第70話 ダンジョン探索しよう
みんなで学園の前まで行くとドロシー先生が待っていた。
「おっきたきた。うわ……」
エリスを見た瞬間めんどくさそうな顔をするドロシー先生。
そんな先生にエリスはわざとらしく心配そうに声をかける。
「先生、どうしたんです?体調悪そうですよ?」
「今悪くなった。帰ろうかな……」
「職務怠慢はだめですよ♪」
「はぁ……まあいいや。今日は課外授業だよみんな」
ため息をつきながら、半ば諦めたかのように話を進める先生。
「課外授業ってなにをするんですの?」
「よくぞ聞いてくれました!ダンジョン探索をしようと思う!」
「ダンジョン探索?」
ダンジョンなんてワクワクするワードだ。
そんなものがこの世界にもあったのか!
「でも師匠?課外授業でダンジョンなんて危険なところに行って大丈夫なんですか?」
オフィーリアがそう問いかける。
そんな危険な場所なのか。
「大丈夫大丈夫!私がいるし、お嬢ちゃんたちみんな強いでしょ?学園でちまちま模擬戦するより実戦のほうが早くていいでしょ」
「要するに授業するのがめんどくさいってことですわね」
「セレスティアちゃんそんなこと言わないでよ〜。そもそも光と闇の合同授業の内容は私に一任されてるんだから何したっていいんだよ」
「そんなこと言ってるとまた怒られますわよ」
「そうじゃよ。妾の子孫に何かあったらどうするんじゃ」
「うわっ……」
「出ましたわね、ヘカーティ」
オフィーリアがいつの間にかヘカーティに入れ替わっていた。
びっくりしたぁ!まあ来ると思ったけども。
「しかしドロシーの言うことも一理あるのぉ。ダンジョンなら学園と違って思う存分魔法を撃てるしの。こやつらの実力なら丁度ええじゃろ」
「ほらっ!ヘカーティさんだってこう言ってるんだしさ!いこいこ!」
「はぁ……わかりましたわ」
「ダンジョンかぁ……楽しみだね!」
ミーナも目を輝かせていた。
そうして俺たちは学園を出て、近くの森の奥深くへと進んでいった。
しばらく歩くと、木々をかき分けた先に苔生した石造りの建造物が姿を現した。
あちこちが崩れかけており、壁にはツタが絡まっている。歴史を感じさせる古代遺跡のような場所だ。
「ここが今日授業をするダンジョンだよ」
「へぇ〜、こんな遺跡みたいな場所が学園の近くにあったんですのね」
「学園周辺の森に出るスライムとかじゃ、君たちの魔法の練習相手にならないでしょ?ここならもうちょっと骨のある魔物が出るから、いい実戦練習になるんだよね」
「なるほどー!そういえばセレスティアちゃんはオークジェネラルを倒したことあるもんね!私にもできるかなー?」
「えっそうなの?じゃあもっと危険なところのほうがいいかな?」
「勘弁してください。オークジェネラルを倒したと言っても結構ギリギリだったんですわよ?そもそもダンジョンも初めてですし」
「冗談だって」
あははー!と笑うドロシー先生を見て、なんか不安になってきた。
大丈夫かな?
