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第58話 失礼な受付嬢

「お疲れさまです!」


ギルドに着き、受付に向かうといつもの受付嬢さんが出迎えてくれた。


「サフィアさん、どうでしたか?流石のサフィアさんでもオークジェネラルは……」

「うん。倒してきた。ほら」


サフィアはマジックバッグからオークジェネラルを少しだけ取り出して見せる。


「流石サフィアさんですね!まさかあのレベルの魔物すら倒してしまうとは」

「倒したのは私じゃない。セレスティア」

「えっ」


受付嬢は驚き、目線をサフィアから隣にいる俺のほうに向ける。

しかしすぐサフィアのほうに視線を戻した。


「またまた〜、冗談はやめてくださいよ。セレスティアさんはランクGですよ?倒せるわけがないじゃないですか」

「そんなこと言われても困る。本当のことだし」


受付嬢は再び俺のほうに視線を向けてきた。

信じられないようなものを見る目だ。


「本当にあなたが倒したんですか……?」

「ええ、わたくしが倒しました」


俺はさらりと答える。

本当のことを言っているだけだ。

何も後ろめたいことはない。


「ランクGのあのセレスティアさんが!?」

「ええ」

「スライムの魔石拾いをしていたあのセレスティアさんが!?」

「……ええ」

「フォレストウルフを数体倒していただけのあのセレスティアさんが!?」

「だからそうだって言ってるではありませんか!おちょくってますの!?」


なんなんだこの受付嬢!

失礼だな!

明らかにバカにしてるだろ!


「だって……どこにオークジェネラルを倒せるランクGの学生がいるんですか!?ありえないでしょう!?」

「あなたの目の前にいますわ」

「うっさい!サフィアさんと一緒になって私をからかっているんでしょう!?」


うっさいって……

そんなこと言われても事実だしなぁ……

受付嬢がギャーギャー騒いだせいでギルドにいた冒険者たちもざわざわし始めた。


「聞いたか……今ランクGがオークジェネラルを倒したって……」

「おい見ろよ、あの子が持ってるマジックバッグに入ってるのオークジェネラルじゃねえか?」

「まさか……本当にそんなことが……」


なんかすごいひそひそ話が聞こえてくるぞ。

めちゃくちゃ目立ってるじゃないか。

いや待てよ?

悪役令嬢ならむしろもっと目立ったほうがいいのでは?

俺は冒険者たちがいる方へ向き、高らかに宣言する。


「おーほっほ!そうです、わたくしこそがオークジェネラルをランクGで倒したセレスティアですわ!この程度の魔物などわたくしの足元にも及びませんわ!」


すると冒険者たちが羨望の眼差しを向けてくる。


「マジかよ……すげぇ……」

「とんでもない子もいるものなのね……」


うおー気持ちいい!

俺が悦に浸っていると受付嬢に注意された。


「あのー、あまりギルド内で騒ぐのはやめてもらっていいですか?」

「いや、最初に騒ぎだしたのはあなたでしょう!?」

「うっさい!あなたがすぐバレるような嘘つくからでしょう!」


まだ嘘だと思っているのか!?

一体どうすれば信じてもらえるんだ……


「あの……いいですか……?」


するとリリィが遠慮がちに手を挙げる。


「セレスティア様がオークジェネラルを倒したというのは本当です……サフィア様と協力して……私の言葉なんて信じてもらえるかわかりませんが……」


するとさっきまで鋭い目つきで俺を睨んでいた受付嬢の目が急に優しくなる。


「そうなんですね!わかりました!リリィさんが言うなら本当なんでしょう!嘘つくような子じゃないですし!」

「私とセレスティアは嘘つくような子ってこと?」

「はい!」

「ひどい」


そんな勢いよく返事するレベルで信用ないの!?

ていうかサフィアも信用されてなかったんだな……

かわいそうに……と一瞬思ったが、まあサフィアだしな。当然か。


「だってサフィアさんはいつも適当で何考えてるかわからないですし、セレスティアさんは見栄張ってそうじゃないですか」

「なんて言い草ですか!」

「ひどい」


やっぱ失礼だよこの人!

こんな人受付嬢にして大丈夫なのかこのギルドは!?

まあいいか。

とりあえずリリィのおかげで信用してもらえたみたいだしな。

リリィの日頃の行いに感謝だ。


「しかしオークジェネラルを倒したとなると、セレスティアさんはランクGのままというわけにはいきませんねぇ。ということで昇格です」

「昇格?」

「はい、ランクDに昇格です。オークジェネラルが倒せるのなら妥当なランクでしょう」

「えっそんなあっさり昇格できますの?しかもGからいきなりDって」


ランクって順番に上がっていくイメージだったんだが……

GからDって随分と飛んだな。


「普通はコツコツと上げていくものですけど、こうして実力を証明できているなら大丈夫ですよ」

「……さっきまで信じてなかったくせに」

「だからごめんなさいって言ってるじゃないですかぁ〜。もう認めましたって。冒険者の方は変わった人が多いから、こっちも大変なんですよ〜」

「変わった人……大変なんですわね……」

「なんでこっち見るの」


サフィアのほうをちらりと見たら怒られた。


「それではこちらで登録しておきましたから今からセレスティアさんはランクDです」


早いな。

どういうシステムなのかは知らないが、とりあえずランクが上がったらしい!


