第62話 ポーションを作ろう
楽しくもドキドキしたランチタイムが終わり、午後の授業を受ける。
午後もよくわからない座学らしい。
今日は実技授業はないようだ。
ランチ後なのもあってすごく眠い。
あくびを噛み殺し、なんとか耐える。
すると、それを見かねたのか隣のエリスが耳打ちしてきた。
「セレスティアさん、さっきはありがとうございました♪おかげで助かりましたよ♪」
「びっくりした……いきなり話しかけないでくださいな。あなた、素直にお礼とか言えたんですのね」
いきなり話しかけられたので驚きで身体がビクッとしてしまった。
俺は先生にバレないように小声で答える。
「あなたが眠そうにしてたからサプライズです♪めったに聞けませんよ?」
「なんなんですの……?」
結局お礼が本気なのかどうかわからんな……
まあいいや。
おかげで少し目が覚めたしな。
こうして午後の退屈な座学も凌ぎきり、放課後を迎えた。
さて、今日はなにをしようか。
「あの……セレスティア様……今日は魔法研究会に行きませんか……?」
放課後の過ごし方を考えていると、リリィに声をかけられた。
そういえばせっかく魔法研究会に入ったのに早速サボったんだった。
「もしかして部長怒ってます?」
「ええ……今度セレスティア様が来たら用があると……」
えっこわっ!
今日は他にやること思いつかないし、部活に顔を出そう。
放っておいたらなにされるかわからんし……
「わかりましたわ。一緒に行きましょう」
「はい……」
「エリスはなにしますの?」
「えぇ〜私ですか〜?何しましょうかね〜?暇だなー♪どうしようかなー♪」
なんかわざとらしいな。
こっちチラチラ見てくるし。
「……あなたも来ます?」
「えぇっ!?いいんですか!?私は部外者なのに〜」
オーバーリアクションすぎる。
待ってましたと言わんばかりの反応だ。
普通に行きたいって言えないのかこいつは。
「いいんじゃないでしょうか……?部長もきっと新しい人が来たら喜ぶと思います……!」
呆れている俺の隣でリリィは嬉しそうにそう言った。
まあ確かに俺が入らないと廃部になりそうだったくらいの部活だしな。
喜ぶのは間違いないだろう。
「私はまだ入るとは言ってませんけどねー♪」
「見学だけでも大歓迎ですよ……!」
リリィが必死に勧誘している。
もしかしてエリスはリリィをからかって遊んでるのか?
とにかくこれではキリがなさそうなのでさっさと移動しよう。
「ほらリリィ、まともにエリスの相手をするものではありませんわ。早く行きましょう。どうせ来ますから彼女は」
「えっ。あっ。はい!」
「あ~待ってくださいよー」
こうして三人で魔法研究会の部室に向かうことになった。
「ところでリリィ、前回の部活でも爆発はしましたの?」
「はい……しました……」
「あっ……そうなんですのね……爆発が起こる前に早く行きましょう」
急いで行かないとまた爆発が起こってしまう。
そしたらまた生徒会と揉めてめんどくさいことになるぞ。
早く行こう。
俺たちは走らないように、しかしできるだけ早歩きでスタスタと部室へ向かった。
そして魔法研究会の部室前――
幸いまだ爆発はしていないようだ。
ここに来るまでに爆発音は聞こえなかったからな。
「失礼しますわ」
バタンッ!と扉を開けて部室に入るとベアトリス部長は相変わらず何かの実験をしていたようだった。
透明の容器に入った液体を炎で加熱している。
前回は気づかなかったけど、部長ってもしかして火属性なのかな?
よく爆発させてるし。
あれ?これまた爆発するんじゃ?
危機感を覚えた俺は咄嗟に魔法を放つ。
「『水球』!」
――バシャァァァン!
水の玉が炎を飲み込み消火できた。
「うわああああ!なんてことするんだ!せっかく上手くいきそうだったのに!誰だいきなり水かけてきたやつは!?ってあれ?おサボりのセレスティアくんじゃないか」
実験を邪魔され騒ぎだしたと思いきや、俺を見て嫌味を言ってくる部長。
「ごきげんようベアトリス部長。それとおサボりではありませんわ」
「だって前回来なかったじゃんか!」
「仕方ないでしょう!他に用事があったんですから!1日くらい許しなさいよ!」
「ええいうるさい!私は部長だぞ!この部活では私が正義なんだ!」
「えぇ……?」
とんでもないこと言い出したぞこの人!