そんなこと考えていると声をかけられる。
「ふははは!セレスティアよ、まあ良いではないか!遠慮なく強力な魔法をぶっ放せるんじゃぞ?お主なら敵無しじゃろう?」
「確かにそうですわね!……ってあなたまだいたんですの!?」
とっくにオフィーリアに戻っていたと思っていたのでびっくりした。
「あれ?ヘカーティさんまだいたんですか?魔法の勉強するのはオフィーリアさんなんですからさっさと消えてください♪」
「お主もうちょいマイルドな言い方はできんのか?オフィーリアが無駄に体力を消費しないように気を遣っていたというのに」
エリスの物言いに「はぁ……」とため息をついて不機嫌になるヘカーティ。
しかしもうダンジョンも目の前なので、大人しく引き下がった。
「ではそろそろ妾は内側から見守るとしよう。じゃあの!」
そう言うと、ヘカーティはパタリと目を閉じる。
そして次に目を開けた時、その雰囲気はいつものオフィーリアに戻っていた。
「……あれ?私、なにを?ていうかここどこ!?」
「オフィーリアちゃん、おはよー!これからダンジョンで課外授業だよ!」
「ダンジョン……?そういえばそんな話をしていたような」
突然の状況に戸惑うオフィーリア。
無理もない。
彼女にとっては学園にいたと思ったら、いつの間にかダンジョンの前まで来ていたという感覚なんだろう。
「きっとご先祖様ね!私がダンジョンで力を最大限発揮できるように守ってくれたんだわ!」
しかし、彼女は一人で納得していた。
まあこんなこと何回もあるからもう慣れているんだろうな。
「よし!じゃあオフィーリアちゃんも目を覚ましたことだし、二人一組になろうか」
パン!と手を叩きそんなことを言い出すドロシー先生。
「二組に分かれる必要あるんですの?ていうか、それでは先生が余るではないですか」
「私は生徒の自主性を重んじるからね。後ろで静かに見守ってるよ」
「とか言って、本当はめんどくさいだけじゃないんですの?」
「ちょっとセレスティア!師匠に失礼よ!」
俺が先生を疑いの目で見ていたら、オフィーリアに叱られた。
「もう!二人とも喧嘩はだめだよー!それで先生、どうやって二組に分かれるんですか?」
ミーナが慌てて仲裁に入りつつ、先生に問いかける。
「やばっ……なんも考えてないや……えっと……そのなんか適当に……」
適当ってなんだよ適当って。
一番困るやつだぞ。
「あーでも、セレスティアちゃんとエリスちゃんは組んじゃだめね。その……色々バランスが……」
「バランス?」
ミーナとオフィーリアは首を傾げている。
まあエリスが実は女神だからとか言うわけにもいかないからな。
ドロシー先生も困ってるだろうし、助け舟を出してあげよう。
「わたくしとエリスはルームメイトでいつも一緒にいますからね。たまには別の人とタッグを組めということですわよね、先生?」
「えっ?あっ、そうそう!そういうこと!いや〜セレスティアちゃんは察しがよくて助かるね〜」
「なるほどー」
ミーナとオフィーリアはどうやら納得してくれたようだった。
しかし、そうなると光のミーナか闇のオフィーリアと組むことになるな。
どうしよう。
ミーナのほうが交流は深いからミーナと組むか?
でもオフィーリアと組んで闇魔法について学ぶというのも魅力的だ。
闇魔法はあまり使えてないし。
俺がそんなふうに一人で悩んでいるとエリスが手を挙げる。
「先生!私はミーナさんと組みますね♪」
「えっ私?いいけど、なんで私なの?」
「実は私、闇属性なんですよ♪オフィーリアさんは闇属性でセレスティアさんは全属性ですから、私とミーナさんがタッグを組めばバランスがいいじゃないですか♪」
「えー!?エリスちゃんって闇属性だったの!?」
ミーナは驚愕しているがエリスは適当なこと言ってるだけだ。
こんな嘘をつくってことは俺とオフィーリアを組ませたかったのか。
なぜかはわからんがエリスが考えてることなんていつもわからないし、考えるだけ無駄か。
「ではわたくしはオフィーリアと組みますわ」
「別にいいけど、足引っ張らないでよ?」
「それはこっちのセリフですわ」
「は?」
俺とオフィーリアの睨みあいは気にせず、ドロシー先生はパンッと手を叩く。
「おっけー。タッグも決まったことだし、ダンジョン探索を始めよう!じゃあ私はあとからついていくから、それぞれ適当にうろついてる魔物倒してってねー。ヤバそうだったら助けるからねー」
「ではミーナさん、仲良しのお二人は放っておいて私たちは行きましょうか♪」
「あっうん。二人とも喧嘩はだめだよー!」
そうしてエリスとミーナは先に遺跡ダンジョンの中に入っていってしまった。
「ではわたくしたちも行きましょう」
「そうね。あんたの実力見極めさせてもらうわ」
「ええ、よく見ておきなさい」
「みんな、行ってらっしゃ〜い」
俺とオフィーリアも薄暗い遺跡ダンジョンの内部へと足を踏み入れていく。
こうして、俺たちの初めてのダンジョン探索が幕を開けた。




