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第71話 オフィーリアの戦い方

恐る恐るダンジョンの中に足を踏み入れると、外の森の気配が完全に遮断された。

コツン……と自分たちの靴音だけが不気味なほど奥深くまで反響していく。

目が慣れるのを待ってみたものの、あたり一面は太陽の光が一切届かない漆黒の闇。

一歩先へ進むのすら躊躇われるほどまわりが見えなかった。


「暗いですわね……明かりとかありませんの?」

「あなたが魔法でなんとかしなさいよ。これくらいで情けないわね」

「なっ!?」


こいつ、いちいち煽らなきゃ気が済まないのか?


「そういうあなたは明かりがなくても大丈夫なんですの?」

「まあなんとかね。ある程度は感覚でわかるわ」

「ということはダンジョンに来るのは初めてではないんですの?」

「特訓で何回か来たことあるわ。あまり奥まで進んだことはないけどね」


そうすました顔で言うオフィーリア。


「しかしいくら経験者がいるとはいえ、明かりがないのは不安ですわね」


生命共鳴ソウルレゾナンス』が使えるから索敵はできるとはいえ、何も見えないのはなぁ。

そうだ!この前部長が使ってた火魔法を見よう見まねでやってみよう。

俺は人差し指を立てて、小さい炎を出すイメージをする。


「『灯炎キンドルファイア』」


――ボッ!


指先にイメージ通りの小さな炎が出て、あたり一面を照らしてくれる。

炎の光に浮かび上がったのは、苔むした石壁と、どこまでも続く真っ直ぐな通路だった。

空気がひんやりとしていて、カビと埃の匂いが鼻を突く。

いかにも古代遺跡といった不気味な雰囲気だ。


「へぇ、やるじゃない。おかげで見やすくなったわ」

「ふん、これくらい余裕ですわ。あなた、わたくしがいなかったらどうするつもりでしたの?」

「普通に火魔法が込められたランタン使ったけど」

「なっ!?そんなものがあるならさっさと出せばいいでしょう!?わたくしが無駄に魔力使っただけではないですか!」

「これ使い捨てだしもったいないじゃない。時間制限もあるし、魔法でなんとかなるならその方がいいでしょ」

「むむぅ……」


確かにそれなら俺が魔法使ったほうがいいな。

何も言い返せん……

こうして俺があたりを照らしながら、ダンジョン内を進んでいく。


「ん?オフィーリア、この先に何かいますわ」


ふと、『生命共鳴ソウルレゾナンス』の感覚に微かな引っ掛かりを覚えた。

魔物の気配だ。

自分の周辺くらいの距離なら常に索敵できるようには俺も成長したらしい。

確かミーナもそんな感じで自然に探知してたな。

自身の成長を実感する。


「別に、言われなくても私だってわかってたし!」


オフィーリアの強がりをスルーしつつ先へ進むと、前方から、カシャ……カシャ……と硬いものが石畳を擦るような音が響いた。

現れたのは骨だけの人型の魔物たちだ。

5体もいる。

ボロボロの剣や槍を構え、こちらに向かってきた。


「なんですの、あれ」

「スケルトンね。あいつは頭にコアがあるから、そこを砕けば倒せるわよ」

「へぇ、なら簡単に倒せそうですわね」

「あんたは片手が塞がってるから、ここは私が一気にやるわ」


そう言って俺の前に出るオフィーリア。

そしてスゥッと深呼吸をする。

すると、彼女の周りに黒い魔力のオーラが漂い始めた。

同時に、ダンジョン内の空気が一段と冷たくなったような気がした。

光を吸い込むような、底知れない魔力の圧を感じる。


「よく見ておきなさいセレスティア!これが私の闇魔法よ!」


オフィーリアは片腕を前に出し、魔法を放つ構えをする。


「『影沼シャドウ・スワンプ』!」


――ズズズズ!


オフィーリアの魔法が発動した瞬間、スケルトンたちの足元の影がぐにゃりと歪み、泥沼のように変化した。

スケルトンたちは前進しようとするが、足が影の沼に沈み込み、完全に動きを封じられる。


「くらいなさい!『影槍撃シャドウスピア』!」


――ブォン!!


オフィーリアの周りに黒い槍がたくさん現れる。

そしてそのひとつひとつがそれぞれのスケルトンの頭へと一直線に飛んでいった!


――バゴバゴバゴォン!!!


全てのスケルトンへと命中し、コアが砕かれる音が静かなダンジョン内に響き渡る。

残った胴体もガラガラと崩れ去り、オフィーリアは宣言通り一気にまとめてスケルトンを倒してみせた。

あとに残ったのは、小さな魔石だけだった。

オフィーリアはツカツカと歩み寄り、足元に落ちた魔石を拾い上げてから、俺のほうを見て威張る。


「ふん!どう?これが私の闇魔法よ!」

「なるほど、お見事ですわね」


俺は素直に感心していた。

初めて見る闇魔法の連続で感動だ。

それに相手の動きを封じ、的確に急所を突く戦い方、スケルトンの頭を正確に撃ち砕く技術も見事だ。

この闇魔法の使いこなしぶりから、オフィーリア自身の努力が感じられた。


「な、なによ。素直に褒められると調子狂うじゃない……わかったなら、足手まといにならないように気をつけることね」

「誰が足手まといですって?わたくしも負けてはいませんわよ」


少し照れ隠しでふんぞり返るオフィーリアに、俺も不敵に笑い返す。

俺の闘志にも火がついてきた。

次に敵が現れたら俺がまとめて倒してやる!


「ほら、あんたもぼーっとしてないで拾うの手伝いなさいよ」

「今拾おうと思ってたんですの!」


オフィーリアに急かされ、俺は片手で炎を維持したまま、しゃがみ込んで魔石を拾い集める。


「ところでこのスケルトンもスライムのように倒したら魔石を落とすんですのね」

「ダンジョン内の魔物はみんなそうよ。倒したら小さい魔石になるから、マジックバッグがなくても持ち帰りやすくていいわね。魔法の練習にもなるし、魔石をギルドに渡せばお金稼ぎにもなるから一石二鳥ね」


へぇ〜、ダンジョン内にはそういうルール?のようなものがあるのか。

こっちのほうが楽だが、倒した魔物を食べられないからサフィアは嫌がるだろうなぁ。


「グルルル……!」


そんな話をしていると、今度は通路の奥から黒い狼の魔物が複数体現れた。


「ストーンウルフの群れね。スケルトンと違って動きが速いから少し厄介だわ」

「では、次はわたくしの番ですわ」

「あんた、片手で戦うつもり?大丈夫?手伝ってあげようか?」


そう言ってオフィーリアは小馬鹿にしてくるが、俺は無視して前に出る。


「オフィーリア、よく見てなさい。わたくしの魔法を!」

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