第66話 本物のグリーンマッシュルーム
俺とリリィは爆発音が聞こえた場所へと走って向かっていた。
あんな部長とはいえ、爆発に巻き込まれてケガでもしてたら大変だ。
リリィも同じ気持ちだろう。
心配なので急いでいると、なぜか森の奥から「あははははっ!!」と大きな笑い声が聞こえてきた。
「なんで笑い声が聞こえるんですの!?爆発した場所ですわよね!?」
「はい……もしかして部長とは全然関係のない、爆発させるのが趣味の人がいる……とかですかね……?」
なんだその危険人物は!
この先にもしそんな危険なやつがいるのなら、リリィを守らないと!
俺は覚悟を決め、笑い声のする方へと向かう。
すると――
「「あははははっ!」」
二人で笑い合っている部長とエリスがいた。
「……あなたたち、何してるんですの?」
「ん?あれ?セレスティアくんとリリィくんじゃないか。なんでこんなとこにいんの?反対に行ったはずじゃ」
「とんでもない爆発音が聞こえたから急いで来たんですわ!どうせあなたが犯人でしょう!?まったく、心配して損しましたわ!」
「へぇ〜心配してくれたんだ〜。嬉しいな〜」
こいつ……!まるで反省していない!
「うるさいですわ!そもそもなんで爆発なんてしたんですの!?ここは部室ではないですわよ!?」
「それはですね〜、部長さんが湿気っているグリーンマッシュルームに火魔法を使ったら『なぜか』爆発しちゃったんですよ〜♪」
エリスが説明してくれた。
部長ってやっぱ火属性だったんだな。
って今はそんなことはどうでもよくて!
俺が何か言うよりも先に、リリィが慌てて説明する。
「部長、エリス様!それはきっとグリーンマッシュルームではなくボムマッシュルームです!」
「ボムマッシュルーム?なんだいそれは」
「部長さんが見つけたキノコはちゃんと緑色でしたよ?」
説明され頭にはてなを浮かべ、首を傾げる二人。
初対面とは思えないくらい息ぴったりだ。
「はい……グリーンマッシュルームと同じ緑色のキノコなんですが、傘の裏がわずかに赤くなっていて火魔法なんて使ったら爆発しちゃいます……」
「なにっ!?そういえばエリスくんが『キノコが赤い』って言ってたような……」
「あれぇ?そんなこと言いましたっけぇ?突然のことだったのであまり覚えてなくてぇ……」
……なんかだんだんわかってきたぞ。
エリスがなんかさっきからわざとらしすぎる。
こいつ、さては気づいてたな?
「はぁ……爆発の原因はわかりましたわ。しかしなんであんな大笑いしていたんですの?」
「それがさぁ!ほら見てよ!キノコがいきなり爆発したのに私たち無傷なんだ!すっごい強運じゃない!?ねぇエリスくん?」
「はい♪私たちすっごい強運です♪」
そんなんで笑っていたのか。
でも確かに部長の言う通り二人ともほんとに無傷だな。
服も汚れてすらいないし、よく見たら二人の周りだけ爆発の痕跡がないみたいだ。
こんなことありえるのか?
