された。
初めてやってみたけど、あっさりと成功したな。
水とか火の球を出したことあるから、それと同じようなイメージで出してみたけど、案外うまくいくもんだ。
これで両方の手が空いたし、敵も視える。
「結構いますわね。7体くらいですか」
「グルルルル……」
薄暗い闇の中から現れたのは、岩のようにゴツゴツとした灰色の身体をしているストーンウルフの群れだ。
ラッキーなことに、いきなりあたりが強烈に照らされたからか、普段暗闇で行動しているであろうストーンウルフたちは目を細めて少し怯んでいる。
さて、どう倒すか。
オフィーリアみたいに『影槍撃』で一気に倒したいところだけど初めて使うし、動いてる敵に当てるのは難しいだろう。
だからオフィーリアはまず『影沼』で敵を拘束して、魔法を当てやすいようにしていたんだ。
しかし、拘束しようにもそもそもさっきのスケルトンよりも数が多い。
こうなったらゴリ押しするしかない!
「『時間停止』!」
――カチッ!
世界から音が消え、時間が停止する。
襲いかかろうとしているストーンウルフたちやオフィーリアも当然停止している。
しかし止められる時間は限られている。
数も多いし、モタモタしていられない!
俺は早速魔法を放つ。
「『影槍撃』!」
――ブォンブォンブォン!
俺は時間の許す限り影の槍を生み出し、ストーンウルフたちへ向けて次々と配置していく。獲物たちは完全に静止しているため、狙いを外すほうが難しいくらいだった。
急所がどこかは知らんが、探してる時間もないし数でゴリ押ししよう。
「もう少しだけ追加しておきますか。『影槍撃』!」
――ブォンブォンブォン!
確実に倒せる確証がまだないのでさらに影の槍を追加しておいた。
これだけあれば大丈夫だろう。
大量の影の槍がストーンウルフたちの周りを檻のようにびっしりと囲む。
そして時間停止の限界がきた。
――ヒュゥゥゥゥゥ……
それと同時に影の槍がストーンウルフたちに一気に突き刺さる!
――ザシュザシュザシュザシュザシュッ!
「グギャッ!?」
「グルゥ……」
あんだけ大量の槍がいきなり周りから飛んできたんだ。
いくら俊敏に動ける魔物でも避けようがない。
ストーンウルフたちは倒れていく。
どうやらちゃんとすべて仕留められたようだ。
光の球はまだあたりを照らし続けていた。
「まっ、こんなもんですわね」
俺が「ふぅ」と一息ついていると、目を丸くしたオフィーリアが血相を変えて詰め寄ってきた。
「ちょっとあんた!今の何よ!いきなり大量の槍が現れたように見えたけど!?」
「?ただの『影槍撃』ですわよ?あなたと同じやり方で倒しただけですわ?」
「どこが一緒なのよ!?私はあんな一気に大量の槍出してないでしょ!」
オフィーリアは信じられないといった様子で、倒れたストーンウルフたちをまじまじと見つめる。
「あなたとはレベルが違うんですわ」
「ちっ、確かにそうね……『影槍撃』のレベルが違うのは認めるわ」
悔しそうに唇を噛みつつも、素直に俺の実力を認めてくれるオフィーリア。
しかし、まだ納得がいかない顔をしている。
「でも発射する瞬間がまったく見えなかったわ。気づいたらストーンウルフたちの周りに槍があった。あれはなに?あんな魔法、私は知らないわよ?」
「それはあなたの勉強不足なのでは?」
「ムカつくー!教えなさいよ!」
ムキーッと苛立ちを見せるオフィーリア。
教えないほうが面白そうだし黙っとこ。
「そういえば、わたくしの友人に水属性エルフのサフィアという方がいるのですけど」
「は?いきなり何の話よ?」
「彼女なら、今わたくしがどうやって敵を倒したのか、すぐわかったのでしょうね。あなたもせいぜい頑張りなさい」
俺はそれだけ告げると、浮いている光の球を操作し、優雅に踵を返してダンジョンの奥へと歩き出す。
ふふん、我ながらかっこよく決まった。
悪役令嬢らしい優雅さが滲み出ているだろう。
「ちょっと待ちなさいよ」
数歩進んだところで、背後からオフィーリアの呆れたような声が響いた。
なんだ?まだ魔法の正体が知りたいのか?
「なんですの?いくら頼まれても教えませんわよ?」
「そうじゃなくて……あんた、魔石回収し忘れてるわよ」
「へ?」
振り返ると、倒したストーンウルフたちが消滅しており、その場には7個の魔石がコロンと転がっていた。
しまった……!
かっこつけることに夢中で、戦利品の回収を完全に忘れていた!
「ふん、こんな初歩的なミスをするなんてね。偉そうに語ってたけど、案外抜けてるんじゃない?」
オフィーリアがここぞとばかりに、意地悪くニヤニヤしながらこちらを見ている。
くっ、せっかくの完璧なムーブが台無しだ!
「い、今拾おうと思ってたところですの!」
「へぇ、拾おうとねぇ……どうすれば魔石と逆の方向に歩けば拾えるのよ?それもあなたの魔法?」
「ぐっ……わ、わざとですわ!あなたを試したんですの!こんなことにも気づかないようではわたくしのパートナーは務まりませんからね!」
「はいはい」
だめだ……どう言い訳しても勝ち目がない……!
俺は完全に論破され、どうしようもないので、顔を熱くしながら慌てて引き返し、しゃがみ込んで地面に転がる魔石を拾い集める。
ちくしょう、背後からオフィーリアのクスクス笑う声が聞こえて腹が立つ。
拾い集めた魔石を素早くしまい込み、俺は誤魔化すようにコホン、と大げさに咳払いをした。
「……では、気を取り直して進みますわよ」
「はいはい。次からは忘れないようにせいぜい頑張りなさいよ?」
「うるさいですわ!」
オフィーリアのからかいの言葉に噛み付きながら、俺たちは再び薄暗いダンジョンの奥へと足を進めるのであった。