やっぱ爆発以外にも生徒会に目をつけられる原因はあるじゃないか!
すると、俺たちの口喧嘩を見かねたリリィが慌てて話題を変えようと口を開く。
「部長!落ち着いてください!今回は部活見学の方が来ています!」
「……えっ?」
「どうも〜、見学に来ました♪エリスです♪」
エリスはこんな状況でも楽しそうにしていた。
そして、さっきまでカンカンに怒っていた部長は、エリスを見た途端目の色が変わった。
「見学!?もしかして入部希望者!?いやぁ〜お見苦しいところを見せてしまったね!歓迎するよ!」
「いえいえ、とても仲の良い部活なんですねぇ♪どんなことが起こるのかワクワクです♪」
「リリィくん、セレスティアくん今の聞いた!?すっごい良い娘じゃない!?」
「そうですわね〜」
エリスが良い娘なわけないんだが。
そんなこと言うわけにもいかないので俺は適当に返事してしまった。
「私はこの魔法研究会の部長、ベアトリスだよ!よろしくね、エリスくん!」
「はい、よろしくお願いします♪ところでさっきまでなにをされていたんです?」
「おお!早速活動に興味を持ってくれて嬉しいよ!これはね、ポーションを作ってたんだよ。今回は上手くいきそうだったのに邪魔されたけど」
うわぁ、めっちゃ俺のほうを見てくるじゃん……
しょうがないでしょ!
こっちは爆発を喰らったトラウマがあるんだから!
「わぁ!ポーション生成なんてすごいですねぇ♪邪魔されてかわいそう……」
「ま、まあいいではありませんか、また作れば!」
「それがさぁ、もう材料がないんだよねぇ」
「はぁ……」とため息をつきながら部長は言う。
ていうか前もポーション作ろうとして爆発させてたけど、なんでそこまでして作りたがるんだ?
「そもそもなんでポーションを作っているんですの?お店で買えばいいのでは?」
「はぁ、これだからご令嬢は。ポーション1本買うのにいくらかかると思ってるの?」
実は俺は令嬢でもなんでもないんだが。
勘違いされるくらいには悪役令嬢としての雰囲気が出せてるらしい。
そんな喜びを感じつつ、気になったことを聞く。
ポーションってどれくらいの値段なんだろう?
「い、いくらですの?」
「銀貨5枚」
「えっ」
高っ!?
要するに元の世界のお金で考えたら5万円くらいってこと!?
今までなんの躊躇いもなくごくごく飲んじゃってたけど!
今度からもっと大切に飲まないと!
「そ、そうでしたのね……しかし、そんな値段のものを自作できますの?」
「私ならできる!」
「散々爆発させといてその自信はどこから来ますの……?」
なんでこんな自信過剰なんだこの人。
「理論上はできるはずなんだよ!そうだよねリリィくん?」
急にリリィに話振ったぞ。
もしかして、リリィに無理やり責任を押し付けようとしてるんじゃないだろうな?
しかしそれは俺が心配性なだけだった。
リリィもポーション生成には興味があるようですぐに答える。
「そうですね……私が読んだ本では、材料を調合して、火属性で上手く加熱すればできるはずなんですが……」
「そうなんだよねぇ。なかなか簡単にはいかないけど」
うーん。
まあ簡単に作れるのなら高い値段で売ってないか。
「とりあえず材料がなくなっちゃったからみんなで取りに行かない?これも魔法研究会の活動の一環だよ!」
「いいですねぇ!私も興味があります♪」
「おお!エリスくんは話がわかるね!」
なんかやたらエリスが部長を焚き付けているな。
まあ実際俺も興味が出てきた。
ポーションの効果は実感してるし、アレを自分で作ることができるのならお金の節約にもなる!
ちゃんとメリットはあるんだよな。
「わたくしも興味がありますわ。今回実験の邪魔をした責任もありますし」
「私も……行きたいです!」
「よし!みんなの意見も一致したことだし材料採取に出かけよう!」
こうして俺たち魔法研究会はポーション生成のため、材料採取に出かけることになったのだった。