いや、こんなことできそうなやつが目の前にいるじゃないか。
……エリスのやつ、部長をおもちゃにして遊んでるみたいだけど、ちゃんと守ってくれているんだな。
「あははっ!きっと今日はいっぱい素材が採れるぞー!」
「そうですねー♪」
……部長は気づいてないみたいだけど。
「ていうかあなたたち、随分と楽しそうですが素材採取は進んでいますの?こちらはヒールハーブはたくさん採れたので、グリーンマッシュルームを探しているところですけど」
「なんと!まだ何も採れていないんだ!なにせいきなり爆発だからね!あははっ!」
「なに笑ってるんですの……これでは二手に分かれた意味がないではないですか」
「まあいいじゃん。みんなで探したほうが楽しいでしょ!」
なんか開き直ったぞこの人。
そして、エリスは部長の意見に乗る。
「そうですよセレスティアさん!部長さんの言う通りみんなで探しましょうよー♪」
相変わらず言うことがころころ変わるなぁ。
俺は内心呆れつつ答える。
「はいはいわかりましたわ。さっさとみんなで探しに行きましょう。それにリリィがいればグリーンマッシュルームかどうか『ちゃんと』教えてくれますし」
「ふふっ、そうですね♪リリィさんがいれば安心です♪」
「はい……!頑張ります……!」
「よーし、それじゃみんなでキノコ探しだー!行くぞー!」
なぜか部長がウキウキで先導する。
お前のせいで二度手間になったんだぞ。
こうして俺たちは結局、全員でキノコ探しをすることになった。
「よーし!今度こそグリーンマッシュルームを見つけてみせるぞー!」
部長はやる気満々で森の中を歩き回る。
しかし、さっき爆発を起こしたばかりの人物だ。目を離すのは非常に危険である。
「おっ!早速あった!緑色だしこれじゃない?やっぱついてる〜」
部長がためらいなく木の根元から緑色のキノコをむしり取って掲げた。
「部長、待ってください!傘の裏を見てください!」
リリィが慌てて注意し、部長は傘の裏を覗き込む。
「ん?裏?……あっ、ちょっと赤いね」
「それボムマッシュルームですわ!早く捨てなさい!」
俺は慌てて部長の元まで駆け寄り、手からボムマッシュルームを奪い取って遠くへ投げ捨てた。
全く、学習能力というものがないのかこの人は。
「ちょっと〜、セレスティアくんは強引だなぁ〜」
「さっき爆発させたばかりの人がよく言いますわね!あなたは火属性なんですからただでさえ危険だというのに!こんなもの持たせるわけにはいきませんわ!」
「ふふっ♪部長さんって本当に面白いですねぇ〜♪」
怒る俺と横でくすくす笑うエリス。
ダメだ、こいつらまるで危機感がない……
「セレスティア様、あちらを見てください!」
するとリリィが俺の袖を軽く引き、少し離れた木の根元を指差した。
そこには、部長が見つけたのと同じような鮮やかな緑色のキノコがたくさん生えていた。
「たくさんありますわね?あれが本物ですの?」
「確認してみましょう」
「えっ、なになに?見つけたの?」
みんなでキノコが生えている木の根元まで行き、リリィが本物かどうか確認する。
「本物のグリーンマッシュルームです!見てください!傘の裏が真っ白なのが特徴なんですよ!」
「おお!本当ですわ。さっきの赤いのとは全然違いますわね」
「綺麗な色ですね〜♪」
「へぇ〜、これがグリーンマッシュルームなんだ〜。よし!いっぱい持って帰ろう!」
そうして俺たちはグリーンマッシュルームを採取していった。
「さすがリリィくんだ。助かるよ〜」
「えへへ……お役に立ててよかったです……!」
部長に褒められ、リリィは照れながらも笑みを浮かべている。
かわいい。
「よーし!本物もわかったことだし、どんどん採るぞー!」
さすがの部長もこれでようやく学習したのか、リリィが採った本物を見本にしながら周りを探し始めた。
俺たちも同じようにして探し、たくさんのグリーンマッシュルームを採ることができた。
「ふぅ……これくらいあれば十分でしょう」
「そうだね!ヒールハーブもグリーンマッシュルームも一杯だ!これでまたポーション生成の実験ができるぞー!」
部長が満足そうに素材の入った採取用のバッグを掲げる。
色々あったが、なんとか目的のポーション素材を集めることができた。
「それじゃあ学園に帰ろうか!さっそく調合の実験だ!」
「また爆発させないように」
俺は呆れながら部長に注意する。
「大丈夫だって!今度こそちゃんとやるから!」
「ふふっ♪頑張ってくださいね、部長さん♪」
「本当に大丈夫ですの……?」
なんかこのコンビ不安だなぁ……
ずっと相手にしてたからか疲労感が凄まじいが、なんだかんだ言って、この賑やかな魔法研究会の活動も悪くないのかもしれないなんて思ったりもする。