「これで今度は私とお揃いだね」

「ええ、リリィとお揃いではなくなるのは残念ですが」

「そんな……セレスティア様はランクが上がって当然のお方です!おめでとうございます!」

「ありがとう、リリィ」


リリィはいい子だなぁ……そりゃ受付嬢にも信用されるわけだ。


「あとはクエスト報酬ですけど」

「うん。肉が貰えればいい」

「またそんなこと言って……それじゃ困りますって。オーク肉もちゃんと差し上げますから」

「そうですわサフィア。貰えるものは貰うべきですわ」

「セレスティア、意外と守銭奴」

「べ、別に間違ったことは言ってないでしょう!」


肉が食えるのももちろん嬉しいが、結構頑張ったんだ!

ちゃんと報酬は貰いたいぞ!

……結構財布もギリギリだし。

こっちは自分でなんとかしろって言われて大変なんだ!


「セレスティア様……これで借金も返済できますね……!」

「え?」


借金……?

あ、そうだ!

前にクレアが勝手に手紙を送ったせいで、リリィには借金していることがバレてしまったんだった!

もうとっくに返しているがまだリリィには伝えていなかった!


「あ、そういうこと」

「セレスティアさんも大変なんですね……すぐに報酬をお持ちしますから!」


受付嬢に同情の目を向けられる。

そして、急いで受付の奥に入っていってしまった。


「ちょっと!?違いますわよ!?借金なんてしていませんって!」

「まあまあ」

「すみませんセレスティア様……つい言ってしまいました……」


リリィがしょんぼりしてしまった。


「いえ、元はと言えば悪いのはわたくしですから……リリィは気にしないで。でも借金はもうしてないのは本当ですわ!」

「そうなのですね……よかったです……」

「もうしてないってことは、してたのはほんとなんだ」


サフィアが痛いところを突いてくる。


「まあいいではありませんか。それよりリリィ?このことはあの部長には言ってないですわよね?」

「はい、もちろんです……」

「ならいいですわ」


もしあの部長にバレてたら絶対めんどくさいだろうし、リリィの口が堅くてよかった。

さっきは俺を元気づけようとつい言ってしまったんだろう。


「サフィアも。このことは他言無用ですわよ」

「うん、わかってる。特に言う相手もいないし」


意外とこういうところは素直なんだな。


「おまたせしました!こちらが報酬です!」

「うん。じゃあこれが倒したオークジェネラルとオークが入ったマジックバッグ」

「えっ、ついでにオークも倒してたんですか」


そういえば言ってなかったな。

報酬とかどうなるんだろう。


「じゃあその分報酬は上乗せですね!肉は後ほど渡しますからまずは報酬金です!こちらをどうぞ!」


おおーちゃんと上乗せしてくれるのか。

お金が入った大きな袋が渡された。

結構重いな……


「これいくら入ってますの?」

「銀貨100枚です」

「ひゃ、100枚!?なにかの間違いなのでは!?」


銀貨100枚って100万円くらいってことだろ!?

あまりの大きさにびっくりしてつい疑ってしまう。


「いえ、正当な報酬額ですよ」

「そのレベルだったんですのね、あの魔物……」


しかし、これだけあればしばらくは困らないだろう!

クレアがよく使っているマジックアイテムとかも気になるし、このお金で今度買ってみたい。


「あわわ……こんな額……私が受け取っていいんでしょうか……」

「リリィも立派なパーティーの一員ですわ!ちゃんと貢献していましたし大丈夫ですわよ」


リリィも俺と同じく、いきなりこんなに銀貨を貰ってびっくりしていたらしい。

そりゃそうだ。


「それではこれで終了です。オーク肉は今度サフィアさんが受け取りに来てください。今回はお疲れ様でした!」

「あら?肉はすぐ貰えるわけではないのですね」

「うん。だから今度一緒に食べよう」

「約束ですわよ」


サフィアと約束を交わす。


「それではごきげんよう、受付嬢さん」

「またどうぞ〜」


そうして俺たちはギルドを後にし、寮へと帰ることにした。

そして寮の入口に着いたあと、二人に挨拶する。


「今回はありがとうございました。ごきげんよう二人とも」

「うん。また」

「お疲れさまでした……セレスティア様!」


こうして二人と別れ、部屋に戻る。


「ぐああああ疲れたああああああ」


俺はベッドに飛び込む。

いつも飛び込んでる気がするが。


「おかえりなさーい♪」

「ああ、エリス。ただいまぁ〜……うあぁ」

「相当疲れたみたいですねー♪何があったんです?」

「なにをすっとぼけてるんだ。どうせ全部見てたんだろ〜?」

「それがですね〜、今回は何も知らないんですよ〜」


エリスはそんなことを言っているが、そんなわけないだろ!


「なんで今更そんな嘘つくんだ?」

「嘘じゃないですって!実はですね〜、今回はなんと新しい試みです!」

「新しい試み?」

「はい、セレスティアさんが何をしているのか、今回はあえて見ないことにしました」

「なんでそんなことを?」

「だってセレスティアさんっていつも変なことしてるでしょう?どうせ今回も。それをセレスティアさんの口から体験談として聞きたいな〜って♪」

「えぇ……めんどくさぁ〜……」


なんで俺がいちいちそんなことをしないといけないんだ。


「まあそう言わずに♪こうしてお話するだけでも、結構ストレス解消になったりするんですよ〜?」

「なるほど。一理あるな。寝っ転がりながらでもいいなら話してもいい」

「体勢なんてなんでもいいです。ぜひ聞かせてください♪」

「わかったよ。えっと最初は確か――」


そうして俺は今日クエストで起こったことを寝っ転がりながらエリスに話したのだった。

エリスは終始ニコニコと、楽しそうにしながら聞いていた。

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