第63話 生徒会の許可
「採取といってもどこに行くんですの?」
俺は率直な疑問を投げかける。
「近くの森だよ。あそこにはポーションの素材になるキノコと薬草が生えてるんだ」
「へぇーそうなんですのね」
近くの森ってことはいつもクエストで行ってる場所か。
結構お世話になってるなあの森には。
「あの……部長?フィールドワークを行う場合は生徒会に許可取らないといけないんじゃ……?」
リリィが不安そうに言った。
「えっ、そうなんですの?」
「まあそうなんだけど、めんどくさいなぁ〜。バレなきゃいいんじゃない?」
「いいわけないでしょう……今度こそ廃部になりますわよ?」
「あぁ〜、それもやだなぁ〜」
さっきまでウキウキだったベアトリス部長のテンションがだだ下がりしている。
「ほら、セレスティアさん♪『アレ』を使って生徒会の人を探せばいいんじゃないですか?」
エリスが俺にそんな提案をしてきた。
あぁ〜なるほど。
「仕方ありませんわね。わたくしがカノンを探しますわ。きっと巡回でもしてるんでしょう?」
「まあいつもすぐに部室に来るしね。でも探すって……こんな広い学園の中から?そんなことしてたら日が暮れちゃうよ」
「大丈夫ですわ。すぐ見つかりますから」
「えっ、なにすんの?」
困惑している部長をよそに、俺は魔法を発動させる。
「『生命共鳴』」
――スゥゥゥゥゥ……
俺は生命反応を感じやすいように目を閉じ、集中する。
自信満々に発動してから気づいたが、カノンの魂がどんなものか知らなくね?
なんとなくのイメージで探せばなんとかなるか?
今更やっぱできませんなんて言ったらカッコ悪いしな。
カノンのイメージ……土属性だから硬い感じ?
それになんか尖ってる感じ……?
そんな女の子の魂を探せば見つかるかも……!
――ゴゴゴゴゴッ!
これだっ!
「こっちですわ!」
「えっ、なになに?どういうこと?」
「ほら、行きましょう部長さん♪」
困惑している部長の背中をエリスが押していた。
そして――
しばらく歩き、廊下を曲がった先にカノンはいた。
もう一人知らない女子生徒もいる。
「あっ、いましたわ!カノ……」
「学園の規律を乱すとはいい度胸ですね。言い訳は聞きませんよ」
俺が話しかけようとしたら、カノンは氷のように冷酷な視線で女子生徒を睨みつけていた。
女子生徒は「ひぃっ!」と悲鳴を上げている。
うわぁ、あんな姿初めて見た。
生徒会役員やってる時のカノンってあんなに怖いんだなぁ……
「あの……カノン……?」
「ッ!?お姉様!?なぜここに!?」
俺の声にビクッと肩を震わせ、さっきまでの冷ややかな声が嘘のように明るい声で振り向く。
そしてパァッ!と花が咲いたような満面の笑みを浮かべていた。
その隙に「ごめんなさい〜」と女子生徒は逃げていってしまったが、カノンは気づいていなかった。
邪魔しちゃったかな……?
カノンには悪いことしたかな。
そしてカノンは俺の隣にいるベアトリスに気づくと、瞬時に真顔になり睨みつけた。
「……なんでベアトリスもいるんです?」
「いやそんな睨まないでよ!?私だってよくわかんないんだってば!セレスティアくんがカノンくんの居場所がわかるって言って、連れてこられただけなんだからさぁ」
「!さすがお姉様!私と心で通じ合っていますからね!私がお姉様の居場所がわかるように、お姉様も私の居場所がわかるんですね!」
「えっ?なに?君たち、そういう感じなの?」
「いえ、わたくしは光魔法でカノンを探しただけですし、カノンは適当なこと言ってるだけですわ」
「お姉様!?」
なんかカノンがよくわからないことを言い出していたので即否定する。
カノンはガーンとショックを受けていたが、まあいいか。
多分そんな気にしてないだろう。
「そんなことよりカノン。魔法研究会でフィールドワークを行いたいので許可が欲しいのですが、なんとかなりませんの?」
「もちろんです!お姉様の頼みなら私が全部なんとかします!」
さすがカノン!頼りになるなぁ〜。
「おぉ〜、話が早くて助かるね〜。私が頼んだら絶対グチグチ言われてたのに……」
「部長……あまりそういうことは言わないほうが……」
リリィが必死に部長を止めていた。
ありがたい。
「ベアトリス部長のことは気にしなくていいですわ。近くの森にポーションの素材を探しに行ってきますわ」
「わかりました!あとはこっちでなんとかしておきますので好きなだけ探索してください!」
そこまで言われたら、なんか逆に不安になるんだけど……
まあいいや。
許可ももらったことだしさっさと行こう。
「ありがとうカノン。それでは行きましょうか」
「行ってらっしゃい、お姉様!」
「いやぁ〜セレスティアくん様々だね〜。なんてスムーズなんだ」
部長が「よかったよかった」と安心している。
普段はカノンとなんか言い合いになったりしてるんだろうなぁ。
容易に想像できる。
なんてこと考えてたら、突然エリスが俺の腕にギュッと抱き着きながらカノンに笑いかけた。
「ふふっ♪さすがカノンさん♪頼もしいですねぇ〜♪」
「なっ、なにしてるんですか!?」
「セレスティアさんのことは、『ルームメイト』の私がしっかり守ってあげますから、安心してお仕事頑張ってくださいね♪」
「る、ルームメイト!?あなた、お姉様のルームメイトだったんですか!?ストーカーじゃなくて!?」
「あれぇ?そんなことも知らなかったんですか〜?」
おっなんだなんだ?
なんかエリスがカノンに喧嘩売ってるぞ?
「ぐっ!ルームメイトだからって気安くお姉様に触らないでください!早くお姉様から離れなさいよ!」
「あれぇ?カノンさん、もしかして嫉妬です?嫉妬してるんですかぁ〜?ふふっ♪」
「ぶっ飛ばす!」
エリスのやつ……完全にカノンをからかって遊んでいるな……
このまま放っておいたら、カノンがエリスに攻撃魔法を撃ち始めそうだぞ。
そんなことになったら大変だ。
とっとと引き剥がそう。
「ほらエリス、離れなさい。カノンのお仕事の邪魔になりますわ」
俺が抱きついてるエリスから腕を引き抜くと、カノンは「ふんっ!」と勝ち誇ったような顔をする。
「それにあなたはただのルームメイトでしょう?わたくしには恋人のリリィがいるんですから、誤解されるようなことはしないでください」
「うっ」
「あぅ……」
あれ?
カノンがなぜか泣きそうな顔になり、リリィは恥ずかしそうに顔が赤くしている。
「セレスティアさんって、もしかしてバカなんですか?やっぱり面白いですね♪」
「いきなりなんてこと言うんですの!?」
失礼だな!
別になにも間違ったこと言ってないはずなんだが……
なんか変な雰囲気になっちゃったぞ。
「ねぇ君らなにしてんの〜?早く行くよ〜!どれくらい採れるかな〜。たくさん採っちゃお!」
そんな雰囲気お構いなしに、部長がウッキウキで先導する。
こうして俺たちは今度こそ、近くの森を探索しに行くのであった。




